街場の文体論

著者 :
  • ミシマ社
4.34
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本棚登録 : 1463
感想 : 181
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908366

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、著者の神戸女学院大学での最後の講義「クリエイティブ・ライティング」でお話された内容をまとめたものです。
    教壇で話しながら、著者の脳の中で思考がどのように動いているのかを辿るようなライブ感がありました。
    あとがきで著者は「学生たちに「これだけはわかっておいてほしい」と思うことを、かき口説くようにお話ししました」と書かれています。
    「宛て先」がある言葉だから届くんだ、ということを著者自身が体現されている1冊だと感じました。

    読んでいる間、すぅっと風が通り抜けていくような、頭の中が気持ちよく冴えた感じをずっと味わっていました。
    私には少し難しいと感じる部分もありましたが、その歯ごたえが心地よい緊張感を与えてくれるのです。
    残しておきたい文章を書き出していたらメモがたくさんになってしまいました。
    図書館で借りて読みましたが、手元に置いてたびたびページをめくりたいです。

    外国語学習についても触れられていて、本来外国語とは「自分を外部に押しつけるためではなく、外部を自分のうちに取り込むために学ぶもの」という一文を心に留めておこうと思います。

  • シリーズ最後、最後の大学講義。
    文章作りための講義。大学の講義だと感じさせるところを残している。
    いきなり、粗忽な人の説明を文章にしろという。文章を書くためには、自分の中にいる他者を見つけなければならない。作家として仕事をするには。¥、地下室の下の地下室、手付かずの鉱脈を探し当てる。誰を意識して、何を伝えるのか?万人向けのメッセージは誰にも届かない。
    母⇒赤ちゃんへ、「あなたがいて私はうれしい」鏡像的なメタ・メッセージのやりとり。理解できなくとも届く。
    あなたは、そう問うことでよって何が知りたいのか?自分の判断の根拠を説明できる。学問は、象牙の塔に入ってしまった。再び出る時代である。

    • nico314さん
      だいさん

      わざわざ、ありがとうございます。
      でも、残念ながら開けられないのです。なぜなんだろう?

      >母⇒赤ちゃんへ、「あなたが...
      だいさん

      わざわざ、ありがとうございます。
      でも、残念ながら開けられないのです。なぜなんだろう?

      >母⇒赤ちゃんへ、「あなたがいて私はうれしい」

      こういう根源的な愛情で満たされていない話の本を読んでいたので、だいさんのレビューの捉え方にバイアスがかかってしまいました。

      内田樹さん、気になります!




      2013/11/26
    • だいさん
      nico314さん
      こんにちは
      ミラーニューロン、というようです。
      呼び名を変えて同じ事を言っている人が結構いますよ。

      私の内田...
      nico314さん
      こんにちは
      ミラーニューロン、というようです。
      呼び名を変えて同じ事を言っている人が結構いますよ。

      私の内田さん事始は↓これでした。
      才能の枯渇について (内田樹の研究室)
      検索すると読めますよ。
      2013/11/27
    • nico314さん
      だいさん

      コメントに気をとられて、花丸を忘れていました。とほほ・・・。

      「才能の枯渇」読みました。
      『恩送り』という言葉をどこ...
      だいさん

      コメントに気をとられて、花丸を忘れていました。とほほ・・・。

      「才能の枯渇」読みました。
      『恩送り』という言葉をどこかで聞いて、とても気に入っているのですが、それにも少し似ているようで、いいなあと思いました。

      何かをいただいたら、また違う誰かに返す。
      いつもこういう気持ちを忘れずにいられたら、ゆとりのある毎日を送れそうです。
      2013/11/27
  • ブログや趣味の小説など文章で表現するのが好きで、自分の書き方これでいいのかと小さな疑問を抱いている人なら読んでおくべき一冊。
    著者は原因を丁寧に説明してくれるのだが、著者自身は読者の文章に対して執刀してくれるわけじゃない。
    そういう意味でハウツー本では無いのだけど文章を誰かに読んでもらい、何かを伝えることがいかに難しいことかはこの本で知っておいたほうがいい。

  • 相変わらず内田樹の本はおもしろい。ぐいぐい読んでいける。内田先生の解説をすらすら読んでいる途中に、たまにその解説されている思想家本人の著作の引用が出てくる。すると、びっくりするほどそれを読解できない自分に気づく。こんなむつかしい文章を読みこなすのがたぶん教養なんだな、と思った。
    そんな教養を身につけるため、というかそうせざるを得ないような「身体をがたがた揺さぶられる」経験は私にはあったかなあ、と振り返ってみたりした。

  • 本屋で平積みになってたので購入。
    著者の大学最後の講義録とのこと。
    「書く」ということの本質は「読み手に対する敬意」に帰着する。「情理を尽くして語る」「言語における創造性は読み手に対する懇請の強度の関数」という話が第1講に出てきて、すごく納得した。
    ソシュールとアナグラムの「こびとさん」の話も、思い当たるところありでよくわかる。
    この本はぜひまた読み返したい。

  • 著者が、神戸女学院大学で2010年後期に14回にわたって行った最終講義、「クリエイティブ・ライティング」を一冊の本にまとめたもの。

    本講義の目的は、「みんなに「読み手に対する敬意と愛」を身につけてほしい」ということであり、「生成的な言葉とは何か」を追求することだったようだが、毎回、何をしゃべるか決めずに壇上に上がっていたようで、テーマから離れて結構脱線しまくり。著者もあとがきで、最終講義ということで言いたいことを全部詰め込み「ごった煮」になったと自白している。とは言え、その博識の広さ、理路整然とした言説には、唸らせるものがあるし、講義のラストには読んでいて感動させるものがあった。ライブで聴いてみたかったなあ。

    本講義における著者の結論は、「響く言葉」、「届く言葉」、「身体に触れる言葉」はどういうものか、それは、世の中に反乱している、自分の知識や能力を誇示するために書かれた「語義明瞭で、文法的にも正しく綴られていて、美しい韻律に載せ」た文章(そこには「私は頭がいい。私を尊敬しなさい」というメタ・メッセージしか残らない)ではなく、できるだけ多くの人に届かせたいという気持ち、切迫した思いに駆られてほとばしり出た、「魂から出る言葉」「生身から生まれる言葉」である、という至極当たり前のこと。

    特に、人文系の研究者に対しては、自分の研究を自分と同レベルで理解・評価できる人向けに「内向きの言葉」で成果を発表していて、一般市民に伝える「ブリッジ」ワークを怠っている、と強く批判しているから、このあたりに著者の特に言いたかった「メタ・メッセージ」があったようだ。

    著者は、「説明のうまい作家」として橋本治、三島由紀夫、村上春樹の三人を挙げている。橋本治はちょうど読んでみたいと思っていたところ。三島、村上は苦手なジャンルなのだが、「1Q84」あたりからチャレンジしてみたいと思う。戦後思想をリードした丸山眞男、吉本隆明、江藤淳の著書も手に取ってみたい(特に、吉本は、「戦後日本の思想をこの人抜きには語れないほど重要な仕事をした人」と絶賛されていたので)。

  • ☆4なのは、きっとまだ私には、読み返して見つけるべき発見があるからだと思う。

     わたしはきっと、「育ちのよさ」とかそういうのを余り持たぬ人間なので、「生まれながらに環境が備わっていて身に付いたもの」など、人並みかそれ以下でしかないと思われる。(客観的に計りようがないが、「あぁ、この人は育ちが良い」と判断できる時点でそのように思われます)

     私は絵を見るのが好きだから、それについて調べるのも好きで、
    でも後から努力して身につけたものは、身に着けようと思えば思うほど、既に備わっている人との溝を感じる。


     でもそれは、わたしが努力しなくていいって理由にはならないし、わたしが絵を見ることを好きだ、それについて調べるのも好きだ、ということを否定する理由にもならない。

     私が生きるうえで感じる、何かに対しての「疚しさ」であったり、「屈託」だったりするものはきっと、「既に持っている人」に対する憧れと、何をしても届くことがない圧倒的な力への挫折のような心持ちなのかもしれない。

     ただ、今は、

     自分が歩み続け、楽しむことを忘れなかった「興味」への矜持を、「続けて」、自分が身を投じている教育現場で「繋げて」いくことを、

     するだけだ。

     誰でも等しく「知りたい」という気持ちをこんなふうに諦めずにいられるのは、知識ある人が、より多くの人のために自分の能力を使うことを惜しまなかった、先人の「学びのあり方」ゆえのものと思います。

     私は「知識ある人」にもなれない普通の人間だけれど、先人たちが残してくれた足跡を辿り、途上の山を、高みを目指し上っていくことをしていきたい。

  • 図書館より

     自分も文章を書くのは好きな方なので、内田さんの言葉にいちいちうなずきながら読んでいきました。書くのが好きな人ならここに書かれている言葉は、「ああ、あるある」と思えるんじゃないでしょうか。

     読み終えて今書いている自分のレビューについてはどうなのかなあ、と考えます。この本でも書かれている通り、確かに考えてから書いている、というよりも思ったことをポンポンと書いていったら「ああ、こんなことを考えてたんだなあ」と後で気づくことが多いです。

     反省しなければいけない、と感じたのはレポートの話です。確かに伝えたいことを書いている、というよりかは、書かなければ単位に響くから、という理由で書いていたかも……。これからは単位のためだけでなく、「このことを伝えたいんだ!」という意思を持って書いてみようと思いました。単純だけど結局それが文章を書くうえで一番大事だと思います。

  • 内田さんの本は相変わらず面白い。内田さんの本が面白いと思える点は、フランス現代思想や教育論、映画や文学いろんな世界を「一つなぎ」にして読者に話を伝えるのが人一倍うまいからではないだろうか。

  • 記号論とか、ソシュールとか。改めて勉強したくなった。

著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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