土の文明史

  • 築地書館
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806713999

感想・レビュー・書評

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  • 人間は、農業を始めたときから、自らの生存に必要な環境を破壊してきた。耕作に適した土地に人間が定住すると、農作物の生産高の増加に伴って人口が増加し、文明が栄える。やがて、増加した人口を養うためにもっと多くの耕地が必要になり、耕作の限界を超えた土地まで耕地にせざるを得なくなる。そうこうするうちに、土壌の流出が加速されて肥沃な土壌が失われ、農作物の生産高が減少に転じる。やがて、その土地が支えられる人間の数が人口を下回るようになり、人口が減少し、文明は衰え始める。生き残った人間が劣化した土地を放棄して別の土地に移住したところで、文明が亡びる。同じことは、歴史上、何度も繰り返された。ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」と通じるところが多い。土壌を保全する効果が大きいのは、自営農家による労働集約的な農業らしいが、例えば現代の日本で、そういう農家が生計を立てられるのだろうか。土にはあまり縁のない都市の住人にできることは、有機農業で生産された農作物の地産地消に努めて土壌保全に協力すること。「1493」の参考文献。

  • 資料番号:011152352
    請求記号:613.5モ

  • 「土」なくして、文明は成り立たない。
    たいへんすばらしい本。
    何回も読みたい。

  • おもしろい!
    歴史を土壌の変化からひも解く本ははじめて。

    これを多くの人に読んで欲しい。
    いかに現代に生きる私たちの生き方が間違っているか、と考えさせられる本。
    自然から離れ、緑を減らし、どこかで集中的に農作物を大量生産させることがいかに人類を破滅に導くことなのか、よくわかる。

  • 歴史軸、地理軸で、土壌がいかに大切か、を解説した本。でもどの時代も、どのエリアも結局その解説は結局は同じになってしまうので、読了に時間がかかる割には、内容の薄い本でした。

  • 要約:土壌は食料生産の根幹であり、人類生存に欠かせないものだ。人口増加に伴い過度の耕作をし、土壌が流出・枯渇したために人口を支えられなくなり衰退した文明は枚挙にいとまがない。現代文明も同じ轍を踏みつつある。

    メモ:
    アダムとイブのアダム←adamaヘブライ語の土・大地
    ホモサピエンスのホモ←homusラテン語生きた土壌
    人口増・狩猟対象動物の現象を受けて農業を始めざるを得ずに人口増につながった、という説
    氾濫原の生産力を人口が凌駕し→斜面耕作→土壌流出→生産量減少→文明崩壊、というパターン
    大航海時代の背景には人口増があったというが、それと同時に欧州の土壌流出も激しかった
    中国には40世代以上に渡り安定して収量を確保できている地域がある。そこでは豊作の時も作物を外部に売らず、自分たちで食べて糞尿を堆肥にしている。地域循環が実現されている。
    グアノ、ナウル、ハーバー・ボッシュ法、BASFという懐かしい名前もちらほら。つながってくるなぁ。
    飢餓の解決は生産量を増やすことではもたらされない


    都市農業でカロリーベースで自給率どこまで上がるものなのだろうか

  • 面白いんだけど、ちょっと眠かった。
    文明史と言うより土・土壌の保全についての本。
    タイトルと副題は売らんがための意訳かな?

  • きわめて地味な存在ながら、まさに陸上生命の基盤である土が、歴史を通していかに収奪されてきたかが繰り返し説明されている。

    人口も土の肥沃度とともに周期的に増減を繰り返してきた。初期のヨーロッパの集落では、人口が増加して土地の利用が拡大した後、土壌浸食によって人口が減少するパターンが青銅器文化が出現するまで続いた。農耕の開始時期や古代文明の繁栄の時期に土壌の喪失がピークを迎えると、その後人口は低迷。中世にはまた人口が増加して、現在は第3のサイクルにある。

    ヨーロッパでは時代を追うごとに、中世の三圃式農業、根粒菌が共生するアルファルファとクローバの導入、17世紀初頭の穀草式農法によって収穫を高めてきた。土壌の肥沃度を維持、回復させるための試行錯誤がうかがえる。

    今日の人類の繁栄を支えている工業的農業についても、その歴史を説明し、限界を論じている。1843年、イギリスで窒素とカリウムを添加した過リン酸肥料を製造が開始された。1913年には、ハーバーボッシュ法による工業用アンモニアの生産を開始。1929年には、天然ガスによるアンモニア生産が始まった。アメリカでは、1960年代末には農業機械と農薬を用いる企業経営の工場式農場が支配しはじめた。緑の革命により、1950年から1970年代前半の間に全世界の穀物生産量は2倍近くになった。しかし、人口が並行して増えたため、緑の革命が届かなかった中国を除けば、1970年から1990年にかけての飢餓人口は10%以上増えている。

    農業は石油消費の30%を占めている。第二次世界大戦前、穀物を輸入しているのは西ヨーロッパだけだったが、現在は北米、オーストラリア、ニュージーランドといった一握りの国だけが大規模な穀物輸出国である。タバコは代表的な食用作物の10倍以上の窒素と30倍以上のリンを土壌から奪うとか、綿花は天然の草地よりも1万倍速く浸食するといった記述も胸が痛い。

    全世界で1ヘクタールあたり年間平均10〜100トンが浸食されており、土壌生成速度の10〜100倍速い(ページによっていろいろな数字が記載されている)。アメリカでは、独立から2世紀の間に表土の3分の1が浸食された。土壌浸食と土地の劣化により、世界の利用可能な土地面積の1%にあたる毎年1200万ヘクタールの耕地が消えている。過去50年間に放棄された農地の面積は、現在の耕地面積に等しい。1980年代には、耕作地の総面積が歴史を通して初めて減少に転じた。

    文明が存続する長さは800〜2000年(30〜70世代)で、30cm〜1mの土壌が完全に侵食されるのにかかる年数と一致する。文明盛衰の原因は気候変動ではなく、土壌であるとの主張は説得力がある。著者は、化学肥料に依存した農業から、土壌を地域に適応した生物システムとして扱う農業への転換が必要だと主張する。そして、政府の補助金や税制上の優遇措置によって、短期間しか農業で収益を得られない土地での伐採や耕作を批判している。国際社会による経済封鎖によって、やむを得ずながら生物学的な施肥と害虫駆除の手法を導入したキューバの例が興味深い。

    内容は非常に満足だが、訳が読みにくいのが残念。何度読んでもさっぱりわからない箇所も何か所かあった。

  • 耕作が引き起こす土壌侵食が、いかに文明を滅ぼしてきたのか。そして今の地球に、増え続ける人類を支える土壌があとどれ程あるのか。土壌は戦略資源であり、人口を支える基礎である。この視点は持ってなかった。間違いなく良本!

  • ローマ帝国、マヤ文明を衰退させた土壌の喪失についての話。

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著者プロフィール

ワシントン大学地形学教授。
地形の発達、および地質学的プロセスが生態系と人間社会に及ぼす影響の研究で、
国際的に認められた地質学者である。
天才賞と呼ばれるマッカーサーフェローに2008 年に選ばれる。
ポピュラーサイエンス関連でKing of Fish: The Thousand ─ year Run of Salmon(未訳2003 年)、
『土の文明史─ローマ帝国、マヤ文明を滅ぼし、米国、中国を衰退させる土の話』(築地書館 2010 年)、
『土と内臓─微生物がつくる世界』(アン・ビクレーと共著 築地書館 2016 年)、
『岩は嘘をつかない─地質学が読み解くノアの洪水と地球の歴史』(白揚社 2015 年)の3冊の著作がある。
また、ダム撤去を追った『ダムネーション』(2014 年)などのドキュメンタリー映画ほか、
テレビ、ラジオ番組にも出演している。
執筆と研究以外の時間は、バンド「ビッグ・ダート」でギターを担当する。

「2018年 『土・牛・微生物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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