酔いがさめたら、うちに帰ろう。

著者 :
  • スターツ出版
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本棚登録 : 324
感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883810475

感想・レビュー・書評

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  • サイバラと月乃光司の『おサケについてのまじめな話』に続き、カモちゃんの本を借りてきて読んでみる。

    サイバラが書いていた、アルコール依存症のきつさ、「本人の心根や性格には関係なく、こんなに悪質なことができるのかっていうようなことをする」というのを思い浮かべながら、いわばそれを本人の側から書いたのがこの本なのだと思って読んでいた。カモちゃんは、こんな風にして、アルコール依存症から脱けようとしたのだと思って読んでいた。

    本の最後にきたら「この物語はフィクションです」とあって、えっ?と思うと、図書館のラベルも913、小説だった。

    ▼手はぶるぶると震えているが、一杯、二杯とカップ酒を一気にあおると、指の震えも"ピタリ"と止まる。
     それが毎朝、一番最初にする行為だった。
    「よーし、これで仕事もできるぞ」
     机に向かうと、二十分もしないうちにお尻がむずむずしてくる。
     居ても立ってもいられなくなり、コンビニへ向かう。
     ウォッカの小びんを三本、三百五十CCの缶ビールを五本、まとめ買いする。
     ウォッカをコップになみなみと注ぎ、麦酒のプルトップを"プシュッ"と開ける。
     ウオッカをぐびりと飲りながら、チェイサー代わりに麦酒。
     つまみは何もいらない。
     机の上にある時計をみると、午前十時半。もう一日が終わりである。
     こういう日々がどれくらい続いているのか、頭の芯が二十四時間、ずーっとほんわか温まったままなので、いつからこの朝酒が始まったのか、思い出せない。(p.8)

    こんな風にして飲むのか、飲んでしまうのか、と思う。
    依存症、というのは、こういうことなんやと、思う。
    「やめよう」という気持ちだけでは、とても止まらない。壊れているとしか思えない。

    ▼「それでどうして血を吐くまで飲んだの」
     「さびしくて、かなしくて」(p.81)

    退院までこぎつけた同病者の、引受人としてやってくる家族を見ながら、「僕」は思う。夫や妻、恋人や子どもがアルコール中毒という病気だと受け止めようと努力する家族、どう対処していけばよいのか悩みつつ、共倒れにならぬよう気をつけながら、本人の病気を受け止めようとする家族、そこには"愛"で乗りこえようとする姿が感じられて仕方がないと、「僕」は思う。

    ▼この病気、はたしてその次元で治る病なのだろうか。何度も心とは裏腹にスリップをくり返し、その度にどんどん周囲の人々を裏切り、一番大切な家族まで、さんざん傷つけてきた自分の体験から考えても、愛がどこまで通ずるのか、半信半疑であるし、治していくための正解というのは、はたしてあるのだろうか。
     正解がなくてもよい。近道すら見えない。
     全く考えもつかないのだった。(p.170)

    「この病気は、つまりは家族が割に合わない病気」だと、サイバラは書いていた。
    いっそ、放り出して捨ててしまうほうが、らくなのかもしれない。
    依存症という病気を、「病気やねんから」と腹に落ちて納得できるか?というと、この物語を読んでいて、それはやっぱりできへんかもしれへんと思う。私はたぶんアタマで必死で受け止めようとして、でも腹には落ちるまでは、やっぱりきついやろうなと思った。

    (8/16了)

  • 奥さんのエッセーを読んで、旦那さんの本も読みたくなって手に取りました。でも、他の本から読み始めた方がよりいいかもしれないと思います。こんな葛藤を抱えた人なんだ、と思ったと同時に、西原理恵子さんが本当に「かっこいい」女性だということがよくわかりました。大枠で物事を見ているような。人がついついやってしまいがちな失敗も、普通は遭遇しないような体験も、ちょっと多めに重ねているかもしれないけど、お二人とも、その分多くの人や世界の一面を眺めてきた人なのだと、感じました。

  • ほどほどにしようと反省した。

  • アルコール中毒に溺れるという重たい内容ですが、全体的に読みやすくまとまっていたと思います。共感しがたい分、反面教師にして学んだ部分も多かったです。

  • 人気漫画家、西原理恵子の元夫である著者のアルコール依存症闘病記。
    アル中は大変過酷な病気なのはわかったが、なぜか辛いとか苦しいといった印象はほとんどなく、楽しく読めた。
    文章から悲惨な匂いがしてこないのは、妻や子供たちを決して見捨てたりしていなくて、心から大切に思っているからだろうと思う。
    彼はアル中なのに決して不幸ではなかったのだろう。

  • 図書館でタイトルに惹かれて借りてきました。

    何故か珍しくお酒を飲みながら読んでしまいました。(笑)

    締めはだいたい予想がついてしまいましたのと、無理矢理終わらせた感じで、尻切れトンボぽかったので採点は厳しめです。

    読み終った後に作者のプロフィールを見ましたが、漫画家の西原さんの元旦那さんだったんですね。

  • とても誠実で優しいかもちゃん。

    だからお酒に逃げたくなったのかなぁ?

  • 西原さんの毎日かあさんが好きで、鴨ちゃん視点の話も読んでみたい、と手に取りました。でも。面白い場面でも淡々としてどこか悲しい。心がまっすぐすぎて生きるのが苦しかったのかな・・。体験告白と最後のページを読んでこの本は鴨志田さんの生きた証なんだと思いました。

  • 良く考えてみると、元妻が西原理恵子であることを書いていないのだね。アル中たちの生態は面白すぎで、脚色が入っているのではないかと思わせる(入院した病院は決してきれいではないはず)。抗酒剤を飲んで酒を飲むとすごく危ないことがわかる。最近、出したがらないことが多いわけだ。
    残念ながら、尻切れトンボ気味。この後また別の病気(癌)と闘病するくだりは、映画化を見ないとわからないわけか。

  • アル中人生を赤裸々に楽しげに書いている。
    本人著者だから、酔っぱらっての悪行は覚えてないゆえに書いてないのかもしれないが、母親や元奥さんの西原さんの呆れてはいるけれど見放してない感じと入院中の態度からして悪い人じゃなさそう。

    ただ、文章がイマイチなのは、アル中のせいなのか
    腕前のせいなのか分かりかねる。
    それでも、文章にすることで客観視できて、気持ちの整理には
    なったんじゃないかな。

    「辛い時、しんどい時に呑み過ぎるのは、それが増すだけ
     けど、ほどほどのお酒くらい慰めになるものはない。」
                  by『想い雲―みをつくし料理帖』

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