- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834081220
感想・レビュー・書評
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美しいお話だった。
悪い人がいない。
どろぼんのお父さん、お母さんのたまよさんも置き去りにされていた赤ん坊のどろぼんを、当然のようには育てている。
どろぼんもチボリさんもしあわせになってほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どろぼん、えらい… 。そして、ラストは、感動。
私もものの声聞いてみたい。 -
読んでみて意外。こんなにしっかり刑事ものだとは思ってなかった。取調室や部下との遣り取り、どろぼんを捜索するくだりなんかは、完全に刑事小説。
面白かった。
どろぼんの能力にまつわる部分は確かにファンタジーなのだけど、ひょっとしたら、そんなこともあるかもなんて思ってしまう。先を想像させられる終わり方もいい。
呪文が出てくるのは児童書らしいけれど、それも言葉遊びになっていて楽しい。擬音語のようなものの声もシンプルなのに、ぐっとくるものがある。 -
どろぼんはどろぼうの天才です
背が高くもなく低くもなく
ふとってもやせてもおらず
十代かもしれないし五十代かもしれず
たしかに会ったことがあるはずなのに
顔も声も思い出せなくなってしまう
そんな男です
ですから千回もどろぼうしているけれど
ケイサツにつかまったりおいかけられたりしたことがありません
それだけでなく、どろぼんがぬすむのは
持ちぬしが、それがあったことさえおぼえていないもの
なくなったことさえ気づかないものばかり
どろぼんはそういうものの声を聞ききとることができるので
耳をすませて声のみちびくままにどこへだって忍び込み
だれにも気づかれることなくぬすみ出してしまえるのです
そんなどろぼんを刑事のぼくはつかまえてしまいました
さあ、どろぼんの取り調べがはじまります
人が信じられなくなった人に贈る心ふるえる物語
詩人斉藤倫の初の長編物語、2014年刊 -
なーんかきれいな色の表紙だなあっと手にとる。
と、中の挿絵も素晴らしかった!
特に公園で赤ちゃんに出会うシーン。感動的な美しさである。
おはなしも素敵だ。
よくみたら斉藤倫さんだった。
なるほど、納得。
この人、めちゃ好きだ、と再度確認。
確か詩人さんってあった気がするんだが、どんな詩をかかれるのか興味深々。
ものの声がきこえるどろぼう。
忘れられ、見向きもされないものたちが
助けを請うように呼びかける声。
あることすら忘れられているんだから
盗んだところで、誰も気づかない。
なるほどー、だから捕まらないのねー。
でも、お話は冒頭、そのどろぼんが捕まるところから始まるのだ。
ものの声といきものの声、
どろぼんはこれから両方を聞いていけるのだろうか?
ふしぎなじゅもんのような唄のような、
どろぼうどろぼん、の旋律がどこからか聞こえてこないか、
ふと歩きながら耳をすませたくなる一冊。 -
福音館のFacebookで紹介されていて気になったので、借りてみた。
わくわくする装丁!牡丹靖佳さん、覚えておこう。
静かに、ゆったりと流れる、ちょっと不思議などろぼうの話。素敵だ。
止まらず読んだ。
最後に泣いてしまった。
やさしい、おはなし。
読み終えた余韻がすごくて、これが消えてしまうのがもったいなくて、何もできない。どうしよう…。
良い本には大人向けも子ども向けもないのだ、と改めて思った。
言葉が美しいと思ったら、詩人の方の作品なのですね。詩も読んでみたい。 -
この作品に限らず、本当に好きな部分がある作品は必ず論理で片付かない部分がある(しっかりと感想を残しておきたかったからレポートの題材に選んで、テーマ(どろぼんは、あわいの存在ではないか、というもの)を自分で設定して書けたから、それはそれで良いけれど)。
論理で片付かない部分を自分だけで反芻しているときが一番幸せな時間だという気がする。良さをひとと共有できるまで、自分の中の言葉を探す喜びもずいぶん分かってきたけれど。
例えば「どろぼん」を読んで、モノの声が聞こえる事は凄くさみしいと同時に全然さみしくないなと思ったこと。人は心の中や家の中に森を隠していると思うと、楽しい面白いと同時に恐ろしいしさみしいだろうと想像した(人の持っている森が「まとまり」で維持されているかどうかは、他人にはわかりにくいから)こと。こういう事はどうやって書いたらいいんだ。 -
必要とされなくなった「もの」の声が聞こえる、どろぼん。
「もの」の声に導かれるように「もの」を盗み出す。
そんなどろぼんが、ある雨の日、刑事に捕まる。
というより、目が合った刑事に、逮捕してくださいと言わんばかりに手を差し出した。
取り調べで語られる「どろぼう歴」。
どろぼんの話に引き込まれる刑事。
優しい雰囲気に包まれた、優しい物語でした。