船に乗れ!〈1〉合奏と協奏

著者 :
  • ジャイブ
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861765797

感想・レビュー・書評

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  • コンセプトコーナー2011年 7月「本屋大賞ノミネート作品」選書。

  • ひたむきで一生懸命、でも世間知らずでわがままな高校時代を思い出してひさしぶりに胸がキュンキュンしました。
    主人公津島サトルは二流だけど音楽大学付属校在学の高校生。
    私たちの青春時代とはちょっと違う、練習練習で音楽漬け、末は音楽家をめざす人たちの非凡な高校生活なので比べようもないけれど、でも青臭い空気はものすごく伝わってくる。
    初めて女の子をものすごーく好きになり、彼女の好意も感じてHAPPYになり、初々しいデートをする。音楽を通して意見を交換したり、バイオリンとチェロでアンサンブルしたり、オペラを見て二人で感動したりと普通の高校生とは違う関わり方だけど、ピュアな気持ちに変わりはない。
    もともとサトルは哲学書を読むのが好きな、生意気な子供で、高校で出会った哲学の金窪先生に傾倒し、いろんなことを教えてもらう。
    第一巻は出会いと発展 とってもハッピー♪
    第二巻は暗黒(ここからネタバレ)
      サトルはドイツへ留学し、彼女に寂しい思いをさせてしまった。その間に彼女に子供ができ、学校をやめて結婚することになる。あんなに音楽に対してはストイックな女の子だったのに・・・・あまりに唐突な展開に唖然。その腹いせから、大好きなはずの金窪先生につっかかり、アドバイスをくれた先生を裏から手をまわして学校から追い出してしまう。
    第三巻は決断、そして再会
      音楽家になることをやめると決断。それでも文化祭や発表会の練習は全力で続ける。そしてその文化祭で彼女(南)と劇的な再会をする。金窪先生とは・・・・先生が学校をやめてしばらく経ってから許しを請いに家を訪ねる。そこで金窪先生がサトルを許さないと言いながらも送ったニーチェの言葉、「船に乗れ!・・・・・・」 「船に乗ると揺れる。揺れると船酔いをする。船酔いはいつかなくなるだろう。でも揺れはいつまでも続いてる。船はもう揺れてないなんて思ってはいけないよ。船酔いがなくなったからといって、船が揺れ続けていることを忘れてはいけない。(これは先生の言葉)」と言ってサトルを家から追い出した。

    泣ける・・・・
    この本には泣ける要素が満載なのだ。
    この青春時代の苦い話を、40歳過ぎて平凡なサラリーマンになり、音楽とは無関係の女性と結婚した男が回想して書いてるという設定自体がそもそも泣ける。
     親友伊藤慧とのかかわりあい方も泣ける。合宿先でお互いに演奏し合い、伊藤のフルートを聞いて「こいつ天才だ。」と思うのである。一方サトルのことが大好きな伊藤は三年の文化祭、「秘密のコンサート」と称して、音楽をあきらめたサトルにだけに学校の屋上で演奏を聞かせる。伊藤はのちに国際的フルート奏者になるのだ。

    人は若い時に夢を持ち、一生懸命になる。
    やがてそれは夢に過ぎないと知り、現実をみつめる。
    その現実も悪くないと、年を重ねて落ち着き、時々あのきらきら輝いていた青春時代をまぶしい気持ちで思い返すのである。

    最近は弦楽器のアンサンブルとか聞いちゃうと、サトルと南の練習風景を連想してしまい、これまた泣ける。





         

  • 読む前は、のだめカンタービレみたいな明るく楽しい音楽家のお話なのかと思っていた。暗い出だしから始まり、何だこれはと思っていたら、楽しい高校生活が始まり良かったと思っていたら、急転直下、奈落の底に。哲学の話を除いては分かりやすく3巻一気に読めたし、、まあまあおもしろかったけどなんでそんなに人気があるのかわからなかった。

  • 『僕たちの人生の主役は音楽で、音楽の、この絶対的な美しさの前では、僕たちの喜びや悲しみ、怒りや苛立ちなどなんて、ほとんど意味なんかない。』

    あらすじを読んだ感じ内容が稚拙すぎるではないか?と心配になったが、読み始めるとそんなことは全くなかった。

    ただひたすら音楽に真摯に向かう彼らの姿勢はすばらしい。それが無知ゆえのものだとしても。また、第二巻第三巻での波乱の展開が全く予想できない明るさがあるのも良かった。

  • ★★☆☆☆
    主人公とヒロインがどうしても好きになれず(^^;)すみません。
    全3巻
    (まっきー)

  • 音楽一家に生まれた僕・津島サトルは、チェロを学び芸高を受験したものの、あえなく失敗。不本意ながらも新生学園大学附属高校音楽科に進むが、そこで、フルート専攻の伊藤慧と友情を育み、ヴァイオリン専攻の南枝里子に恋をする。夏休みのオーケストラ合宿、市民オケのエキストラとしての初舞台、南とピアノの北島先生とのトリオ結成、文化祭、オーケストラ発表会と、一年は慌しく過ぎていく。書き下ろし、純度100パーセント超の青春2音楽小説。

  • 主人公の中学生時代から始まる。ニーチェを読む自分、チェロを弾く自分、おっぱいの大きな美人教師、顔がキレイな同級生の女の子が好きという昔の僕と全く一緒だからか、むずがゆい気持ちになるけど面白い。僕はチェロは弾かなかったけどね。音楽青春モノって、マンガの「のだめ」や「ピアノの森」が面白いように、音楽のディティールは興味ないけど面白いのが不思議。次の?巻が、すごい楽しみ。

  • 音楽の話ってのは知っていましたが
    題名が「船に乗れ」なので船上のピアニスト的なのかと思ってしまいました
    全然違う

    主人公 津島サトル の回想から物語が始まります
    中学生そして中心となる高校時代
    津島くんはチェロを専攻しています
    音楽用語が多くて少し難解なとこが読みづらい
    そして回想って所も読みづらくしているかも
    なかなか楽しそうな高校生活です
    船には乗りません

  • 「船に乗れ!」藤谷治
    青春音楽小説。ミスト。
    2010年本屋大賞第7位。

    ※ネタバレ注意※

    タイトルも作者も全く知らず通りすがりで手にとった一作。青春音楽小説という最近流行りの題材で。つなぎの読書にいいかなと思ったんですよ。

    もうあり得ないくらい感情移入しっぱなしの、心をえぐられるような大当たりで…
    ストーリーを追うのが止まらない。なのにページを繰るのが辛い辛い… 切なすぎて。
    いや、切ないってのも違うな、俗な意味でイタイタしいんだけど、それを我が身に投射して、いてもたってもいられなくなる。
    若い。青っちょろい。だけど紛れもなく感情移入してしまう。

    人生とともにあった音楽と、青臭く崇高な恋をした彼女と、心から語り合える恩師を、自ら失う物語。そして自ら“をも”失い、全てが嘘としか思えないその後の人生を送ってなお、、揺れ続ける船で航行している。
    あまりにも写実的な哀しいストーリーに、身につまされる。
    だって、回顧している「私」は四十過ぎで、自分まだ三十前で、お先真っ暗じゃんか!!
    やーだよもう。。

    特☆5です。

    最終章の再会、は若干蛇足の感もありつつ、あれがないとホントに救いようがないと思う。
    たぶん編集さんによって付け加えることになったパートじゃないかと邪推。
    そしてそこに南が出てこないことによって逆に打ちのめされるという、男のどうしようもなさよ、、

    救いのない悲恋劇なんてたくさんあるし名作もいくつもある、その中でこんなに してやられた のは、藤谷さんがホントウに虚無感のなかで書いてるんじゃないかと感じたため。…んー、表現しにくいな。
    最後の最後でこれを書いたら気が軽くうんぬんの下りがあるが、あれを読んで、とても不謹慎ですが、藤谷さんがこのあと離婚なさったり自傷なさったりしたりするんじゃないかと思い、そしてそうなったら自分とことんまで立ち直れないだろう。
    それくらいのホントウさと感情移入さなんですよ。
    そして当然そんなことはなく過ぎていく日常によって、過去の自分を抱きしめることあたわず、船の揺れを感じ続けるだけなん。

    オールマイベストの3本指に入る。掛け値なく。
    願わくばこの作家さんだからではなくこの作品だからであってほしい。。心がもたないよ。(5)

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著者プロフィール

1963年、東京都生まれ。2003年、『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』(小学館)でデビュー。2014年、『世界でいちばん美しい』(小学館)で織田作之助賞を受賞。主な作品に『おがたQ、という女』(小学館)、『下北沢』(リトルモア/ポプラ文庫)、『いつか棺桶はやってくる』(小学館)、『船に乗れ!』(ジャイブ/ポプラ文庫)、『我が異邦』(新潮社)、『燃えよ、あんず』(小学館)など多数。エッセイ集に『小説は君のためにある』(ちくまプリマ―新書)など。

「2021年 『睦家四姉妹図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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