人材を活かす企業: 「人材」と「利益」の方程式

  • 翔泳社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798120812

作品紹介・あらすじ

人材価値に重きを置くことは不変的なテーマだ。だが、いまだ多くの企業が人材管理の変革を試みながら、困難に直面しているのはなぜか?企業の成功には、企業規模の大きさが必須条件ではない。また、規模縮小も不可欠ではない。ハイテク、巨大な市場シェア、企業のグローバル化も必ずしも必要ではない。経営者が口先だけで「我が社の一番大切な資産は社員だ」と言っても、リストラや規模縮小、臨時雇用の急増で、結果的に社内の結束力を弱体化させる。戦略ばかりに気を取られるよりも、社員の能力形成に努力を払うべきなのだ。本書は、人員削減によるコスト削減を批判し、優れた人財管理能力に基づいた収益向上こそが重視されるべきだと主張する。なぜなら広範なデータと企業事例から、「人材重視の経営」が結果的に企業の収益を生み出す最良の戦略であることが明白だからだ。

感想・レビュー・書評

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  • 本書の、本国アメリカでの出版は1998年である。
    その前後を含めた、日米両国の人事管理の歴史に関する私の理解は下記の通り。

    第二次大戦後から、概ね1980年代半ばくらいまでは、日米ともに長期雇用慣行が、一般的であった。アメリカは、レイオフや解雇が簡単にでき、実際に普通に行われているという一般通念があると思うが、この時代までは、そんなことはなかった。
    特に日本は、1980年代の半ばから終わりにかけて、ジャパンアズナンバーワン、経済の黄金期を迎え、日本的な雇用慣行が米国でももてはやされたりした。
    今では信じられないが、アメリカ企業は、1980年台半ば以降、日本企業との競争に負け続ける。半導体しかり、自動車しかり。しかし、そこからアメリカ企業の逆襲が始まる。人事慣行的には、アメリカ企業は長期雇用慣行をやめる。リエンジニアリング、ダウンサイジングと呼ばれる人件費の削減を進める。アメリカ企業が、保証するのは長期雇用ではなく、エンプロイヤビリティ、すなわち、その会社で雇用を失ったとしても、市場で雇い入れられるだけの職業能力を身につけさせることだと変化が起こった。この変化を、新しい雇用契約とか、雇用のニューディールなどと呼んだりする。要するに、雇用にもマーケット主義が取り入れられたということである。こういった雇用慣行の変化ばかりではなく、東西冷戦後のグローバル化の流れや、インターネットを皮切りとするICT革命、あるいは、経済のサービス化、金融化の流れにうまく乗ったアメリカ企業は、復活を果たしていく。
    一方、我が世の春を誇った日本企業は、1990年代初めのバブル崩壊により、急速に衰退していく。人と設備が過剰だと言われ、1990年代の半ばから後半以降、希望退職をはじめとする日本型ダウンサイジング、非正規雇用の拡大、あるいは、ベア廃止や成果主義という名の労務費削減、新卒採用の抑制による氷河期世代の創造などが行われた。その後、行き過ぎを補正するように、ベアや新卒採用が復活し、また、アメリカとは異なり、長期雇用に手がつけられることはなかった。しかし、企業業績は、アメリカ企業に水をあけられたままである。

    以上が、私の理解する日米の人事管理の流れ。
    本書は、その流れでいうと、アメリカ企業が、雇用のニューディールによって雇用の長期保証慣行をやめて少し経ってからの出版になる。
    筆者のフェファー教授の立場は明快であり、雇用のニューディールに反対し、もっと人材を大事にして活用する経営をしよう、と呼びかけている。

    基本的にフェファー教授の立場に賛成である。

  • 人材重視の経営のよって成功している企業は次の7つのことを行い組織力を高めている。
    1.雇用を保証する
    2.新人の採用に多大の努力を払う
    3.自己管理チームの導入と現場への権限委譲を行なう
    4.高い成功報酬を支払う
    5.社員教育を行なう
    6.待遇や地位などの格差を小さくする
    7.財務、戦略、経営手段などの情報を従業員と共有する

  • ”タイトルにひかれ、著者名で購入を決定。名著復刊なのだとか。(原著タイトル:"The Human Equation: Building Profits by Putting People First")
    巻頭には ワークス 大久保さんの推薦の言葉があり、酒井穣さんもメルマガで激賞している。気になる本

    <読書メモ>
    ・本書を推薦する言葉(p.iii?iv)
     - 社員自身の実行力とやり切る力は、社員育成の仕組みで築けるのだと、確信した。私はこれからも「一番大切な資産は社員だ」と言い続けたい。(良品計画 代表取締役会長 松井忠三)
     - 意欲高く人事に異動してきた人や、人事に配属された若手に、人事を学ぶ最初の一冊として本書を薦めてきた。フェファー教授が、七つの条件として人材活用の考え方を本書にまとめたのが1998年。10年あまりの時を経た現在、より厳しさを増す環境変換の中でも、この7つの条件には、「人材重視の経営」を実現するためのよりどころを見出すことができる。今後の人事を支える人、そして人事プロフェッショナルを目指す人にとって、本書は今もなお最初の一冊であり、迷った時は、力強い道標となるに違いない。(リクルート ワークス研究所 所長 大久保幸夫)
    ・戦略と効率的な人材活用について(ロバート・ウォーターマン)(p12)
     筆者が調査を行った企業は、奇抜なアイデアではなく、地道な組織の立て直しによって大きな競争力を得ていた。彼らは言う。「他人が諦めるところに戦略の難しさがある」。つまり「実行力」である。実際にそれを実行してみること。つまり、シンプルなアイデアを正しく実行することが問題なのだ。
    ・戦略的一貫性診断(p89-91)
     表4-1は、社員教育と事業達成に必要な条件を照らし合わせた結果である。(略)防衛以外の市場向けに自社の技術を商品化しなくてはならないのに、それを助ける教育コースがない。
     #企業として何が必要か。それを強化するためのコースはあるか
    ・管理職が、仕事が多すぎるから、もっと助けてもらわないといけないと言い出したら、その言葉は本当だと思って良い。(略)管理職の仕事が多すぎるのは、間違ったことをしているからではないか?つまり、部下に介入しすぎて権限委譲が十分ではないからではないか?(略)実践的な情報は分散化させ、現場の担当者が自分の仕事を自己管理できるようにしなければならなかった。
    ・私は次の三点を主張する。(p171)
     一 賃金は、多くの経営者が思うほど重要ではなく、労働コストを削減しても競争力の獲得にはつながらない。
     二 業績給や出来高給は人々の支持が高くても、実際は問題が多く、調査結果によると、マイナスに作用することが多い
     三 給与の査定制度を導入すれば、生産性の問題がすべて解決すると信じるのは、破滅への道である。
    ★金銭的な刺激があまり効果を生まない理由の一つは、1940年代の調査によると、「従業員が金銭以外のもの、たとえば、やり遂げた仕事に対して示される感謝、参加している感覚、興味ある仕事に従事している意識などを重視してきた」ためである。(p187)
    ★人材重視型経営(p254-261)
     第一に、自社の成功にとって社員が最も重要な存在であることを繰り返し公言することだ。(略)
     第二に、人材を最優先に考える姿勢を示すために、社員を尊重する言葉を使うことである。(略)
     第三に、幹部や組織が社員優先の信念に基づいて行動することである。(略)
     第四に、企業業績の評価基準に社員の評価を含めることである。(略)
     第五に、指導的立場にいる者が人材を重視する価値観を持ち、社員の能力を発揮させる労働環境を築くことである。(略)
     第六に、組織のあらゆる人間が成功のために必要であると認識することである。
    ・フェファー教授の七つの教え(p270-271:監訳者あとがき)
     一 「雇用の保証」(employment security)
     二 「徹底した採用」(selective hiring)
     三 「自己管理チームと権限の委譲」(self-managed teams and decentralization of decision making)
     四 「高い成功報酬」(comparatively high compensation)
     五 「幅広い教育」(extensive training)
     六 「格差の縮小」(reduced status distinctions and barriers)
     七 「業績情報の共有」(extensive sharing of finaicial and performance information)
    ・フェファー教授とは、数年前、リクルートワークス研究所のイベントで日本に来られたときに対談をさせていただいたが、「日本は、米国から学ぶべきでない。自分の道をさがすべきである」と言われていたことが印象的である。(p281)

    ---
    T:?10/31 フォトリー
    P:ロールモデルへ反映させるネタ探し。特に異動しないことのリスクと課題&対処策(異動で恒常化する世界でのメリット)への論点
    O:人開、人担、SKMでタッグが組めるようになってきた。今後がガンバリどき
    ---
    Keyword:

    Question:
    1.「できる人とダメな人」に代わるモデルは何か?
    2.ローテーションを「人を活かす」に効果的に使うにはどのタイミングでどう実行するのがよいか
    3.経営者や管理者の働きかけで、仕事への働きがいは作り出せるのか?”

  • 【選書者コメント】素晴らしい人材活用方法はどう違うかを考えることができる良書
    [請求記号]3364:385

  • 日本が今後より一層強くなるためには、日本型の人材管理方法を発展させていく必要があると強くかんじた。

  • 最近人材育成について考えているので

  • 面白くて短時間で読み終えた。
    人事担当の時に読んでおきたかったなー

  • ■人材
    1.診断で、経営の仕方に一貫性がないことがわかれば、改革を行う。改革を成功させるための原則は、次の3つである。従業員との間に信頼関係を築く。変化を積極的に取り込む。企業が求める姿勢や企業文化に適した評価制度を導入する。

  • 人事の教科書といって良い本。「人材重視の経営を実現できるのは最終的に残った八分の一の経営者となる。これらの企業だけが大きな利益を享受し、残る企業は誤った方向に向かうことになる。」

  • 90年代には既に成果主義がうまくいかないことを主張されていたにも関わらず日本企業がその後成果主義に走ったことは皮肉。

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著者プロフィール

スタンフォード大学ビジネススクール教授(トーマス・D・ディー2世記念講座)。
専門は組織行動学。資源依存理論の提唱者として知られる。スタンフォード大学でPhDを取得後、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、カリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執り、1979年にスタンフォード大学の正教授に就任。これまで16冊の著作を持ち、150本以上の論文を発表。オランダのティルブルフ大学から授与された名誉博士号のほか、数多くの受賞歴がある。スタンフォード大学で教える傍ら、ハーバード・ビジネススクール、ロンドン・ビジネススクール、シンガポール経営大学、IESEなどで客員教授や講師も務める。主な著書に『「権力」を握る人の法則』『悪いヤツほど出世する』『社員が病む職場、幸せになる職場』などがある。カリフォルニア州ヒルズボロー在住。

「2023年 『出世 7つの法則』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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