機械との競争

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822249212

感想・レビュー・書評

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  • ■書名

    書名:機械との競争
    著者:エリク・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー

    ■概要

    「これからがデジタル革命の後半戦。飛躍的に能力を
    拡大していくコンピュータに人間はますます仕事を奪われる」
    ーーMITスローン・スクール、デジタル・ビジネス・センターの
    研究者2人が2011年に自費出版した本書の原書である
    Race Against The Machineの未来予測は、アメリカ国内外で
    大きな反響を呼んだ。

    リーマン・ショック後、世界的な経済危機は脱しても一向に
    失われた雇用が回復しない状況に、経済学者は頭をひねってきた。
    代表的なのはポール・クルーグマンが唱える景気循環説。
    雇用の回復が弱く、需要が不足していると見る。第二の説明は、
    タイラー・コーエンが提唱する技術革新の停滞説。経済を進歩
    させる新しい強力な発想が生まれてないからだと見る。

    これに対して、本書の2人は、技術の進歩が速すぎて起きる
    雇用喪失説の立場をとる。つまり、コンピュータとの競争に
    人間が負け始めていることこそ、雇用が回復しない真の原因で
    あると主張する。

    チェス盤の64の升目に米粒を一粒、二粒、四粒、八粒と倍に
    していったとき、最終的にはエベレスト並みの膨大な数字となる。
    いまやコンピュータの能力は、グーグルが実験したように、自動車の
    運転までこなせるようになったが、それはまだチェス盤の半分に
    さしかかったに過ぎない。未来の技術進化はより激しく、人間固有と
    思われてきた領域にもどんどん侵食していき、結果として人間は
    ごく一部の知的エリートと、肉体的労働に二極化されるーー。

    さて、われわれは、そんな未来にどう対処すればいいのか。
    (From amazon)

    ■感想

    書名にもあるように、ITの進歩による、機会と人間の生存競争に
    焦点をあてた一冊です。

    結論から言えば、機械と競争するのではなく、共存してお互いの
    利点を生かしていきましょう!という内容でまとめられています。

    本書の中では、経済が上手く回っていないのは、ITの真価が早すぎ
    て人間がそれに追いついていないためと言っています。
    それにより、格差が発生しているという解析となります。

    これは確かに、一理あるだろうな~と思わせる内容です。

    つまり、噛み砕いて言うと「ITで技術が格段に進化した。その進化
    に追いついて、機械(技術)を使えたものが格差の上位に立った。」
    という事です。

    そりゃそうですよね。

    ただ、面白いのは、単純にスキルが無いと職がなくなるかと言えば
    そうでもない事。というのも、一部の肉体労働は多種多様なコミュ
    ニケーションスキルが必要であり、IT技術ではまだ対応できないも
    のもあるからである。
    たとえて言えば、ウィエトレス、ウェイター、バーテンダーなどが
    そうです。
    ただし、これも絶対にコンピューターが出来ないかと言えばそうでは
    ないです。
    今は出来ないだけで、今の技術の発展速度であれば、20年後は分から
    ないと言っています。

    また、スキルが高くてもコンピュータにとって変わられるものもあり
    ます。例えば、医療分野、法律分野などでです。

    と言う事で、結論として、「どのぐらいのスキルを持っていようが、
    将来はどうなるか分からない。ただし、機械がどのような進化を遂げた
    としても、機械と共存(使いこなせれば)できれば、経済は回っていく
    だろう」という事になります。

    これ、言っている事は至極まっとうですが、具体策は皆無です。
    まあ、具体策が示せるぐらいなら、こんな本書かないで、自分でそ
    の事業を起こしていますよね。
    こうやって書いていて分かったのですが、読んだ後何か違和感があ
    ると思ったのは、これただの評論文だからですね。

    ■気になった点

    ・従来コンピュータに出来ないと思われていたものが、多くのコン
     ピュータで出来るようになっている。

    ・コンピュータはルールに従う仕事は得意である。

    ・今のところ人間が勝っているのは、実は肉体労働の分野である。

    ・コンピュータは創造性はほとんど能がない。

    ・「弱い人間+マシン+よりよいプロセス」は、
     「一台の強力なマシン」に勝った。
     さらに、「強い人間+マシン+お粗末なプロセス」にも勝ったので
     ある。

    ・私は一度も失敗をしていない。うまくいかない方法を一万通り
     見つけただけだ。

  • 現在の高失業率を招いている要因として、技術革新を指摘している本。つまり、技術の進歩により、今まで人間が行っていた仕事を機械が行うようになっているために、失業率が上がっていると指摘している。筆者は、これを憂う必要はなく、技術革新により新たな雇用を生むこともありうると主張している。また、そうなるために、高度な義務教育や高等教育を行うべきだなどと主張している。

    技術革新により高失業率を招いているという指摘は、盲点であったため、新鮮であった。具体例や論理展開も明快であるため、読みやすいと思う。

    しかしながら、実際に機械によって駆逐されてしまった人々をどう救うか、という視点は欠けているように思われる。恐らく、この本にとって先の視点は埒外にあると思われるが、触れて欲しい論点であった。

  •  アメリカを中心に話題になっている本です。「雇用問題」をテクノロジーの進化との関わりという文脈の中で議論しています。
     本書において著者たちは、「コンピュータが人間の領域を侵食することにより雇用は減り、その減った雇用は、高所得を得られる創造的な職場と低賃金の肉体労働に二極化する」との見通しを示しその状況に警鐘を鳴らしています。しかしながら、彼らの最終的なスタンスは楽観的です。
     結論はそのとおりになるかもしれませんが、全体を通して論考が甘く、正直なところ物足りなさが大いに残る内容でした。

  • ・サマリ
    テクノロジーの伸長によりコンピュータが置き換えられる仕事が増えていく。現時点でもこれは怒っており、企業業績の伸長に比して雇用の伸びは停滞している。

    さらに、コンピュータの能力の伸長は指数関数的であるため雇用に対する悪影響は今後大幅に大きくなる。これによりスーパースターと負け組の格差が広がり社会に悪影響が及ぶ、あるいはすでに及んでいる。

    これに対して社会的、個人的な対応策が必要である。社会的に所得の再分配は安易な手段であるが、労働の対価が金銭だけでないことを考えるとそれだけで十分とは言えない。教育を拡充して行くことが必要である。個人としてはテクノロジーと敵対するのではなくテクノロジーを活用していくことが必要である。チェスにおいて世界チャンピオンがコンピュータに敗れたのは10年以上前のことであるが、現在最強のチェスチームは人間とコンピュータの混合チームである。人間とコンピュータは相互補完的に働きうる。

    著者はテクノロジの伸長が社会に及ぼす影響について上記のような歪みがあるとしても一方で楽観的である。過去の二度の産業革命と同じように人類の生活をよりよい方向に向かわせることを確信している。

    ・感想
    - 総論としてAgree。現在起こっていることとしても、近未来の予測としても腑に落ちるところが大きい。先日の将棋の電脳戦もタイムリーに象徴的な出来事。
    - では、どうすれば?というところは社会的な対策はともかくとして個人的には現実感が乏しい。じゃあこれからどうしよう?
    - 貪欲な改善意識と日本との差。教育分野や起業意識といったところに改善提案がされているが、より遅れていると思われる日本の環境からすると一歩も二歩も先をいかれている感覚。

  • 図書館の返却コーナーに置いてあった本で、タイトル(機械との競争)に惹かれて手に取ってみました。この本の著者である米国の方が、なぜアメリカの失業率は、景気が良くなったにもかかわらず低迷し続けているのかについて解説及び将来への提言をしています。

    印象に残った点は、技術の進歩がいよいよ人間を労働力として必要としなくなってきたということです。進歩のスピードは、過去2回の革命(蒸気機関、電気)と現在進行中のコンピュータとネットワークによって加速度的(2の階乗のスピード)に速まってきていて(p155)、現在はチェス盤(64升目)の半分を通過した辺りであろうとしています。つまり、これからスピードは更に上昇することを暗示しています。

    このスピードが、身分の格差や、スーパーエリートと一般人の格差を大きくしているようです。技術の進歩により、生産性が上がるのは喜ばしいことですが、そのために失業者が増えるというシステムは、「人間の社会」として理想的な姿であるのかどうかを考えさせられた本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・米国の国際総生産は 2009.6の大不況終結以来、7・四半期の間に年率換算で平均2.6%の成長率を記録、これは1948-2007の長期平均を上回る数字、アメリカの企業収益も史上最高、設備・ソフトウェアの投資はピークの95%まで回復、なのに新規雇用は控えられたまま(p11)

    ・機械による雇用なき景気回復は、1980,1990年代、21世紀の最初の7年間の失業率が低かったので、雇用喪失説は信用されなかった(p19)

    ・コンピュータが更にパワフル、高度化するにつれて、仕事・スキル・経済全体にこれまで以上に大きなインパクトを与える、問題の根本原因は、大不況ではなく、人々が「大再構築」の産みの苦しみに投げ込まれていること(p23)

    ・グーグルの自動運転車、ライオンブリッジの機械翻訳ソフトは、デジタル技術によるパターン認識能力、複雑なコミュニケーション面での能力が向上したことを証明した(p36

    ・1988-2003年の15年間で、処理速度が4300万倍の高速化を達成したのは、プロセッサの能力向上(1000倍程度)より、アルゴリズムが4.3万倍に高性能化したことが大きい(p40)

    ・1958年をIT元年、ムーアの法則による集積密度倍増ペースを18か月とすると、チェス盤の32マス目に到達したのは、2006年になる(p43)

    ・人間の能力でコンピュータに犯されない領域は、いまのところ肉体労働の分野、体の動きと知覚をうまく組み合わせる必要があるため(p53、99)

    ・生産性の伸びが1990年代から大きくなっている(1960年代と同等)のは、情報技術が原動力である(p65)

    ・現在の失業の説明としては、解雇の増加ではなく、雇用の喪失である、雇用主は以前ほど労働者を必要としなくなった(p72)

    ・技術革新がもたらす3種類の勝ち組、負け組の定義、1)スキルの高低による労働者、2)スーパースターと普通の人、3)資本家対労働者、これらが重なり合っているのが重要(p78)

    ・経済の拡大をもたらした相次ぐ技術革新は、機械を敵に回しての競争ではなく、機械を味方につけた競争から生まれた(p109)

    ・世界最強のチェスプレーヤーは、二人のアマチュアプレーヤーと3台のコンピュータからなるチームで、弱い人間+マシン+よりよいプロセスが勝者となっている(p110)

    ・提言の1つとして、特許制度の改革(訴訟が大量におきるため、特許取得を煙たがる風潮あり)、著作権の保護期間は伸ばすべきでない、がある(p139)

    ・指数関数的に進むコンピュータは雇用に大きな変化をもたらす、1)雇用の総量が減る、2)雇用の二極化が進む(p171)

    2013年4月6日作成

  • 日経ビジネスのWebサイトでこの本の冒頭部分が紹介されており、非常に興味深かったので購入して読んでみました。
    短くて1日で読み終えられる本ですが、内容にはいろいろと考えさせられるところがあり、いい本だったと思います。
    コンピュータの発達が想像以上であり、従来は人間でないとできないと思われていたような高度の分析、判断、コミュニケーションまでこなせるようになってきており、多くの雇用が機械に置き換わってしまった結果、失業が増えているというのは、実際その通りだと思います。
    それを克服する方策は、コンピュータやネットワークを使って自らのアイデアで改善・改革を行えるスキルを身につけた人を増やし、労働のミスマッチをなくすこと、そういう教育システムや労働市場の流動性が極めて重要になってくるという解決策も、まさにその通りでしょう。
    自分自身のこれからのスキルアップや、子供たちへのアドバイスを行う上で、必ず念頭に置いておく必要があると思いました。

  • 約10年前に書かれた本ということを前提に。
    発展による未来予想系の本だが、予想と現実が違うことがよくわかる。
    正確な未来は予想できないが、近い形では実現していく。
    その中で自分はどうするか。
    そんなことを考えた。

  • 機械との競争によって失業者が世に溢れるディストピアを描く…訳ではなく、意外にも筆者はデジタル社会の将来に楽観的。ただし、的確な政策が講じられれば…と説く。
    トランプ政権の4年間でこの理想とは反対に進んでしまったように思える。

  • この手の本では比較的以前(原著は2011年)に書かれた本だが、人工知能の発達による影響について、比較的冷静かつバランスのとれた見解が書かれているように感じた。

    「機械との競争」というタイトルとは裏腹ではあるが、機械と競争することは勝ち目がないし生産的でもない。19世紀に蒸気機関と力作業で対戦したジョン・ヘンリーのように。

    むしろ、人工知能の発達した時代において最高の成果を挙げているのは、コンピューターとパートナーシップを構築したチームだ。チェスの試合でディープブルーがカスパロフを破ってから20年が経過したが、現在のトーナメントではコンピューターと協働する「フリースタイル」の参加が認められる大会が数多くあり、チェスの技量よりもマシンの計算能力よりも、人工知能を活用する「プロセス」の良し悪しが勝敗を左右する結果となっているようである。

    とはいえ、人工知能を活用する「プロセス」を構築できる能力というのは、やはり高度な知的能力を要求されるものであるだろう。そのため、人工知能の発達によって人類は全体として豊かになれるものの、本書もこれからの社会における格差拡大の可能性は否定していない。

    それをできる限り抑制するための低減として、「教育への投資」、「起業家精神の育成と起業家支援の体制」、「通信・輸送インフラや基礎研究への投資」、「新しい産業への法規制の緩和と税制の再構築」といったことを進めていくべきであると筆者は提言している。

    現在でもまだ人工知能による経済や社会への影響についてのさまざまな議論があるが、「機械との競争」という考え方の枠組みを脱して、機械とパートナーシップを築く経済のあり方や人材の育成について考えていくべきというスタートポイントを改めて認識させてくれる本だったと思う。

    出版から時間がたっているが読み返してみる意義がある本ではないかと思う。

  • 装丁が面白い。色あせたように見える黄色い紙を使用。紙が厚くページ数が少ない。内容は見た目ほどのインパクトはなかった。

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