- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784772695138
感想・レビュー・書評
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イカ関係ないじゃん!というのはさておき。
読字障害(ディスレクシア)の側から読字を照らし出すというテーマも良いし、研究家である以上に臨床家であるらしい、さらにディスレクシアの家族を持つ著者の真摯な態度も良かったです。
しかし文盲の人は昔は多かったし、今でもいる国にはいるだろう。そういった人々は脳の働きを読字者と比べてみたら異なるものだろうか?反対の例として、以前に見せてもらって印象に残った聾唖者の文章なども思い出し、漠とした疑問が残った。この分野の今後の発展が楽しみではあるが、一冊の本としてはやや余韻を残しすぎかも。それが著者の誠実さかもしれないが。
訳がカタいせいか、それとも原語の段階でも読みにくいのか苦労しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人類が文字を習得した歴史と、子供が文字を読めるようになるプロセスと、ディスレクシア(読字障害)の話。人類が2000年かけて身につけた文字を、子供は2000日で身につける。
文字の発明
シンボルによって何かを指し示す
シンボルを体系化する
音とシンボルを対応させる
シュメール人
6~7年の特訓で文字を学ぶ
音や意味で文字を分類
(エジプトの文字は各方向が決まっていなかったが、シュメール人は、左から右、次の段は右から左、次は左から右、とつづら折りのように書いていたらしい)
インカ文明
結縄による記法
スペイン人が焼却(野蛮だなぁ)
ソクラテス
口語と文語は違う
文語は死んだ言葉、柔軟性に欠ける。記憶を破壊する。知識を使いこなす能力を失わせる。
子供
5歳までに、よみきかせの経験によって3200万語の差が生まれている。
読み聞かせと、文字の音読の経験が文字の習得に大事
読み手の能力レベル
文字が読めない
読字初心者
解読に取り組む読み手
流暢に読解する読み手
熟達した読み手
(文字が読めても流暢に読めない人はいる)
ディスレクシア
読字に支障(米国の15%、日本でも3%前後いるらしい)
そもそも脳は文字を読むためにできたわけではない
複雑な要因、多様な症状
脳そのものの障害、知覚以前での支障
エジソン、ダ・ヴィンチ、アインシュタイン、ピカソ、ジョニー・デップ、ガウディ。。。みんなディスレクシア
空間把握能力に長けていたりする事が多い
が、多くの場合幼少時にスポイルされてしまう
才能の無駄
泳ぐのが先天的に苦手なイカも存在し、生き延びてきている。ディスレクシアも、読字にはむかないが才能がある。長所を活かし合えるような社会を。 -
題名のプルーストとは、賢人の言葉の比喩であり「歴史」のこと。イカとは神経回路の実験体のことで「科学」を指す。つまり歴史と脳科学の両面から文字の発明と読み書きの活動が人類の進化と発展に与えた影響や意義を再考する、というのがこの本のテーマだ。
全く新しい方法で未解決の謎を解き明かしたり、大胆な仮説でこれまでの常識をひっくり返したり、そんなドラマチックな内容では決してない。
「文字が読み書きできるって実はすごいことだよね」と当たり前なことを真面目に検証する地味な作業。しかも引用が多くて論旨を捕まえにくい。だけど「学びの種」とも呼べそうな小さな発見が詰まった、今まで読んだ本とこれから読む本の中継地になってくれそうな、そんな素敵な本だった。
個人的に興味深かった箇所をメモしておく。
◎人類最古級の言語シュメール語(楔形文字)における音節文字と表語文字の使い分けが、日本語の漢字の音読みと訓読み、漢字と仮名の使い分けに類似しているという話。
◎音節文字であるアルファベット言語と表語文字である中国語、その両方が混在する日本語で、話者の脳の賦活する領域が違うという話。サピア・ウォーフの仮説に符合する。
◎エジソン、ダ・ヴィンチ、アインシュタイン、ピカソ、ロダン、ウォーホルなど偉大な才能がディスレクシア(読字障害)だったという事実。
◎デジタル社会が進む中、読み書きは重要でなくなるのか?情報摂取の在り方が変わるとき、脳の思考回路はどう変わるのか?書き言葉の普及に反対したソクラテスの懸念の再来。
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この特殊なタイトルは至る所で見覚え、聞き覚えがあり、いつか読もうと思っていた。この度、図書館をウロウロしていたら巡り会えたので迷わず手に取った。
プルーストって言うのは「失われた時を求めて」で有名なフランスの小説家で、イカって言うのはあの、海にいるイカだ。
正直言って苦労して通読した今もなぜこのタイトルなのか全然ピンとこない。
(第1章がまるまるそんなタイトルだったけど、読み終えた今詳細が全然頭に入っていなくて愕然となっている)
まあでも、もし違うタイトルだったらいつか読もうと覚えてたりしなかっだろう。
いずれにせよ、このタイトルを見たり読んだりした時に、私の脳でもいろんなイメージがわきおこって、それらが統合されて興味のスイッチが入ったから覚えていたと言うことだ。
文章を読む、ということは視覚から入った文字がいったんは音として受け取られ、右脳やら左脳やらの回路を経て理解したりイメージしたりする。
…いやいや、たぶんもっと複雑な行程だったような気がする。
わたしの貧弱な語彙ではなかなか表現仕切れないし、この本を読んだとて理解力も貧相なもんでこういう捉え方しかできなかったんだけど。
文字を読む、読書をする、ってのはわたしが思っていたよりだいぶ複雑でなかなか大変なスキルなんだと言うことはよくわかった。
本書は文字を読む脳の発達と進化について、大きく人類の歴史的な経緯、脳のどの辺りがどのように賦活するのかと言った科学的な議論、はたまたディスレクシアの人たちの脳はどのようになっていて、文字を読むことがどのように阻害されている可能性があるのか、なんてことが書かれてある。
ソクラテスが文字を書き残すことについての懸念をなぜああも強く抱いていたのか、また、文字だけでなく、あらゆるコミュニケーションが変化の過渡期にある現代にこの事実が照らせることはないか、という問題意識も提示している。
たぶん半分も理解できていない。
ちゃんと読めていない。
とにかく…難しい。
ということで、今回は気になる文章をまるまるノートに書き写したりしてみた。
こんな読書の仕方はじめてだ。
でもそうしたくなる何かがある本だった。ところどころ引っかかる何かがある。
今後読書を続けていけば、
ふんわりわかることもあるかもしれないな。 -
内容的には専門的なものがあるので難しい。でも、ある程度時間をかけて進めていけば理解できる内容である。
この本の結論は、これからの未来、思考がより重要になるということ。人間が文字を体得したことにより、記憶からの解放、時間からの解放、を成し遂げた。そうすることでより思考により時間を割くことができるようになった。人間はインターネットの共存により即物的なものを求めるようになった。しかし、これでは本当の思考をすることができない。だからこそ、周りの外部的情報を利用しながら、自分なりに熟考していくことがとても大切になってくる。熟考とは、情報に対して批判したり分析したり、多様なな視点を持つことである。ディクレシアも多様な視点を持つことで、自分たちにとって重要な存在であることがわかる。 -
書記言語をどのように身につけ、これによりどのような能力が発達するのか、脳神経学、発達科学、歴史の側面からの考察。
音声言語と書記言語、そしてインターネット、AI発達の中でのコミュニケーション方法移行期の参考。
・読字による脳の配線変更、ディスレクシアからわかる脳の構造
・読字による解読を超越して得る思考の時間 -
読書中の脳の働きについて書かれた本を読むと自分の脳がズキズキすることがわかった。
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トランスヒューマニズムという概念の中にポストヒューマンが位置する。脳とデバイスの接続についてはパーキンソン病の治療から幕を開けると予想されている。
https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2022/06/29/180932 -
字の起源、文字による脳の活性化、識字障害など文字と脳、教育の関連の本。テーマは面白いが、欧米やアルファベットに寄りがち。
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タイトルにある「プルースト」と「イカ」に何ら連想できるものがなく、逆に興味を持って購入。
いわゆるジャケ買いであり、書棚にしばらく眠らせておいた。
内容的には丁寧な目次と解説、最終章を読めば概観できる。
ソクラテスが懸念した書記への警鐘と、本書が執筆されてからさらに加速度的に世界中に蔓延しているSNSへに対する著者の警鐘に本質的な違いはないだろう。
趣旨は違うが、枕草子や小野小町の感情表現が、現代でもほぼ変わらず共感できるように、それぞれの時代で懸念される対象は常に変化はすれども、その内面的な部分にはある一定の普遍性があるように思える。
本書流に言えば普遍性というより不変性かもしれない。
正直、「イカ」
にジャケ買いした側面に関しては、若干釣られたなという感じもしないではないが、不快なものはない。
むしろ、
「ああ、このプルーストとイカを隔ているものに何か共通項があるのかもしれない、という部分に興味を持つことこそ、著者の言う読字が脳にもたらす影響の現れなんだな」
と思い、ひとりごちた。
科学的専門的な部分に興味がない人はそう言った部分を読み飛ばしても一向に問題ない構成にはなっているので、強いて言えばこれから子育てをする人たちに読んでもらうと良いと思う。
それにしても、
遅延ニューロン
って、面白い。