ネット右翼の逆襲--「嫌韓」思想と新保守論

著者 :
  • 総和社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862860705

作品紹介・あらすじ

「在特会」問題で世論を沸騰させた「ネット右翼」。排外主義とレッテル貼りするまえに、いまやごくふつうの日本人でさえ抱くようになってしまった「嫌韓」感情の背景こそ、直視しなければならない。約千人にのぼるアンケート調査、取材によりネット右翼の虚像と実像を若き論客が徹底検証する。

感想・レビュー・書評

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  • ネット右翼の逆襲--「嫌韓」思想と新保守論 単行本 – 2013/4/25

    ネトウヨと実態を分析した本
    2013年10月15日記述

    古谷経衡(ふるや つねひら)さんの著書。
    いわゆるネトウヨに関しての分析をした本である。

    実はネトウヨとはレッテル張りの結果、実態と相当かけ離れたイメージを持たれるに至っているという指摘には納得感があった。

    一章にあった2009年の衆議院選挙でよく見たネトウヨのイラストと対比させてある民主党支持者のイメージ図には苦笑してしまう。
    その後の民主党の現実を思うとこんなイラストを書いた人はどう思っていたのか・・
    この一点を見ただけでも単なる印象操作であったことに疑いはない。

    対談していた三橋貴明氏も指摘していたけどワープアで生活が苦しい人たちがネットに夢中になりすぎている余裕はないはず。

    秋葉原は政治的に無色。2005年にヒットした電車男やブラック企業に勤めているんだが
    俺はもう限界かもしれない等の作品、または麻生太郎の秋葉原の誤解などが相まってネトウヨのイメージが構築されたとする。

    低所得、無職、低学歴といったレッテル張り以外のなにものでもなかったことが
    著者自身の1000人にも渡る調査から明らかになってくる。

    在特会問題、新保守論にまで本書は述べていく。
    昔の保守、自民党がソ連との対峙の中で韓国に対し友好であったこと、
    保守側に嫌韓感情を持つネトウヨが表現の場をネットに求めたという解説はなるほどと思った。

    本書の内容は興味ふかいし分析も面白かった。
    しかし誤字がやや多くないかと思った。
    ちょっとその点は残念に感じた。

    • mayuotukaさん
      誤字多かったですね。
      誤字多かったですね。
      2022/08/24
  • ネット右翼と言われる人たちの存在とは何か?

    巷間言われているような、過激な排他主義のイメージのネット右翼。
    著者は調査とインタビューを繰り返しながら、それに対する反論を行っている。

    本書にもあるように、「在特会」というレイシスト集団について、保守を自認している20〜60代の方々は批判的である。

    「在特会の下品な活動や、それを支持する粗悪な言説が大手メディアで取り上げられればられるほど、日の丸や愛国の価値が下がっていくような気がする」

    「保守派の集会と在特会の集会は、日の丸や君が代といった共通点があるので、事情に疎い人は在特会と保守をどうしても混同してしまう。
    在特会が知性のない、下品極まる振る舞いをして保守の評判が下がるのはやるせない」

    などなど。

    マスコミなどで報道される「ネット右翼」ひとくくりにした言い方には語弊がある。
    リベラル⇄保守、左翼⇄右翼、革マル⇄在特会など、ある程度整理が必要であると思う。

    敗戦後、日本人の心の中に頚となっている「保守」的なものへの恐れ。

    世の中をフラットに考えるためには、リベラルこそが素晴らしいという考えを疑ってみるのも必要ではないだろうか。
    新自由主義の名のもとに行われた「改革」がはたして国民のためになったのか?

    歴史や伝統というものには意味があるからこそ、現在でも続いている。
    我々は歴史の中では点でしかない。
    そいうった過去の遺産を我々の代で無くしてしまうことの恐れが保守の本質にはあると思う。
    それは過去に対する敬意であり、未来に対する責任である。
    時代とともに伝統や文化も変わる。
    それはしょうがないにしても、熟議した上で緩やかに変えていくことが大切なのではないか?

    保守というのは、軍国主義になるとか、外国人を排斥するというのとは全く関係のないことだということを、もっと発信してもいいと思う。

    本書においては、保守に対する間違った認識に対するひとつの答えを示しているだけではなく、変更報道や知識人といわれる人々の保守層への差別的発言など、様々な問題を鋭く指摘している。

    在特会=保守という認識をもたれている方にこそ読んで欲しい一冊。

  • 新聞で著者を知り、図書館で借りて読みました。風邪で仕事を休まなければならず、時間ができたので一気に読むことができました。
    ネット右翼や「嫌韓」思想について、発生の経緯や潮流の解釈が分かりやすく、面白かったです。
    自分のボキャブラリーや認識の貧困、無知を自覚させられました。
    平成25年4月30日初版です。

  • 社会
    思索

  • ネット右翼=社会の底辺という誤った認識/レッテルを丁寧に検証、改めている。

    ネット右翼は秋葉原(リベラルな欲望=オタクの欲望の街)から生まれた? それとも秋葉原という土壌がネット右翼を羽化させた?

    ネット・コア・ユーザに対する嫌悪、忌避感が根底にあって、それは良く判らないものは排除したいという田舎の率直な感情なのだと思う。田舎に残っている若者は"ヤンキー"か"オタク"しかいない、或いはその二元論でしか田舎に残った老人は判断できなくい。"ヤンキー"は早々に家庭を持って、落ち着くけれど、"オタク"はそうでない。家庭を持つというのは田舎に残った人、出なかった人にしてみればかつての自分たちの姿だから理解できるけれど、そうでない人は良くわからない、理解できない。

    そこにきて"オタク"という属性がはまって、『電車男』に代表されるネット=卒業すべきモラトリアムという印象(これはTV 対 ネットみたいな図式があったのも後押しになっていると思う)から、幾層もの誤解が重なって、ネットは排除されるべき存在みたいなフレームワークが出来てしまったのではないか。


    これは非ネット層だけでなく当事者(ネット民)にも言える事で。自ら排除された存在という被害者意識を増大させている面があるように見受けられる。

    こういった問題は、先進国には程度の差はあれ、発生していることだと思う。日本人のリテラシー、教養の平均値が高いので顕在化しているのではないか。


    『イージーライダー』のラストシーンで主人公たちを髪が長いという理由だけで撃ち殺すトラック運転手が出てくるけれど、"田舎"というのはそういうもんなんだと思う。

    それがネットの普及によって、顕在化しているのがネット右翼なんでは? とも思った。

  • 保守派とされる著者。

    p91以下のはやぶさ機関騒動をメディアが扱わなかったのは知らなかった。
    p107以下ネット右翼の社会的地位が低い(≒低所得・低学歴・恋愛経験に乏しいなど)が異なりむしろ学歴が高いという調査結果は重要だ。
    p130、7割近い方が自分自身をネトウヨだと思わないという。p137「既成の大手マスメディアや紙媒体なども上手に利用しながら、やや軸足をネットにうつして知的好奇心を満たす…バランス感覚の良さがこの設問の結果から明らかになっている」p145以下、保守派は在特会と自分は違うという感覚を持ちつつも、共有できる価値観があるという方も。

    p175「ネット右翼と括られることになる人々の発生が、平成14年(2002)のサッカーW杯のころから目立ってきた現象」。スポーツは正負の影響が絶大だ。

    なぜ既存の右翼団体(日本会議のような)と合流しなかったのか。p195「ネット右翼のもつ思想的中心たる嫌韓を、既存の右派・保守団体ですら代弁することがなかった」。その理由はp204「冷戦時代における日本の韓国観は、保守側が一貫して融和的で、左翼・リベラル側が一方的に韓国に対して辛辣であった」。

    ネット右翼の実態は、社会的地位の低い人がインターネットに逃避し、社会に逆恨みしているというのではなく、複数のメディアを利用している情報感度の高い層が常識的な感覚でいきついた先ではないか。慰安婦問題などで、韓国はあんなにひどいことしているのになんだ、という反発もわかる。勢いに乏しい左翼は、在特会を批判しても、多数の「ネット右翼」には響かない。常識的な感覚をもって、自分たちの言説を通すためのごまかしをやめることが、ネット右翼から過激なレイシズムへの変質を緩和することになるのではないか。

  • ネット右翼登場の背景分析は面白い。でも、ネット住民への思い込みが強すぎない?

  • 麻生太郎はネット上で大人気だった。
    ネトウヨと呼ばれる人たちって、まともな人が多いと思う。
    ネトウヨでなくても韓国嫌いな人、民主党が嫌いな人はたくさんいる。そもそもネトウヨというのがよくわからない。この本読んでも、よく理解できなかった。

  • 【感想】
     前半の、ネトウヨの実情に関する考察は秀逸。「ネトウヨ」がアキバ系低収入とは限らない、ということなど、調べればわかるはずのことが、あまり知られていない現状を知ることができた。ただ、終わりの部分の座談会では、他民族に対する配慮について若干欠けているように感じられた。
     ほか、校正漏れだろうか、語法の間違いや誤字も二ヶ所程度気づいた。前半がなかなか面白い視点だけに何とも残念であった。

  • 著者の問題意識ってどこにあるのかわからない。
    「在特会」問題で世論を沸騰させた「ネット右翼」を排外主義とレッテル貼りするまえに、いまやごくふつうの日本人でさえ抱くようになってしまった「嫌韓」感情の背景こそ、直視しなければならない。っていうけど内容は、俺らは保守であってネトウヨじゃねーからな。っていう、保守の名誉回復に費やされている。たいした分析もなくそれだけのために一冊の本を書き上げてしまうんだからすごい。
    ネトウヨだけではなく、ヘイトスピーチも根底にあるのは同じだと思う。
    社会がまわっていない状態で、不安や鬱屈を抱えた人たちが攻撃的な排外主義にコミットする。これは日本だけではなく先進国共通の問題だ。
    将来不安による承認欲求を抱えた人間を大量生産する構造は社会的問題で看過することは勿論できない。しかし一方で、ネトウヨやヘイトスピーチャーらの議論は一見公共的であるように見えるけど、動機は極めて個人的なものなんじゃないのっていう。
    なので韓国嫌いだから云々、とか正直お下劣で卑しすぎる。
    熟議を提唱する政治学者、ジェームズ・S・フィッシュキンや「第二階の卓越主義」を主張する法学者、キャス・サンスティーンなど
    の名前を最近よく聞くけど、要はまわりがしっかりしてればそこいらの極端な意見など聞くに値しないよ、と断じることができるんではないかね。4点。

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著者プロフィール

古谷経衡
1982年札幌市生まれ。作家・評論家。立命館大学文学部史学科(日本史)卒業。(社)令和政治社会問題研究所所長。(社)日本ペンクラブ正会員。NPO法人江東映像文化振興事業団理事長。インターネットとネット保守、若者論、社会、政治、サブカルチャーなど幅広いテーマで執筆評論活動を行う一方、TOKYO FMやRKBラジオで番組コメンテイターも担当。『左翼も右翼もウソばかり』『日本を蝕む「極論」の正体』(ともに新潮新書)、『毒親と絶縁する』(集英社新書)、 『敗軍の名将』(幻冬舎新書)など著書多数。

「2023年 『シニア右翼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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