データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794220684

作品紹介・あらすじ

社会現象や経済を科学的にコントロールすることは可能か。先端サイエンスが人類究極の問いに答える。
なぜ思った通りに毎日の仕事をこなせないのか、どうしたら受注率を上げられるか、店の売上を上げるにはどうすればいいか、組織統合を短期間に成功させるには…。人間行動のビッグ・データを人工知能で解析することで、このような問題に明確に答え、驚愕の成果を生む新しい科学が誕生! 人間行動の法則性を明らかにし、人間が「幸福」になることこそが利益の源泉であるとデータから示す、革新の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 著者がご自分のために開発したというライフシグナルズ(心身の状態を元に、64個の中からその日に合うアドバイスが得られる)に興味があり、読んでみた。

    残念ながら、日立で開発したシステムは企業向けであり、アプリもあるけど個人では使えません。
    この本には個人に向けた情報は「あとがき」に一部あるのみです。

    とはいえ、個人の行動ビッグデータによって導き出された法則は新しいものが多く、刺激的。

    人間には1日に動ける帯域ごとの上限が決まっていて、それを超えた活動はできないそう。
    たとえば、1日勉強だけし続ける、というのは不可能。帯域ことに「活動予算」がそれぞれ決まっているので、そこを考えて予定を立てなければ、達成できないのは当たり前だとか。

    うまく行った日を分析して、行動レンジをそれに合わせて計画するのが、アプリのない私たちには最適解かも。

  • ウェアブルデバイスのビッグデータから、人間の行動の法則性を導き出し、その意味付けをした内容でした。池谷裕二さんの脳研究の本を読んだときと同じような軽いショックをうけた。人間は自由意思で、その人の行動が決まるわけではないことを改めて再認識しました。技術者らしく非常に論理的な文章で理解しやすかったです。少し数式も出てきますが、そこは意識せず、すんなり読めました。2014年初版とのことで、だいぶ前からこのようなデータがとれていとは驚きでした。

  • 目から鱗。本当に面白い本だった。

  • 著者の研究成果が記載されている著書だった

    人は活発的に動くと幸せと感じる
    原因と結果が今までの考え方と違う

    行動を起こすこと自体が人の幸せなのである
    幸せな人は仕事ができる

    休憩所の会話が活発な日は受注率が高い
    従来のサービスでは人の作業を1日が大体4人を楽にすることが勝ちだった
    これを超える人々の潜在力の試合する
    従来の労働はお金を稼ぐための手段と捉えられてきた金銭的報酬を上げることが労働者のためと考えられてきたしかし多くの科学的研究が仕事は充実感の源であり仕事の挑戦こそが最高の報酬であることを示している

  • shiro

  • リストバンドや名札のように身につけるウエアラブルセンサで記録されたヒューマンビッグデータが、人や組織や社会の法則や方程式を明らかにする。ウエアラブルセンサの第一人者によるノンフィクションかつビジネス書。

    地味で真面目そうな技術書風の装丁だけれど、最先端のサイエンス本であり組織マネジメント本であり幸福とはなにかの哲学本であり、非常におもしろかった。
    多少の数式が出てくるけれど簡単なものだし、すっとばして文章だけ読んでも十分おもしろい。
    寝る前に今日の楽しかったことについて考えることには効果があるのだ!

  • 【感想】
    人の趣味趣向という曖昧な概念を、デジタルに落とし込むことが出来るのか?

    ビッグデータ社会が到来するにあたって、人間の行動習慣を商取引の現場に導入する事例が多く見受けられる。しかし、個人的な感情として、そんなことが本当に可能なのか疑っている人も多いことだろう。
    本書では、そうした疑問に対して「可能だ」と回答している。著者の矢野氏は、「人間の行動や欲望」に科学的な法則性を見出し活用するとともに、ビッグデータと機械によって幸福を高めることができないか?という考えのもと数多くの実証実験を行っている。

    そうした実験の結論として、「人には動きの活発度に応じた活動限界がある」という研究結果を報告している。ウェアラブルセンサによって人間の行動を測定した結果、人の動きは全くのランダムではなく一定の法則に従っていることが分かったのだ。何気なく過ごしている日常であっても統計上ではランダムな行動をしていない、というファクトは目からウロコであった。
    一見測定不可能な領域にデータの形でメスを入れ、そこから得られた結果を意味付けするプロセルはとても新鮮なものばかりであった。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【本書のまとめ】
    1 ウェアラブルセンサの開発
    人の行動には科学的な法則性がある。
    自分の意志で決定していると思われている「時間の使い方」においても、例外ではない。あなたが今日何に時間を使うかは、無意識のうちに科学法則に制約されているのだ。

    筆者は、ウェアラブルセンサで腕の動きを読み取ることにより、いつ、どこで何をしていたかを表す「ライブタペストリ」を開発した。


    2 ライフタペストリによる「腕の動き」
    ライフタペストリによって、1日の腕の動きを読み取った。その結果は驚くべきものであった。
    横軸に「1分あたり何回動いたか」、縦軸に「その運動が計測期間の間に観測された比率」を置くと、どのような人でも、右肩下がりのU分布になることがわかったのだ。
    U分布にしたがうということは、ある事象の発生頻度が指数関数的に減少していくことにほかならない。1分あたり60回以上の運動をすることは、一日の半分程度だが、1分あたり120回以上の運動をすることは、その半分(1/4)程度に減り、さらに180回を超える運動は1/8になり…と、指数関数的に右肩下がりになっていくのだ。
    つまり、人間は自分の一日の行動を、あるときはずっとのんびりしたり、あるときはずっとせかせかしたりと、自由に決めていると思っているが、実は「決められた枠の中で」行動していたのだ。自由に見えて、自由ではない。それはなぜか?

    それは、繰り返しの力が「平等(ランダム)」ではなく「偏り」を生むからだ。
    ここに900個のセルがあり、1個のセルの中に1個のボールが入っているとする。各セルはまったく平等の条件下だ。ここから、あるセルから別のセルにボールをランダムに1個移す、という行動を繰り返したとする。その結果は、ボールがバラバラに散らばるのではなく、「上位3割のセルに、ボール全体の7割が入る」ことになる。
    平等の条件下から全くランダムに行動を繰り返しても、結果は偏りを産むのである。
    この結果をグラフで表すと、正規分布ではなくU分布になる。

    人間の腕の動きがU分布に従うということは、これと同じ現象が起こっている。つまり、完全にランダムである腕の動きを一日何万回と繰り返しても、優先度に合わせて無意識のうちに結果が調整されているということだ。

    このU分布が面白いのは、一日の身体活動の分布は動きの総数というたった1個の変数でおおよそ決まってしまうということだ。
    1日の腕の動きが7万回(平均77回/分)と決まっている中で、120回/分を超える活動を一日中続けることはできない。1分間に60回以下の動きを伴う活動には、活動時間全体の半分程度の時間を「必ず」使わなければならず、60-120回の活動は、1日の1/4程度の時間を使わなければならず…と「割り当て」が決まっている。

    これには当然、個人差がある。120回/分程度動く「熱い人」と、60回/分程度動く「冷たい人」がいる。

    といっても、熱い人=仕事ができる人ではない。熱い人も冷たい人も全ての帯域に平等に活動を割り当てているため、熱い人は静かな仕事(執筆など)に時間を割り当てづらいし、冷たい人は激しい仕事(プレゼンなど)にあまり時間を当てられない。(ただし後述するように、「熱い人」は「幸せな人」が多い傾向にある)

    すると、1日の時間を有効に使うには、さまざまな帯域の活動予算を知って、バランスよくすべての活動予算を使うことが大切だと気づく。一日のうちに「同じ行動をドカッとまとめてやる」は不可能なのだ。

    物理学では、熱機関の効率の上限が「カルノー効率」という式で表されることがわかっている。そして、データから、人間の行動にもこの式が適応できることがわかった。
    例えば、原稿の執筆の場合、一分間の動きは50-70回の幅に収まるとしよう。そうすると、その効率の限界=カルノー効率は、1-50/70≒0.286となる。つまり、1日の活動時間のうち、原稿執筆に28.6%以上を割くことは決してできないのだ。

    ライフタペストリによって、時々刻々変化する「意識」「思い」「感情」「事情」などを考慮しなくても、科学的な予測や制御が可能になるのだ。


    3 幸せを測る
    幸せの50%は遺伝によって決まり、10%は環境要因(収入など)が決める。
    そして残りの40%は、日々の行動のちょっとした習慣や行動の選択の仕方によって決まる。

    論文によると、「行動が成功したか」ではなく、「行動を積極的に起こしたか」がハピネスを決める。となれば、新たな行動を自ら起こすようテクノロジーで支援できないだろうか?

    そこで活躍したのがウェアラブルセンサである。
    センサでの測定と社員へのアンケートにより、「幸福である」と答えた社員は、仕事の能率があがり、労働時間が短くなったことが計測できた。

    また、データにより、幸せを感じている社員は動きが増える(熱い人になる)ことがわかった。同時に、個人だけでなく会社全体としても、「熱い現場」が幸せを産むことが判明している。会話中の活発度が高い職場では「社員の生産性が高まる」ことが測定されたのだ。

    ある人の身体運動が、まわりの人の身体運動を誘導する。この連鎖により、集団的な体の動きが生まれ、社員たちのハピネスと生産性が向上する。


    4 人間行動の方程式
    ●1/Tの法則
    最後に物事を行ってから、再度それを行う確率は、時間が経過するにつれ反比例で減少していくこと。
    ・メールを受けてから返信するまでの時間が長くなるほど、返信する確率が下がる
    ・安静が2時間続いた時には、1時間続いた時と比べて活動に転じる確率が1/2になる

    簡単に言えば、続ければ続けるほど、やめられなくなるのだ。これをフロー現象という。
    ウェアラブルセンサのデータによると、フローになりやすい人は、やや早めの身体運動を継続する傾向が強い。
    これをハピネスの観点から捉えると、仕事や生活に楽しさや充実感を得ている人は、身体運動の継続性が高いということだ。


    5 到達度による職場づくり
    「運に出会う確率」はデータで表せることが研究で分かっている。それは「2ステップで到達できる人の多さ」、分かりやすく言えば「知り合いの知り合い」の多さである。これを「到達度」と呼ぶ。
    組織の中で「到達度」が高まれば、リーダーから各員につながるステップが短縮されるため、現場力が高まる。成員どうしのコミュニケーションを増やすために、リーダーが介入する必要がなくなるのだ。
    大切なのは、部下同士で三角形上にコミュニケーションの輪ができているかであり、これができていれば、現場で自立的に問題が解決される可能性が上昇するのだ。

    また、職場における会話の質にも着目してみると、会話が建設的なものとなるのは、参加者間の「双方向率」が高いときである。

    ウェアラブルセンサを使って、会話中に速い身体運動を行った側を「ピッチャー」、行わなかった側を「キャッチャー」とし、全時間のなかで「双方向」の割合を「双方向率」と定義した。

    実は、会話の双方向率が高まるのに重要なのは、真剣に両者が交わり合うことが必要な挑戦的な目標が設定されていることである。
    根本的には、双方向率の向上そのものは目的ではなく、仕事への「挑戦性」を映す鏡になっている。そのような挑戦の度合いが、企業の収益に強く相関するのだ。

    ウェアラブルセンサでの測定により、「運」という不確かな指標が確固たる指標として、人生と経営を抜本的に変える道を拓きつつあるのかもしれない。


    6 経済活動を科学的に解明できるか?
    ビッグデータによって店員の配置の変更を行った結果、売り上げの向上が起こった。
    しかし、この配置変更がもたらしたのは、売上向上だけではなかった。社員や顧客の活発度を高めることになったのだ。ビッグデータとAIを使って儲けを実現すると、見えないところで人との「共感」や「積極性」や「ハピネス」が得られることになるのだ。

  • とても興味深いものでした。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001041181

  • 非常にユニークでイノベーティブな取り組み。
    ウェアラブルセンサを用いて、行動の法則を明らかにしながら、組織や社会をどう変化に導けるかにチャレンジしている。

    歩く程度の動的な活動から静的な活動まで、人は使える時間配分がある程度決まっている。じっと考えこんでばかりでもよい考えは出てこない。動きを入れる中で出てくる可能性が高まる。

    同じ職場内での会話や交流が活発なほど、生産性が高まる。
    生産性高いフロー状態は、身体運動の継続性があるほど生まれやすくなる。歩行程度の身体運動を仕事の中に取り入れながらやることも効果的。
    身体を制御することにより、心を制御する新たな道が拓けるのだ、と。

    リーダーの指導力と現場の自律の高さ。メンバーのキーマンとつながることや、三角形でつながる関係をたくさん作れると効果的。

    会話の質。双方向に関心を持てるように会話することで、つながりや生産性につながる。
    部下との対話において、話し方やスタイルよりも、挑戦的な目標を共有した上での対話の方が格段に質が高まったという著書の経験は示唆的。

    経済や社会の法則については省略

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著者プロフィール

矢野 和男(やの・かずお)
株式会社日立製作所フェロー。株式会社ハピネスプラネット代表取締役CEO。1959年山形県酒田市生まれ。1984年早稲田大学物理修士卒。日立製作所入社。91年から92年まで、アリゾナ州立大にてナノデバイスに関する共同研究に従事。1993年単一電子メモリの室温動作に世界で初めて成功し、ナノデバイスの室温動作に道を拓く。2004年から先行してウエアラブル技術とビッグデータ解析を研究。論文被引用件数は4500件、特許出願350件を超える。「ハーバードビジネスレビュー」誌に、開発したウエアラブルセンサが「歴史に残るウエアラブルデバイス」として紹介される。開発した多目的AI「H」は、物流、金融、流通、鉄道などの幅広い分野に適用され、産業分野へのAI活用を牽引した。のべ1000万日を超えるデータを使った企業業績向上の研究と心理学や人工知能からナノテクまでの専門性の広さと深さで知られる。2014年に上梓した著書『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(草思社)が、BookVinegar社の2014年ビジネス書ベスト10に選ばれる。

「2021年 『予測不能の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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