邪悪なものの鎮め方 (木星叢書)

著者 :
  • バジリコ
3.87
  • (65)
  • (85)
  • (61)
  • (9)
  • (5)
本棚登録 : 861
感想 : 107
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862381606

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 内田樹氏の幅広く柔軟で奥深い思想が、縦横無尽に広がる。
    右とか左とか、あるいは手垢のついた既成の論理を超えた思考法が、身近な問題から世界的な問題までにどう向き合うかの、ヒント満載の一冊。

  • p.50
    暗号はそれがあたかも暗号ではないかのように書かれなければ意味がない。だから、書き手から読者への「コールサイン」はつねに「ダブル・ミーニング」として発信される。
    表層的に読んでもリーダブルである。でも、別の層をたどると「表層とは別の意味」が仕込んである。その層をみつけた読者は「書き手は私だけにひそかに目くばせをしている」という「幸福なさっかく」を感知することかできる。

  • 内田さんが過激派だったとは知らなかった。

    道徳律というものはわかりやすいものである。
    自分のような人間ばかりだと暮らしやすくなると思う人は自分に祝福を贈っていることになる・・というところに同感。
    自分で自分に呪いをかけないように。
    マルクスは話がでかくて面白い・・とあったので読んでみようと思う。

  • 「どう振る舞っていいか分からないときに、適切に振る舞うためにはどうしたらいいか」、その答えを「ディセンシー(礼儀ただしさ)」「身体感度の高さ」「オープンマインド」と解く著者。その心は・・。

    自分にとって、一番ドキッとさせられた項は、「原則的であることについて」。原則的であることが必須である側面としては、親が子供たいしてとる態度であるが、一方で原則的でない方がよい局面もあるいう。例えば、教師、さらには「老師」というような格になると、相手が幼児的な段階にあるときは原則的に振る舞い、相手がが十分に成長してきたら無原則に応じる。問題は、これを自分に対して適用する場合だ。往々にして、私たちはは自分たちにも原則的を適用し、自分を律しようとする。幼児な自分を制御する親=自分であろうとする。しかも、親と子供の関係と異なり、いずれも自分である場合には、制御する自分を乗り越えようとは思わないため、原則そのものを疑いにくい。その結果陥るのは、「若い頃にはなかなか練れた人だったのが、中年すぎると手のつけられないほど狭量な人になった」というケースであるという。

    自律とはかくにややこしいものかと思わされた一節。

  • 140724

  • 筆者は「『邪悪なもの』との遭遇とは、『どうしていいかわからないけれど、何かしないと大変なことになるような状況』」と定義している。

    それに相当するブログのトピックを編集者が選んで作った本だそうだ。2005年1月から2009年秋まで。

    話題は1Q84、全共闘、新型インフルエンザ、裁判員制度、「誰でもいい」殺人、武道、ミラーニューロン、マルクス、草食系男子、家族・・・と多岐に渡る。

    ここに出てくる、「ほおっ」と思った部分を内田樹語録として箇条書きする。*で感想を付け加える。

    1.「年齢や地位にかかわらず、「システム」に対して「被害者・受苦者」のポジションを無意識に先取するものを「子ども」と呼ぶ。」
    *システムを何とかしようと手を挙げる「大人」が少し出てくると、良い。

    2.(新型インフルエンザに際して)「街の人々は自前でマスクを買って着用されており、自己負担で感染を予防されているのである。これを「模範的市民」と呼ばずに何と呼ぶべきか。」
    *震災の時もパニックは起こらなかった国民性。何か起こった時の対応で国民性を言うのは分かりやすい。

    3.「自分こそその「幸福な少数」であるという自覚ほど読者を高揚させるものはない。」
    *これはオタクの快感だな。逆に、多くの人と共感する、共有する喜びもあるな。映画館や、ライブや、野球場で歓声を上げるとき。

    4.「「コールサイン」の最も初歩的な形態が「本歌取り」である。これは「本歌を知っている読者」と「知らない読者」をスクリーニングする。」
    *これを教養と言っていたんだな。

    5.「どうして私だけしか知らない私のことを他人のあなたが知っているんですか?というふうに世界各国の読者たちから言われるようになったら、作家も「世界レベル」である。」
    「おそらく読者は物語を読んだあとに、物語のフィルターを通して個人的記憶を再構築して、「既視感」を自前で作り上げているのである。」
    *フィクションで読者の心を掴むのはこれだ。

    6.「裁判員に選任されたことによって重篤なPTSDに罹患する市民が出た場合、彼らは「職業上知り得た秘密」を医師やカウンセラーに話してもよいのか、それさえも禁じられているのか、そのあたりのことは事前に明らかにしておいた方がいいような気がする。」
    *確かに。

    7.「誰でもよかった」というシリアルキラーに対しては「できるだけ言及しないことで」あり、さらに「動機のみすぼらしいほどの合理性にうんざりすることである」
    *皆で無視しよう。

    8.「『人を見る目』というのは、その人が『これまでしたことに』に基づいて下される評価の精密さの事ではなく、その人が『これからするかもしれない仕事』についての評価の蓋然性のこと」
    *ノーベル賞は違うな。

    9.「人間は同時に二つの苦しみを苦しむことが出来ない」
    *スズメバチに刺された時は、注射をうたれても全然痛くなかったぞ。
    *悲しみはどうかな。

    10.「ミラーニューロンが活性化した人は全員が同じ幻覚を見たのである。それは『幽体離脱』である。」
    *・・・・わからん。一度やってみたいものである。

    11.良い本とは良いことを言っているというよりむしろ、読んでいると「私たちの思考に『キックを入れる』」本のことだと言っている。
    *そうそう、触発されて色々思いつく。

    12.「フィンランドは人口520万人である。兵庫県(560万)より小さい」「国の規模という量的ファクターを勘定に入れ忘れて国家を論じることの不適切さ」「小国が『したたか』になり、大国が『イデオロギッシュ』になるのは・・・もっぱら『サイズの問題』なのである」
    *小さい国でもイデオロギッシュな国はあるぞ。

    13.「企業は『縮む』ということについてノウハウを持っていない」
    *都市もそうだ、国家もそうだ。人間もそうだな。

    14.「環境への負荷や食糧自給の観点から見れば、人口減は『最適ソリューション』以外の何物でもない。」
    *ふ~ん。

    15.(神戸女学院大の)「キャンパスに設計者のヴォーリズはたくさんの『秘密の部屋』や『秘密の廊下』を仕掛けた。」
    *一度神戸女学院大に行ってみましょう。

    16.「相手が信じられないから結婚できないのではなく、自分を信じていないから結婚できないのである。」
    *出来ないかどうかはともかく、適当に考えて「しない」人もいる。

    17.「最近の学生は「『自分より豊かな人たち』に向かって『あなたの持っているものを私たちに与えよ』というのを止めて、『私より貧しい人たち』に『私は何を与えることができるか』を問う方向にシフトしている。」
    *健全である。

    18.「もっとも安定的な家族とは、役割が固定している家族ではなく、むしろ『気づかう人間』と『気づかわれる人間』が局面ごとに絶えず入れ替わるような流動性のある家族だ」
    *そうそう、そういうもんだ。

  • 2014/2/19

  • お正月、お祓いも兼ねて読了。感想はあり過ぎて言えないけれど、他の作品も是非読みたい。とにかく考えのお祓いになったってことです。

  • 装丁:鈴木成一デザイン室

  • 内田さんの本を読むと、自己肯定感が出てくるので好き。家族や社会との関わり方が見えてくる。自分を愛するように他者を愛せよ!

全107件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内田樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×