殺人の追憶

  • ケイツー
3.79
  • (3)
  • (5)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 40
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901006644

作品紹介・あらすじ

犯人はいまもどこかで生きている-。1986年、韓国全土を震撼させた未解決連続殺人事件、衝撃の映画化。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1986年に韓国で実際にあった未解決連続殺人事件を映画化した韓国映画「殺人の追憶」のシナリオをもとに書き下ろされた作品。

    舞台は首都ソウルから列車で南へ一時間半、急速に工場が建ち並び始めたばかりでまだまだ街頭すらない静かな農村の台領村(テリヨン)。

    最初の被害者は25歳の未婚の美人女性で、殺害され、全裸で見つかる。

    朴斗万(パク・トゥマン)刑事を中心に地元警察による犯人逮捕に向けた捜査が始まる。

    田舎で起こった猟奇殺人、犯人は簡単に捕まえられると思っていた。

    本作は事件を追う警察側の視点と犯人側の視点が交互に描かれながら進んでいく。

    犯人はザリガニを大量に殺したり、赤いザリガニを青色に変色させようと飼育をするシーンが中心に描かれ、赤色が一つの重要な要素となっている。

    そして次々と見つかる被害者は同じように全裸で見つかり、同一犯による連続殺人事件へと繋がっていく。

    対策班が設置され、ソウルから自ら志願して徐泰潤(ソ・テユン)刑事も捜査に加わる。

    徐刑事がなぜ台領村で起こった連続殺人事件に志願してまで加わったのかは、彼の過去に隠された昔の恋人がレイプされ、妊娠し、その犯人と結婚したという苦い記憶によるもの。

    2人の刑事が犯人逮捕に向けて奔走する中、それをあざ笑うかのように次々に被害女性の数は増えていく。

    執念の捜査によってようやく犯人と思しき容疑者を特定し、拘束。

    事件は解決へと結ばれていかないことで、読み手を一層本作の世界に引き込むが、これが約34年前の事実。

    苦労してたどり着いた容疑者、拘束し尋問を重ねるも、証拠不十分にて解放されてしまう。

    その後も続く犯人逮捕に向けた捜査と猟奇殺人。

    そして明かされる犯人が人から殺人鬼へと生まれ変わった過去の経緯。

    本作のラストはハッピーエンドで結ばれない。

    そして語られる本当の第一被害者と犯人の関係。

    それはまさに「殺人者の追憶」。

    400Pを超える作品でしたが、読み始めるとページをめくる手が止まりませんでした。




    説明
    内容(「BOOK」データベースより)
    犯人はいまもどこかで生きている―。1986年、韓国全土を震撼させた未解決連続殺人事件、衝撃の映画化。
    内容(「MARC」データベースより)
    あれは何歳だったのだろう。六歳。あるいは十一歳。赤い悪魔が俺を食べてしまったのは、あの午後だ-。1986年、韓国全土を震撼させた未解決連続殺人事件。韓国映画「殺人の追憶」のシナリオをもとに小説化。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    薄井/ゆうじ
    1949年、茨城県生まれ。イラストレーター、広告プロダクション経営を経て、作家に。1988年『残像少年』で第51回小説現代新人賞受賞。1994年『樹の上の草魚』で第15回吉川英治文学新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • まず先に映画を観た。映画のラストは名優ソン・ガンホのアップで終わる。なんとも印象深い表情で何か読み取れそうで読めない、観終わったところからまたストーリーが始まる様だった。この小説は史実の未解決事件を元にした映画のシナリオからのノベライズになる。映画がとても面白く、また恥ずかしながら知らない作家だったため余り期待せずに読み始めたが、ぐいぐい引き込まれて一気読みしてしまった。特に田舎の狭く閉鎖的な、のしかかって来そうな分厚い雲の様な暗さの描写が秀逸。読んでいるこちらの心まで湿って重たくなった。映画に劣ることなく二人の刑事の心情交差も見事で、更に映画では知ることの出来ない犯人の心理も判ることで事件の不気味さ陰惨さが増す。ザリガニの憐れさが無力な女性の被害者たちと重なって、これが映画なら目をつぶってやり過ごしてしまったかも知れない。どちらも犯人の手によって余りにも無残で痛々しく、理不尽に生をねじ曲げられてしまう。読んでいる間、私の顔はずっと顰められていた。
    このノベライズは映画とはラストが異なり、主人公の朴斗万以外のその後は判らなかったが、小説では徐泰潤も登場する。そして、犯人も。
    映画に比べて僅かでも光明を見出せそうなラストに満足。

  • 実話を題材とした未解決連続殺人事件の作品。2003年に映画を観ていました。映画を観終わり気がつくと、手に力が入り過ぎ、掌に爪痕が残っているのを思い出しました。いま原作を読んで、あの時観た映画の気持ちが蘇り、ゾワッと鳥肌が立ちました。2人の刑事がやっきになって犯人捜しをしている場面の面白さ、2人の刑事のその後がジーンときます。犯人逮捕にあと少し!もう一歩!・・・。ラストは奥歯がギリギリと軋むくらいの悔しい思い。でも、これが現実なのです。

    ええと。何年経っても素晴らしい作品は素晴らしい、と改めて実感しましたねぇ。

  •  実際に韓国で発生した猟奇殺人事件をモチーフにした映画「殺人の追憶」のシナリオを元に薄井ゆうじ氏が小説として書き起こした作品。

     韓国の地方都市で強姦殺人事件が発生した。現地の刑事・朴斗万は、刑事の勘で容疑者を見付けては拷問のような取り調べで事件の解決を目指す。
     一方、ソウルからこの事件に寄せ付けられるように異動を希望してきた刑事・徐泰潤はそんな時代遅れの刑事たちを軽蔑しながら科学的な捜査で犯人を追い詰めようと奮闘していく。
     二人の刑事と、尻尾をつかませない猟期殺人犯。二人が持つトラウマが、二人を徐々に変えていく……

     映画未見、モデルになった事件も全く知らずに小説を読みました。
     「超訳」……この言葉嫌いなんですけどね……ということもあって、海外作品にありがちな取っつきにくさもなく、薄井ゆうじさんらしい風景描写にとんだ読み込みやすい小説になっているとは思うのですが、いかんせんミステリとしても刑事ドラマとしてもちょっと古くさくおもしろみに欠けるように感じました。
     犯人との駆け引きがツボに入らず、二人の刑事が変わっていく様も唐突で気配が少なく、「おぉ!」と思えるポイントの少ない作品でした。

  • 首都ソウルから列車で南へ一時間半。京畿道華城郡台領村。
    見渡す限り青々とした田園風景が広がり、しかし、最近ではあらゆる種類の工場が立ち並び、そこで働く工員たちの住む住宅が増え、工業地帯へと変貌しつつある小さな農村で、女性ばかりを狙った殺人事件がおきる。
    地元の警察署に勤務する朴刑事は片っ端から村の男たちを取り調べ、ソウルから来た徐刑事は徹底的に過去の被害者と事件の資料を分析、犯人のプロファイルを試みるが、その捜査の最中にも犯人は跋扈し、事件は起き、女性たちが死体で発見される。

    完全な暗闇に閉ざされた雨の夜に失踪する、都会からやってきた女工、歌手を夢見ていた村の娘、結婚式を挙げたばかりの新妻、高校生、中学生……。
    赤い下着。赤い傘。赤いセーター。赤い口紅。そして、赤いザリガニ。

    雨が降り出す。夕方、ラジオからは『憂鬱な手紙』が流れる。
    また今夜、誰かが殺される。
    暗い水の底から、赤いザリガニが這い上がってくる……。

    オリンピックを間近に控えた1986年、韓国全土を震撼させた未解決連続殺人事件をもとにした韓国映画「殺人の追憶」のシナリオをもとに小説化。
    シナリオをもとにしたノベライズ本というと、小説としてはどうなの……という作品が多い中、これは良訳だと思います。

  • 韓国での連続殺人(これは実話らしいね)を扱ったミステリ……というかサスペンス。犯人の意外性なんかはほとんどないのだけれど、次々連続する事件や二転三転する容疑者候補といったものが飽きさせないつくり。さくさくっと読みやすい一作。
    ただし。犯人もさながら、腹が立つのは主人公?の刑事連中。おいおい、そんな捜査していいのかよっ! その取調べは違法じゃないか? うわあ、証拠捏造するなよ~などとツッコミまくり。このあたりはやはりお国柄の違いかなあ、とも思うのだけれど、これじゃあどっちが犯罪者だかわからない(笑)。韓国って怖いわ。

  • 未読

  • 実話が元ネタです。映画も素晴らしかったですね、韓国を見直しました。

全8件中 1 - 8件を表示

薄井ゆうじの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×