スマートグリッド (電気新聞ブックス エネルギー新書)

著者 :
  • 日本電気協会新聞部
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784902553871

作品紹介・あらすじ

世界で話題沸騰中!スマグリ徹底解説、未来の姿が見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 250ページの薄い新書本だが、中身は濃い。震災後、急に存在感が高まってきたスマートグリッドの全貌を掴むことができた。震災による津波の被害により、原子力発電所が何基も使えなくなり、さらに新たな建設にもブレーキがかかっている。これに対して、太陽光発電を大規模に増設すればエネルギー不足を補えるので問題ない、といった安易な意見が横行している(ように思う)。私自身、問題はエネルギーの不足にあり、コストはかかるにせよ太陽光発電を大量導入すれば問題解決可能だと思っていたのだが、この本を読んで認識を改めさせられた。電気の問題点は貯めることが難しい、ということだ。したがって、基本的にジャストインタイムで必要な時に必要な量を発電しなければならない。従来は一日の需要変動を考慮しつつ、20分程度先の必要電力量を予測ながら、火力発電、水力発電、原子力発電、揚水発電などの発電方式を組み合わせて、ジャストインタイムで電気を供給することができていたという。しかし、ここに太陽光発電や風力発電などの「再生可能エネルギー」が加わると厄介なことになる。これらは、天気などによって電力がランダムに変化するため、これが十分に調整されずに、電力系統に流れ込んでくると、電源の周波数が変動して機器が故障したり火花により火事の原因になったりする。さらに、GW時の昼間など余剰電力が生じた場合、これをうまく消費することができないと、周波数が上昇するため、安全装置が作動して設備が切り離されるため大規模停電の原因になったりする。何年か前に、起こった欧州の大停電は風力発電の電力系統が絡んで、この設備の切り離しが原因で起こったということだ。以上のように、太陽光発電を導入する際の問題は、このような不安定な再生可能エネルギーを従来の電力系統に連係させていくことの困難性にあるということをこの本を読んで知った次第である。スマートグリッドは、このような「再生可能エネルギー」を本格的な電源として利用するために研究されている新たな電力系統である。この本では、日本だけではなく、米国、欧州の取り組みについても詳しく説明されている。この本により、大まかな全貌を掴むことができたので、今後はもう少し詳しい専門書にあたっていきたいと思う。

  • かなり基本的なところから書いてあって、入門書としては最適。読み進めていくと、問題点・注意点をただ羅列している箇所などが出てきて悪い意味で学者っぽい印象もあるけれど、巻末の日本IBMの事業開発部長との対談が興味深くて、その印象も払拭されている。
    残念なのは、本書の中で引用している図表が小さすぎること。せっかくいい図表が引用されているのに、見づらいことこの上ない。

  • 他にスマートグリッドについて解説している本が意外に少なく、貴重な本だと思う。内容も文系素人にも理解できる内容だった。(新版が出版されているため、こちらは絶版のようだがKindle版で買える)

    電気をためる(蓄電)は技術的に難しい。電気の消費量に発電量を一致させなければ周波数が変わってしまい、電化製品や機械が壊れやすくなる。そのため、周波数が大きく変動するとその発電所は系統から切り離される。すると停電が起きる…
    グリーンエネルギーは発電量を調整できないため、大量に導入されると調整し切れない。(グリーンエネルギーが発電していても需要が少ない場合、火力発電を弱めるが、オフにしても足りないことがある)そのため、導入が進まない。
    これを解決するのがスマートグリッド。

  • Fri, 10 Dec 2010

    いいとおもいます.
    最近の事情が,ホントよくまとまっているとおもいます.

    2009年から2010年にかけて,
    スマートグリッドの事情は大分変わった.
    特に,各国におけるスマートグリッドの解釈はほぼ決まっただろう.
    それが,日本にとっていいことかどうかは疑問だが・・・.

    電力インフラ事情は,国によって大きく異なる.
    その上で,各国の研究者に求められる研究も変わってくる.

    インフラ分野ならではのことだが,その意味でも,
    研究現場の人間でも,一冊持っておくと便利かも.
    でも,一年たてば古びる情報かも知れないが

  • 国際標準化されていないと日本で使用されている製品が海外で使えない。
    スマグリが注目されるようになった理由はオバマ大統領のエネルギー政策から

  • スマートグリッドの説明や海外の動向などがまとまっていた。
    しかし、震災前ということもあり、現在とは少々ずれているかもしれない。
    また入門書としてはよいが、詳しい部分はあまり記載されていなかった。

  • スマートグリッド全般について、一般の人にも理解できるようわかりやすく解説してある。日米欧でのスマートグリッドに対する取り組みの違いが明確に書かれている。

    ・欧州
    国境を越えた広範囲の電力系統を持つ。風力発電を設置している国から、様々な向きの電流が流れ込んでくるため、スマートグリッドによる管理が必要になる。
    送電が焦点になるため、スマートメーターよりも、風力発電対策としていかに多くの送電線を作るか、貯蔵設備である揚水発電や圧縮空気貯蔵設備を作るかが重要。

    ・米国
    更なる電力需要の増加が見込まれるため、対策を要する。
    送電線の増設には多額の費用がかかるため、スマートグリッドを利用したピークカット、ピークシフトが焦点。

    ・日本
    再生可能エネルギーの大量導入。
    PPS、IPPの参入を容易に。

  • 流行のスマートグリッド概論。
    スマートグリッドって名前だけ聞くといい感じに聞こえるが、中身は多岐にわたってて、むしろ泥臭いイメージ。
    よくまとまっていると思うけど、それだけに地味。

  • スマートグリッド

    2009年頃から一般的に知られるようになってきたスマートグリッドに関する本

    著者は東京大学の新領域創成科学研究科教授
    電力システム工学を専攻しており、スマートグリッドの研究には2003年から携わっている。
    2011年の原発事故以降によく耳にするようになったスマートグリッドについて興味を持ち購入した本

    全186P
    1章:スマートグリッドブーム 26P
    2章:スマートグリッドを定義する 52P
    3章:欧州の取り組み 22P
    4章:アメリカの取り組み 28P
    5章:日本版スマートグリッドをとは 34P
    6章:中国、韓国の取り組み 8P
    7章:スマートグリッドの将来像と実現への課題 16P

    スマートグリッド実現のための課題とは
    「再生可能エネルギーを、いかに安定的に、経済的に導入するか」
    である。
    2030年には世界における再生可能エネが発電量に占める割合を、
    風力(4.5%:1.5超kw)、太陽光(1.0%:2500億kw)になると試算している。

    各地方におけるスマートグリッド導入時の課題は以下の通り
    日本
    課題:温暖化、電力不足(?)
    原因:原子力依存
    対策:自然エネルギー発電所の新設

    欧州
    課題:風力発電増加による電力供給の不安定化
    原因:各国システムの不連携
    対策:スマートメータ導入(?)

    米国
    課題:電力自由化による電力供給の不安定化
    原因:自由化による設備投資額減少
    対策:スマートグリッド技術による各電力会社の連携

    中国、韓国
    課題:電力供給の不安定化
    原因:設備インフラ投資不足
    対策:1、送電線の設置、2、スマート変電所の設置、3、電力供給の最適化


    今目前の課題として、スマートメータを各家庭に導入したあと、
    「日々集まるデータを用いてどんなことをするのか?」
    が課題となると言われている。
    この点に至っては、今家電メーカの課題となっている
    「単品売りでなく、家電をシステムとして提供するにはどうすればいいか?」
    という話を似ている要素があるなと感じた。

  •  題名で購入。

     やや電気事業者側の視点かなと推測されるのと、今回の東日本大震災の前に書かれたことは注意すべき。

     その上で、スマートグリッドの構想が、ドイツでは風力発電の発電量の急激な増加に耐えられずに停電したことが背景にあること、アメリカでは、むしろ大規模発電所や送電網の拡充ができなことから代わりにピークカットの手法として検討されていること、など各国の事情が異なることがわかった。

     その上で、個人的には、行政、経済中枢機能の防災バックアップのための分散型発電という観点からスマートグリッドが検討できないかと思う。

    ①首都直下、3連動が起こったときには、東京、名古屋、大阪などの行政中枢や経済中枢が停電などによって麻痺する可能性があると思う。

    ②このため、非常電源をビルなどで用意しているが、非常に原油蓄積量も少なく、また、非常用電源の発電性能も低いことから、むしろ、中枢機能全体について、太陽光などの再生エネルギーとガスエンジンなどによって最低限の機能を常時確保するシステムをいれておく必要があるのではないか。

    ③そのようなある程度面的で効率的な発電システムが高密度な都市の中枢の分散的に配置されることによって、非常時のバックアップ機能が確保できるとともに、スマートグリッドによって、真夏などの電力需給対応にも貢献するのではないか。

     ある程度、国が中心となって、行政、経済の中枢が地震などの非常事態でも電源が自前で面的に確保され、様々な防災指示が的確にできるようなシステム構築が必要と考える。

     まったくの私見だが、この本を読んでいて、単に住宅に太陽光パネルを単体ではっていくよりも、面的に防災性を加味して、中枢機能地区から分散型エネルギーを導入する方が、より喫緊の課題であるし、国民の税金を入れることの理解も得やすいと思う。

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著者プロフィール

横山 明彦
東京大学名誉教授 工学博士

「2022年 『先端 電力システム工学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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