- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784763086105
作品紹介・あらすじ
漂う香りから光源氏と知る藤壷、稀有の香木を秘する末摘花。後世源氏香の主題ともなる王朝人の恋の華やぎとあはれ。エッセイスト・クラブ賞「源氏の恋文」の著者が香りをテーマに書き下ろした源氏物語随想。
感想・レビュー・書評
-
集中力が落ちているのか、30分も読んでいるともう続きません。ところが、本書はのめり込むように読みました。「源氏物語」の随所に書かれている薫りの記述から登場人物の造形を明らかにして見せ、また、薫りの文化史を記します。「源氏物語」が掌にあり、解釈はどこをとっても卓見ですが、藤壺出家のくだりと六条御息所の生霊を薫りの中で解釈読み解くくだりは感動しました。絶版させるにはもったいない書籍です。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
薫り、匂いの面から源氏物語を読み解いている。
こういう源氏物語の読み解き方もあるのだなと感じ興味深かった。視覚だけでなく嗅覚の描写が、イメージがつきやすい物語なのだと改めて感じた。
源氏物語の中で、ニンニクの香りが臭く、人に会えないと書かれている部分も現実味がある。
源氏の光と影の部分を匂宮、薫に引き継がせていることや、薫の持つ芳しい体臭が、仏を連想させる考察や、匂ひ、薫りの違いは、にほひが、色の美しく照り輝く様を、かおりは嗅覚的なものの美的表現であるという話は、納得がいった。(源氏物語では、ほぼ違いがないように使っているのも解説されている。)
登場人物が選ぶ薫りに性格が象徴されていたり、初めは、香りの描写が少ないが、徐々に増えてくるのは、紫式部が香りの知識を身につけていったからではないかという考察も、あり得そうだと感じた。
取り上げる香りに関する考察が源氏物語に出てくる順番ではないので、内容が前後するが、各章とも、スラスラ読めてしまう。 -
読まなければ良かった。
「源氏の薫り」(尾崎佐江子 求龍堂 1986・8)である。
実は「香りを創る」(塩野秀作)、「伽羅の香」(宮尾登美子)等を読んで<源氏香>を知り、「源氏香之図」のデザイン力に圧倒され、ショックを受けて、ゲーム「平成源氏香占い」を創って発売しようと思い立ったのであった。
要するに源氏香の簡便版である。そしてどうせなら全てに英訳を付けて日本文化の発信ツールにしようと欲張った。
そうなると「源氏香之図」の各柄に対応する源氏各帖のあらすじを書き、英文を付さねばならない。
各帖あらすじはネット上に幾つかあるのである。それをそのまま借用するのは拙いので、幾つかをこね合わせて文体を変え、新しいあらすじを作ることにした。
これがなんとも気の滅入る仕事であった。本質的に剽窃なのだから気分のいいわけがない。まあ源氏ほどの古典だから模写と云えないこともない。いや、どうかな。
そんな最中に「源氏の薫り」を読んだのであった。
参りました。
細部にわたる深い読み込み、広範な傍証・引用、そして格調高い解釈、それを記述する文章の鮮やかな香り!
源氏を読むとはこういうことなんだ!
尾崎左永子の名前を初めて知った。
調べると、1927年生れで東京女子大国語科卒、歌人・随筆家と出ている。
17歳で歌の道に入り佐藤佐太郎に師事、1955年第1回角川短歌賞の最終選考に残った。(この年入選者なし)
その後多くの歌集、随筆を出版、現在は歌誌「星座」の主筆とある。
要するに他人の俸禄を受けたことのない人であった。若いうちはどうして暮していたのだろう?
1927年生れとすると昭和25年頃東京女子大を出たことになる。戦後間もない。国文学部なんて云わない国語科、そして学校に残るでもなかった一学生がこれほどの学識を身に付ける学校であったんだ、東京女子大は。
私は昭和29年の一橋入学である。当時中央線の窓から東女の塔が見えて4年間それを見ながら通った。今思えばあの塔から源氏の薫りが匂い出していたような気がする。
~~~~~~~~~~~~
さてそれでどうするか。
今すぐあらすじのミキシングをする気力は無い。
「平成源氏香占い」、面白いんだけどな。 -
資料番号:010387140
請求記号:913.3/ オ
資料区分:一般書