首都ソウルから列車で南へ一時間半。京畿道華城郡台領村。
見渡す限り青々とした田園風景が広がり、しかし、最近ではあらゆる種類の工場が立ち並び、そこで働く工員たちの住む住宅が増え、工業地帯へと変貌しつつある小さな農村で、女性ばかりを狙った殺人事件がおきる。
地元の警察署に勤務する朴刑事は片っ端から村の男たちを取り調べ、ソウルから来た徐刑事は徹底的に過去の被害者と事件の資料を分析、犯人のプロファイルを試みるが、その捜査の最中にも犯人は跋扈し、事件は起き、女性たちが死体で発見される。
完全な暗闇に閉ざされた雨の夜に失踪する、都会からやってきた女工、歌手を夢見ていた村の娘、結婚式を挙げたばかりの新妻、高校生、中学生……。
赤い下着。赤い傘。赤いセーター。赤い口紅。そして、赤いザリガニ。
雨が降り出す。夕方、ラジオからは『憂鬱な手紙』が流れる。
また今夜、誰かが殺される。
暗い水の底から、赤いザリガニが這い上がってくる……。
オリンピックを間近に控えた1986年、韓国全土を震撼させた未解決連続殺人事件をもとにした韓国映画「殺人の追憶」のシナリオをもとに小説化。
シナリオをもとにしたノベライズ本というと、小説としてはどうなの……という作品が多い中、これは良訳だと思います。
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外国の作家:B
- 感想投稿日 : 2010年6月11日
- 本棚登録日 : 2010年6月11日
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