二礼茜の特命 仕掛ける

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800274199

作品紹介・あらすじ

内閣金融局の秘密部門S2に所属する二礼茜の仕事は、依頼人の"もっとも大切なもの"と引き換えに、経営危機に直面する会社に対して資金作りの協力をすること。バイオ・ベンチャーのエヌメディックは、提携していた大手製薬会社が共同研究から撤退、銀行から融資引き揚げの通告を受け、経営危機に瀕していた。また、インサイダー情報が漏れていた可能性まで噂されている。茜は「インサイダー取引にかかわった人間を特定すること」を条件に、資金作りに着手するが-。

感想・レビュー・書評

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  •  経営危機に瀕した企業からのSOSに応じて、内閣金融局の特命で派遣され資金作りの中核を担う二礼茜の活躍を描く経済サスペンス。シリーズ2作目。
              ◇
    その日、内閣金融局SII部員の二礼茜と百瀬良太が訪れたのは西松食品の会長室だった。

     西松食品は練り物中心の加工食品を手掛ける中堅企業で、業績はさほど悪くない。だが、資産運用で致命的な損失を出し、資金繰りが苦しくなっている。数ヶ月続く残業代の不払いは労働争議に発展しそうなところまできており、会社存続の危機に陥っていた。

     会長の依頼は、1億円の資金を1か月で2億円に増やすこと。それに対して茜が突きつけた条件は、会社から会長職を失くすことだった。
     茜の意図を察した会長は、息子でもある現社長を更迭し自分が社長に復帰することにした。
     資産運用をしくじったのは紛れもなく現社長であり、主力商品を薄利多売路線に切り替えて収益を悪化させたのも現社長だ。
     経営者としての責任を取らせ社員に対するけじめをつけさせるとともに老練な経営手腕を見せる会長の社長復帰を、茜は促したのだった。

     一方で茜は社内にディーリングルームを設置し、1億円を種銭にして株取引を始めていた。
     短期間で利益を出すには小型株を狙うのが基本になる。茜がピックアップしたいくつかの中小企業株の中で不穏な動きを見せたのが、エヌメディックというバイオベンチャーだった。 ( 第1章「乱高下」) 本編4章と終章からなる。

          * * * * *

     第1章の西松食品の案件がただのプロローグだったことに、まず驚きました。膨らませば十分に1つの作品たりうる設定だからです。( 凝り性の城山さんらしい!)
     メインとなるのは茜が注目したエヌメディックの資金繰りの健全化で、銀行と結託してエヌメディックの乗っ取りを企む巨悪に対し茜がどう対峙するかということでした。

     詳細は省きますが、物語の流れ的には、同じ城山真一さんの『ダブルバインド』同様、困難な事態が主人公に次々と降りかかりハラハラしどおしのまま4章まで行くという筋金入りのサスペンスです。 ( かなりしんどいです。)
     それだけに敵の「仕掛け」に対して茜が「仕掛け」返す終盤は読むのを止めることができませんでした。

     そして、終章で明かされる天才株トレーダー二礼茜の人物像がまた見ものでした。
     それまではピンチの連続で、助手の良太が心配するほど窮した様子を見せる茜だったのですが……。
     茜の、全て計算ずくで動くしたたかなところは、相沢沙呼さんの『城塚翡翠』とよく似ています。( 翡翠ほどのあざとさはないですが。)

     最後に、役職上は茜の上司であり、実務的には茜の助手でもある百瀬良太について感じたことです。
     ホームズにはワトソン。翡翠には真。三ツ矢には田所。切れ者の名探偵には真面目さが取り柄の助手がつきもの。ご多分に漏れず二礼茜にも百瀬良太が付き従います。

     この良太。性格的には公務員にピッタリですが、内閣局の秘密部門に属する人間としては正直すぎてふさわしくない気がします。
     もっとも、「ピノ太」と呼ばれ親しまれるほど茜に気に入られているようなので、茜専用の精神安定剤的な人材として採用されているのかも、などと思って読み終えました。

         * * * * *

     実は、第 14 回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した1作目を借りようとしたのですが貸し出されて書架になかったので、2作目と知りながら本作を先に読むことにしました。
     株取引などあまり知らない世界のことが詳しく書かれていて感心することも多く、とてもおもしろかった。
    『ブラック・ヴィーナス 投資の女神』も早く読みたくなりました。

  • 2022.3 いやいや面白かった!ブラックヴィーナスシリーズだったんだね。

  • ブラックヴィーナス続編。こちらも素晴らしく読み易いエンタメ小説。続編の方が出来としては良いと感じた。前作もそうだが、良太の存在意義がよくわからないのがこの小説群の一番の弱点。今回も私の故郷の七尾のスギヨが取り上げられていたり親近感たっぷり。

  • もう一つの池井戸潤めいたディーラーとその助手が主人公の作品。
    ライトノベルっぽいが、なかなかのスリル感あり、次作に期待。

  • 株取引の部分で非常に緊張感のある描写でどきどきした。もうちょっと二人の気持ちのからみがあればうれしい。

  • バイオベンチャーから銀行がひきはがし
    裏で出資していた大手薬品会社で昇進を目論む、出向で同僚だった男がいた
    15億円を50億円にするのに、インド人投資家に依頼
    為替で設けさせるのが出資の条件
    アルゴリズムと巨額の売買をする化け物と仁礼が仕掛ける
    腹違いの兄で政治家に頼めとインド人に言われるが断った
    出向者によるインサイダー取引と裏切り
    バイオベンチャー社長が二人を呼び戻した
    長野での仕事で仁礼は夏休みで海へ

    倒産寸前の食品会社からの依頼
    社長を首にする条件で依頼を受けたが株を51%持っていたので辞めず。
    父である会長がバイヤーを接待する店にしかけた
    社長は自ら平取降格
    結果的に仁礼の条件通り
    次の仕事は長野バイオだった

    条件はインサイダー取引を認めること
    仁礼は食品会社の時にバイオ株の動きでインサイダー取引を確信していた

  • 依頼人のもっとも大切なものと引き換えに、資金作りの協力をする内閣金融局の“特命係”二礼茜。経営難に陥る創薬会社に、インサイダー疑惑が持ち上がり…。ヘッジファンド操る超高速取引に、茜は勝つことができるのか?

    2016年「このミス」大賞受賞作「ブラック・ヴィーナス」の続編。弱小ベンチャー企業からの銀行の融資引き上げなど、池井戸潤作品のような展開も。金融の専門家が読めばいろいろ?なところはあるのかもしれないけれど、そこは気にせずスイスイ読めた。
    (B)

  • 「ブラックヴィーナス」の二作目。今度は、二礼茜がバイオベンチャーの会社を助けべく大きな戦いを挑む。池井戸さんっぽい感じだが、最後は株トレードで読ませる。茜が苦しそうだったけれど、理由がそんなだったとはね(トレードでほんとに苦しんだかもしれないけれど)。ちょっとイメージが違った。

  • まさに痛快‼

    内閣金融局のある部門に秘密裏に創設されたSⅡ、株取引の天才トレーダーが次から次に巻き起こるピンチを救う(^^)

    少し誇張はあるものの、スッキリ爽快感‼

    今回の舞台はバイオベンチャー、共同開発していた大手製薬会社が突然研究から撤退、インサイダー疑惑、さらには銀行から融資引き揚げの通告が……。黒幕は誰なのか???

  • 前作同様、楽しめました。株取引に関する知識はなくても問題ないと思います。
    ただ、狂言回しの役目故仕方がないのかもしれませんが、班長の人、解らなすぎではないでしょうか。

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著者プロフィール

1972年、石川県生まれ。金沢大学法学部卒業。
2015年に『ブラック・ヴィーナス 投資の女神』で第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。
他の著書に『仕掛ける』『看守の流儀』(以上、宝島社)、『相続レストラン』(KADOKAWA)、『ダブルバインド』(双葉社) など。

「2022年 『看守の信念』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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