私はいま自由なの? 男女平等世界一の国ノルウェーが直面した現実

  • 柏書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760152858

作品紹介・あらすじ

ジェンダー先進国とされるノルウェー。
だが、そこに住む女性たちは幸福なのか。
労働問題を扱うジャーナリストが、
「先進国」ができるまでの過程を点検し、
仕事と家事、両方の負担に押しつぶされそうな
ノルウェー女性たちの肉声を拾い集める。
「ジェンダーギャップ」を埋めただけでは解決しない、
日本もいずれ直面する本質的な課題を
浮かび上がらせる渾身のレポート。

感想・レビュー・書評

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  • 男女平等の最先端を行くノルウェーでも、未だ解決されてない、平等性がある。
    グラフや図というものが全然なく、平坦な言葉での説明ばかりなので、理解しづらい。
    日本は北欧政治を後継していった方が良いとは思うが、ただ単に女性がズタズタになるまで仕事と家事で頑張れという文化のままでは上手くいかないだろう。
    男性の育休100%取得を先に制度化したところで、男性が家のことをやらないで手伝う感覚でいれば、結局は家事は妻の仕事のまま。
    子育てに魅力があると男性が思い至るのか?
    作るまでの過程には興味やリビドーはあるけど、その後はおまけと考えている人が多い (その前の各個人の考え方もあるけど)→性風俗に行く (日本はここが発達してるので良いのか悪いのか)→結婚まで至らない男性が増える。
    女性もリスクを負ってまで、結婚の意味はないし、自分の面倒を見るだけで精一杯な生活。
    ノルウェーの問題とはリンクしてそうでしてない。

    日本の少子化は産みたい育てたい女性が、単体で産み育てる環境を作らないと、改善されないと個人的には思う。それが自由という選択肢があるということかと。

  • 北欧で男女平等が進んでいると言われている国。
    スウェーデンの方は『男女平等』を感じると書かれていたけど、この本はタイトルからして何やら怪しい。どんな内容なのか気になって手に取ってみた。

    『はじめに 胸騒ぎ』
    男女平等が実現されている国ノルウェー。だけれども、その間で混乱している人たちもいる。

    フェミニズムにおける七つの自由
    1.女性が男性と同じ機会と権利を得られる自由
    2.特別な措置を受けられる自由 ――例えば女性が妊娠、出産、授乳にまつわる特別な権利を得る自由
    3.主婦としての人生を送らなくて良い自由
    4.経済的な自由
    5.ワークライフバランスの取れる生活を送る自由
    6.職場における不当な権力関係からの自由
    7.自らの日常と周りの社会、両方に参加し、決定できる自由

    これらの7つがある。

    本当にそうだろうか?と疑問を投げかけるのが最初の『胸騒ぎ』である。
    ただ、この『はじめに』においてすでに本の内容の殆どが書かれているような気がする。



    高福祉のノルウェーでも問題は起きている。ただ、『問題があるからそのシステムは良くない』という事ではない。

    日本はノルウェーほど高福祉ではない……と思っていたが、新聞には世界一長い期間の『育児休業制度』がある国となっていた。ただし、その制度を国民の殆どが知らないだけというおまけ付きだが。……日本の政府は制度だけ作って告知はしない。困ったら、行政窓口に行けと言うが、行政窓口はなるべく支援をしないシステムになっているので、出会えた職員次第で制度にたどる付けるかどうかが決まる。という職員ガチャシステムだと思う。



    ただし、ノルウェーでも『働いていない人への風当たり』が強い事はこの本からも分かる。それが、育児のためであっても怠惰だと見なされると。
    それは『市場経済に全ての人々を押しやった結果』だと本にはある。私たちは不必要なものを欲しがるように誘導され、高賃金を求め、労働をして消費をする事を求められる社会なのだと。

    日本においても共働き家庭が半数を越えているが、ノルウェーとは事情が違っている。ノルウェーが人手不足のために労働を求めたのに対して、日本は『男性の賃金を下げる』ことで女性を労働市場にかり出した。つまり『男性一人の稼ぎでは家庭が回らない』のだ。

    ただし、結果だけをみればまたノルウェーと状況は同じである。ノルウェーでは二人の稼ぎになり生活レベルが上がり、結果『男性一人の稼ぎでは家庭が回らない』ことになってしまったのだと。



    ノルウェーと日本の最大の差は、日本が景気の停滞に陥っているために女性が働いているのに対して、ノルウェーは景気の向上で労働力が足りずに女性が働いている。



    読みながら、景気部分だけを脳内削除すれば『仕事と家庭の両立に苦しむ女性』は日本でも同じであると思った。ただ、さらに日本では『二人でやっと回せる経済状況』なので、『子供を持つ余裕すらない』のが現状。

  • 男性・女性共に自由を目指す場合、この資本主義社会にあって最も向き合うべきポイントが、「労働」特に「労働時間」というトピックであることを指摘した本。

    資本主義社会にあると意外に盲点となる「労働時間」(労働が社会・個人の基盤とされてしまうから。)。しかも、今日の労働者は消費者でもあるので、消費生活で自分達の労働者としての生活をますます圧迫するというウロボロス状態の負のスパイラルに陥っている。
    (※まさにそのように今日の社会を捉えた人がいて、<Cannibal Capitalism>という、ずばりウロボロスを表紙絵にした本がありました..!)

    労働者を雇用する側の理屈や、資本主義の財政に立脚する国家の側の理屈で巧妙に隠されてきた点でもある。

    著者が最後に言った(p.384)、「私は自分がとても自由で幸せな人間に思え、この本に書いてきたことが全てどうでも良く思える日もある。一方、不自由さがあまりに不愉快で、心の中が真っ暗になりそうな日もある。」という言葉があまりに正直で、心に残ったし共感した。

  • 翻訳が読みにくい、というか「てにをは」レベルでおかしいし、誤字もある、最後の方はほとんどどんな意味なのか分からない文章も出てくるし、章立てがめちゃくちゃで同じ話が何度も出てきて結局何なの?って気持ちになるなどたくさんのハンデがありながらも、何とか読みました。

    導入は、これがノルウェーの話なの?と思うほど、日本の私の気持ちに近く、たとえば男性の係長が、私と同い年の時に自分はもう係長だったと言う時、そりゃあ家に帰ればご飯ができてて、家の片付けも洗濯もしなくてよくて、子どもたちの学校の面談などに行かなくてもいいのならいいよねと思ったり、幹部になった女性職員から、実家のそばに住み、食洗機やルンバなど使えそうな便利な新製品はなんでも導入してやってきたと聞いた時、そんなことまでして仕事ってしないといけないの、そこまでしないと出世できないのと思ったり、そういうことが書いてある本にはあまり出会ったことがないと思い、共感したし、価値のある本だと思いました。

    が!
    いつまでも導入が続くような感じで、最後まで読んだら、新聞に連載されたエッセイだったらしいことがわかり、納得しました。
    本にするにあたって、もう少し話の筋が整理できたらよかったのに。

    ベーシックインカムの話はどうかと思うけど、労働時間短縮は実現するといいなと思います。
    余裕ができると社会は変わっていくと思う。
    今はほんとに、仕事にこき使われてる。
    この本でも悪の元凶は資本主義と目されていて、なんだか世界中この問題で繋がってるんだな。
    仕事ではなく、私たちは着実に資本家に搾取されているんだと思う。

    原作にも問題があるのかもしれないけど、もっと読みやすくなって、いろんな人に読まれるといい本だと思います。

  • 2章までにこの本のエッセンスが詰まっている。
    あとは317頁の「保育所なしでは男女平等はなしえない」という部分がよかった。

  • 求めていることは、選択肢が増えることなはずなのに、いつのまにかフルタイム労働をしなければならない、家庭と仕事の両立をしなければならないと思ってしまっていたかもしれない。(そして現実的にも、フルタイム労働しなければ生活できない)その考えは、フルタイム労働を選ばない女性への非難の目にもつながっていると思う。個人ではなくて、制度や構造にNOをつきつけるべきなのにね。(制度にあぐらをかいている個人は別として。)

    選択の自由がある、とされているけれど、実際には手の届くものしか選べない。けれど、選べないのは努力が足りないからと、個人の責任にされてしまう。
    福祉を受けるために条件が定められていることは、国家から期待されているライフスタイルが明確にあることを示している。
    共働きを選択したとされているが、実際は家庭を維持する金銭的余裕がないため、共働きせざるを得ない。


    誤字脱字が多すぎて不安になった。

  • 「男女平等」とは、何において平等なのか、そして何のための平等なのか。著者は、フェミニズムが追い求めてきた女性の自由とその歴史を辿りながら、資本主義を前提とした今日の女性解放運動のあり方に疑問を呈する。

    日本からは一歩も二歩も進んだ福祉国家に見える北欧諸国だが、経済中心的・男性中心的な社会的価値観の型に嵌められて葛藤し苦しんでいるのは、ノルウェーにおいてもその多くが女性だ。「男女平等」とは仕事上の議論でしかなく、そこに家庭や保育所に長時間滞在する子供の姿は見えない。福祉のためにはフルタイムの共働きが代償となる「ワークフェア」が規範とされ、仕事と家庭の両立に挑み続ける強さが求められる。このような現状に対し、著者は「1日6時間労働」を処方箋として提言している。

    本書の主張には賛同するところが多く、日本においてこそ、このような踏み込んだ議論が必要だと思う。一方で、当然ながら「6時間労働」が全てを解決してくれる訳ではない。労働時間の削減・家庭時間の奪回は耳障りが良いし賛同もするが、一歩誤れば真っ先に被害を被るのは経済的・社会的弱者となりかねない。新自由主義的な政治イデオロギーの転換、経済中心・個人中心の社会通念に支配された個々人の意識変容、脱成長に伴う景気後退を乗り越える理論と制度など、課題は山積する。
    また、本書で声高に叫ばれるように「子供と過ごす時間ほどかけがえのないものはない」ものの、これが強迫観念に変われば抑圧に苦しむ人も生まれる。一様の価値観という型に嵌めることもまた、別の側面で新たな強者と弱者を生み出すのではないか。目指すべき理想像は、多様な価値観と一人ひとりの幸福観が受容される社会なのではないだろうか?

  • [鹿大図書館・冊子体所蔵はコチラ]
    https://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC09963519

  • 日本の言説のなかでは男女平等が達成された理想の国々として描かれがちな北欧だが、この本のなかではノルウェーで子育てをしている著者がその実態を明らかにしている。そこにいるのは、男女平等な社会で子育てを楽しむ母親ではなく、「これが自由だろうか?」と自問する母親である。

    「男女平等が達成されている」というと聞こえがいいが、その実態としては共働き以外の選択肢がなく、フルタイム勤務から脱落しようものなら社会保障の恩恵が大幅にカットされるという社会である。また、「フルタイム共働きがよい」という価値観を大半の人が内面化しており、政府のバックアップにより保育園も十分にあるが故に、「私は家で子供ともう少し過ごしたい」と言おうものなら敗者となる社会である。これは、市場の成長を優先する社会とは非常に相性がよい。自由を求める女性の声が、見えないうちに資本主義にうまく組み込まれているのだ。

    そのなかで、がむしゃらにキャリアを追うことに疑問を持った著者は「これが自由だろうか?」と問う。子供を長時間保育園に預け、お金を稼ぎ、多くのモノを消費する。さらに裕福になれば、家事も外注する。家からは家事が消え去り、家庭内のケアの領域すらも市場に巻き込まれる。子供と過ごすこと、家で家事をすることに価値を見出す著者はこの状況を憂いているように見える。

    最終的に著者が拠り所とするのは、ケアの市場化ではなく労働時間の削減である。1日6時間労働を実現し、親に家庭での時間を、子どもに家でリラックスする時間を返そうと呼びかけている。

    私もこれまでは「子供を持っても男女が平等に仕事ができる社会」を肯定する立場だった。しかしそれが「自由になりたい」という女性の声をうまく利用し、資本主義に組み込むことと同義なのであれば、もう少しに慎重な立場を取らなければならないと感じた。

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著者プロフィール

1971年ノルウェー生まれ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで社会学の修士号を取得。アムネスティ・ノルウェー、ノルウェー国営放送NRK、新聞「階級闘争」などの媒体でジャーナリスト、コラムニストとして活躍。2013年に本書『私はいま自由なの?』を発表。アラビア語にも翻訳され、特にジェンダー・ギャップ指数ランキング134位のエジプトで、女性読者から大きな反響を得た。共著に、赤十字から出された『戦争のルール』(2012年、未邦訳)。単著は本作のほかに『もう飽き飽き――新自由主義がいかにして人間と自然を壊してきたか』(2019年、未邦訳)がある。

「2021年 『私はいま自由なの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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