コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822245641

感想・レビュー・書評

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  • コンテナの規格化・標準化はマイクロソフトのwindowsに匹敵する産業革命だと思う。それまで陸送・船での輸送・そこに載せるものもばらばらであったものを全世界でどんな手段でも同一サイズ・同一の吊り具を使えるように標準化したマルコム・マクリーンという人は本当にすごいと思う。標準化は世界を制するのだ。物流コスト・荷役の機械化・物流のグローバル化・コンテナリゼーション・JIT・システムの変革・梱包のユニット化・輸送が貿易を変えることで効率化を図った。普段は気付かないところを規格化してしくみそのものを変えてしまうのは仕事でも要求されるところだ。この考え方を参考にしていきたい。

  • ビル・ゲイツのおすすめ本
    http://i-topic.net/bill-gates-the-best-books-2013/
    にあって日本語版が出てたので、読んでみた。

    結論からいうと、コンテナやばい。
    コンテナ輸送の普及は、物流コストを劇的に下げ、効率性を飛躍的に上げ、
    結果的に生産のプロセスそのものを変えてしまった。

    それも、1950年代からのたった50年程度で。

    やはり最初は、誰も見向きもしなかったり、あるいは
    政府やいろんな企業から敵視されたりして、苦難の滑り出しであったが
    マルコム・マクリーンはじめ、野心的な変革者たちの行動で
    徐々に「コンテナにまつわる事業」は姿を見せ始め、
    圧倒的インパクトを生み出すことで本当に世の中を変えていった。

    面白いのは、コンテナ用の設備の設置を渋った「大きな港」は廃れ、
    国中で誰も知らなかったような「小さな港」が、いち早くコンテナ対応した結果
    物流の要衝になっていったという話。
    英国のフェリクストウって街、初めて知ったよ。
    時代の流れに頑固に逆らうものは、置いていかれるという企業あるある話が
    物流をテーマに都市レベルでも起こっていたのが興味深い。

    あと、日本の立ち位置も、本書内でそんなに言及されるわけじゃないけど
    70年代に、米国でのコンテナ主流化のトレンドをちゃっかりつかんで
    東京、横浜、神戸でコンテナ対応を始めて、輸出を加速させたということが
    客観的に分かり、「あー、この時代の日本は、トレンド取り入れるのうまいわ」と思った次第。

    18-20世紀の「モノの時代」の総仕上げを成し遂げたのがコンテナという
    仕組みだったのだな、と感じた。

    //////////////////

    The Box: How the Shipping Container Made the World Smaller and the World Economy Bigger
    by Marc Levinson
    https://www.goodreads.com/book/show/2795229-the-box

  • コンテナの力により、地球に存在する物資の移動コストは意識できないほど小さくなった。日本にいるだけで、ベトナムで縫われたジーンズを履き、アメリカの牧場で育てられた牛肉を食し、インドネシアで組み立てられた電化製品を使える。貿易の足枷となるのは、もはや関税や為替といった仮想的な壁のみだ。全てがごちゃまぜの状態で運ばれる世界から、全てが船でもトラックでも鉄道でも扱える、共通化された箱で運ばれる世界を構築するまでのコストは如何程のものだったのか。本書はコンテナが世界を縮めるまでに、誰が、何と、どう戦ったのかを記す物語。

    破壊なくしてイノベーションなし。新しいシステムは、古いシステムを壊さずにはいられない。コンテナ化がまず破壊しにかかったのが、港での荷揚げを担う港湾労働者達だった。効率化を享受できる消費者から見れば、コンテナ利用に伴うターミナルの機械化に反対する理由はないが、何百年も前からあった職業で何十年も働き続けてきた労働者達に、明日から来なくていいと突き付けることは、社会システムとして許容できることなのだろうか。消え行く職を選択した個人の自己責任だとコストを押し付けることは簡単だが、ついさっきまでそうした職種を必要だと頼ってきたのは間違いなく消費者だ。まして無理やり首を切ったとて、失業者の増加は社会保障費、すなわち税金と治安に跳ね返ってくる。それを一時的に必要な痛みとして受け入れるか、緩やかな着地点を探すか。港湾労働業界では、労働組合の激烈な抵抗により、結果として後者の選択をとることとなった。
    規格の戦いもまた、それぞれが最適な条件を続けたい、古いシステムとの戦いだ。全員が少しつづ損をとるか、少数の敗者を作るのか。論理的な正解は存在するのかもしれないが、試算が完璧にできるほど経済学は熟達していないし、結果をそのまま受け入れられるほど社会は成熟していない。最終的な決定要因は古代の頃から変わらない、権力と政治だ。
    だがしかし、最速ではなかったとしても結果としてコンテナ化は成功し、最大ではなかったとしても社会はその利益を享受できている。これは最終的に良い方向に進んだ結果であり、悪い方向に進んでいる何かは、未だ停滞の中に押し留められているのかもしれない。

    昨今で言えば、個人のスキルと創意工夫が重要視されるWeb系のエンジニアに比べ、組織の一員としての役割が期待されるSI系のエンジニアが下に見られることがあるが、基幹系、勘定系など今の世の中はSIerが構築するシステムに依存している社会であることは疑いようもない。職業というものは全て社会の要請により生じるものであり、ゆえに職に貴賎はなく、職に罪はない。
    だが、それと既得権益による不正を同じにしてはいけない。各々が近視眼的なコスト=ベネフィットを主張するのではなく、社会システム全体の効率を考える。それがこれからの政治経済の役割かもしれない。

  • 意外とアカデミックな趣向の一冊。コンテナ化の経済効果・貿易への影響やそれらへの政府介入が及ぼした作用など。これをの検討を「データだけに頼らず」また「経済モデルも使わずに」行っていくと冒頭に宣言。
    コンテナリゼーションを「全世界の労働者と消費者に影響を与えた大きな動き」として捉えるともいう。

    コンテナ普及前の1950年代前半の埠頭を描く「第2章」・・・筋肉のみがモノを言い事故も頻発したという過酷な労働条件。賄賂が横行するほどの不安定な収入。そして港湾労働の特殊性から生まれた、排他的な協働社会。

    ニューヨーク対ニュージャージーというタイトルの「第5章」・・・ここでもコンテナリゼーションの及ぼした影響のひとつが、象徴的につづられている。いわく、コンテナリゼーションの伸展を境にして、旧港たるニューヨーク側の埠頭から、元々は「牧歌的」な様子だった対岸のニュージャージーの方に、勢いは完全に移行したのだという。
    ニューヨーク側は内航輸送費、ストライキ、犯罪、それに施設の老朽化があだとなったらしい。また、勢いが急速に落ち込みつつあった時期にも、混載船用に新たな桟橋をつくるという「無駄遣い」等、「巨額な投資」を続行したとか。ただそれも結局は勢いをとどめられなかったのだ。加えて、次第にニューヨーク市の世論が、「港の機能はニュージャージー側に移ってもよいだろう」というように傾いて行ったというのも印象的。

    「第6章」は組合のこと。「第7章」はコンテナの規格のこと。「第8章」はコンテナ専用船等を含む物流全体のシステム変革としてのコンテナリゼーションの意義について。いずれも非常に重要なポイント。

    「第9章」として、ベトナム戦争でのロジスティクスでいきたコンテナ物流の強みが、エピソード的に語られている。戦争という有事では、平時とはかけ離れた危機管理や輸送量(そしてそれに伴うインフラ整備)が求められていたという者。その中でマクリーンが(リスクを背負って)コンテナリゼーションの意義深さを実際に示していったプロセスは心地よい。

    「第10章」ではコンテナリゼーションへの世界中の港湾の対応を描いている。コンテナ船にとってみれば寄港地を減らしてコストやリードタイムを減らしたいのは当然のこと。一方、港湾としてもコンテナヤード整備にはずいぶん時間と費用がかかるわけで、このあたりから港湾の「競争」が本格化する、というのはなるほどそのとおりだろう。また当時米国の各市当局が自分たちの港の重要性を熱心に説いて回ったというのが印象的。

  •  今や貨物を船やトレーラーで運ぶのはコンテナと決まっているが、これがいつどのようにどこで始まったのかを答えられる人はそういない。この本には、それがすべて書かれている。
     コンテナの発展に伴う海運業、港湾、労働者、経済環境、会社の興亡などの状況も網羅してある。ロジスティックスという軍事用語がビジネス用語になったのも、サプライチェーンという言葉ができたのもコンテナがあったからこそという説明に納得してしまう。
     コンテナ輸送の実現には、船も港も仕事もシステムとして変更しなければならず、それを最初にビジネスとして実現したマルコム・マクリーンという人はもっと知られるべきなんだろう。

  • [これはもはや、箱事件]いまや流通の基礎を成しているといっても過言ではないコンテナ。ただの箱、されど箱なコンテナの影響力を顧みながら、「コンテナライゼーション」と呼べる物流革命について解説した一冊です。著者は、『The Economist』や『Newsweek』の記事を手がけたマルク・レビンソン。訳者は、金融・経営関係に関する翻訳を多数手がける村井章子。原題は「The Box: How the Shipping Container Made the World Smaller and the World Economy Bigger」。


    人知れず話題を呼んでいた作品らしいのですがこれは本当にオススメ。コンテナがただの箱ではなくシステムであるということを明らかにする過程に、物流について詳しくない自分も引き込まれてしまいました。本書中でマクリーンという革命的な起業家が登場するのですが、彼が流通について持っていた先見性に刮目させられますし、何よりも彼なしでは現代の流通が成り立たなかったであろうことに驚きを禁じ得ません。


    本書が素晴らしいのはコンテナの発明を通して、イノベーションの何たるかを提示してくれるところ。イノベーションが何を端緒として導入されるのか、それを阻む者と受け入れる者の違いは何か、遅れてイノベーションの流れに参入する者がどうやって成功するかなど、コンテナが多くの知見を提供してくれています。それにしても著者自身も本書中で語っていますが、コンテナというシステムがもたらした変化の大きさと速さは驚愕もの。

    〜大型コンテナ船は単に「箱」を運んでいるだけのようにみえる。だが実際には、一国の経済をグローバル・サプライチェーンに結ぶ媒介役を果たしているのである。〜

    箱というミクロを通して世界規模の事象を探るという姿勢もお見事☆5つ

  • [ 内容 ]
    コンテナ船を発明したのは、トラック運送業者マルコム・マクリーン。
    その果敢な挑戦を軸に、世界経済を一変させた知られざる物流の歴史を明らかにする。

    [ 目次 ]
    最初の航海
    埠頭
    トラック野郎
    システム
    ニューヨーク対ニュージャージー
    労働組合
    規格
    飛躍
    ベトナム
    港湾
    浮沈
    巨大化
    荷主
    コンテナの未来

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 埠頭で目にするコンテナが当たり前の光景となるまでの歴史。海運のコンテナ化、陸運との連携、規格化という物理的な動きに加えて、マクリーンによる起業からコンテナ導入までのイノベーションや、機械化に抵抗する沖仲仕との労使闘争など、人の動きも描かれ、非常に読みごたえがあった。
    本文にも何度か繰り返し言及されている通り、コンテナは企業のグローバル化を支えて一部でしかなく、むしろ年代順に考えるとグローバル化があって、コンテナリゼーションが進んでいったとも言えると思う。

  • 実矧ぎ。さねはぎ。
    コンテナの歴史の本を読んでる。コンテナ船の床を実矧ぎで作ったと。調べたら、木材の雄木と雌木の接ぎ方だった。
    釘を使わない組み方の家屋は、地震にもすごく強いそうで。宮大工が伝えるような日本特有のやり方かと思ってたら、アメリカにもあったとは。

  • 【選んだ理由】
    柳生さんか孫さんがが推薦してたから

    【読んだ感想】
    もう少し細かい状況説明が欲しかった。業界変革の流れは分かったが、そこまで感銘を受けなかった。

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