全訳 男色大鑑〈歌舞伎若衆編〉

  • 文学通信
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909658043

作品紹介・あらすじ

西鶴がオレ様全開で描き尽くした歌舞伎若衆図鑑、遂にわかりやすい現代語で登場。
若衆(江戸のジャ○ーズJr.!?)に熱を入れすぎで、遂に西鶴本人も登場し、なんと脱ぎます(実話)。

本書の舞台は歌舞伎が演劇として確立する直前の激動の時代。
歌舞伎劇場は今とは全く違う、まさに小屋。
今でいえば、50人くらいが入る場末のストリップ小屋に200人くらいが雪崩れ込むような場所。
「いっそのこと殺してくれ」と、歌舞伎若衆の美しい目元に心射ぬかれた見物客たちが満ちて、
美しさに酔い痴れた観客が叫ぶような場所。

西鶴はそんな凄艶な世界を愛しすぎるゆえに
「この道すきものの我なれば」(歌舞伎に関してはほかの誰よりも通じている私なので)と、
遂に自ら作品中にさえ顔を出す始末。
この躍動感にあふれる世界で、西鶴が描き出したものは何か。
役者のファンブックの自主制作してしまう人や、敏腕プロデューサー等も登場、
現代の文化とも通じる、熱狂する心と、それを取り巻く人々を鮮やかに描写しています。
さまざまな愛の形をお楽しみ下さい!
前作『全訳 男色大鑑〈武士編〉』よりさらにパワーアップしてお届けします。

豪華漫画家陣[あんどうれい、大竹直子、九州男児、こふで、紗久楽さわ]によるイラストを掲載。また「あなたの心が今、求めているのはどの若衆?」と題したYES・NOクイズでは好きな歌舞伎若衆を選べたり、「若衆10人のキャラ分析グラフ」で、純真無垢・手練れ・甘口・辛口で若衆のタイプがわかったりと、これまでと違った古典の読み方を提案しています。
加えてちゃんと勉強できるよう、注を充実させたほか、歌舞伎研究の大家によるコラム、楽しく読むための資料集も充実させました。

古典文学は、ここから学ぶと絶対楽しい! 推しの尊みがすぎる!

豪華漫画家陣の挿絵付きで、現代語訳は、若手中心の気鋭の研究者、佐藤智子、杉本紀子、染谷智幸、畑中千晶、濱口順一、浜田泰彦、早川由美、松村美奈。コラムに河合眞澄(大阪府立大学名誉教授)という最強布陣でお届けします。

感想・レビュー・書評

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  •  若衆歌舞伎役者の世界を中心に逸話を集めた、井原西鶴の『男色大鑑(なんしょくおおかがみ)』。
     タイトルから引く向きもあろうが、本作は所謂「こういうカップルや人気の美少年がおりまして、かくかくの所以があった、逸話があった」という逸話集である。
     短編かれこれ40篇ほどなので、一話ずつ読むもよし。各話の冒頭に、あらすじ解説があるので、西鶴翁のノリが分からない現代の初見読者にも、とっつきやすい優しい設計。
     ただし、恋のもどかしさや胸を焦がすようなドキドキ、性愛描写を期待する向きは、現代のBL小説をお読みになるほうがよい。

    つまり『そういうの』は載ってないのである。

     もう一方の《武士編》は武家社会の話中心なので、必定『契り』の大切さ、それに準じる意気地といったものが前面に出てくる。
     本作は逆に、町民の世界。若衆/若女形にスポットがあたっているせいか、単なるカップル逸話集ではなく、役者の生きざま、衆道とはどうあるべきか、といった話もある。
     現代人になじみのない風俗、髪型や道具などが図解入りでわかりやすいので、若衆遊びとはこのようなものであったのか、ふむふむ……と引き込まれてしまうであろう。
     古典として読む井原西鶴、というより現代語に訳しなおされた井原西鶴で知る、男色の逸話集、ととらえたほうが良い。そういう意味では、文句なしの星5つである。

     西鶴翁自身がしれっと作中に登場しているのも、茶目っ気があるというか。今の世の腐女子諸姉におかれてはむしろ、夢要素がこの時代から、と微笑まれるのではないだろうか。
     こちらが気に入った方は、巻末に本邦の男色歴史解説も載っている、《武士編》も併せて読まれたい。

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著者プロフィール

茨城キリスト教大学文学部教授(日本近世文学、日韓比較文学・文化)
著書に『冒険・淫風・怪異―東アジア古典小説の世界』(笠間書院、2012年)、『西鶴小説論』(翰林書房、2005年)、『はじめに交流ありき』(編著、東アジア文化講座第1巻、文学通信、2021年)、『全訳 男色大鑑・武士編/歌舞伎若衆編』(編著、文学通信、2018・2019年)、『韓国の古典小説』(共編、ぺりかん社、2008年)、『日本近世文学と朝鮮』(共編、勉誠出版、2013年)、論文に「日朝文士の齟齬はいかに起こり得たか」(『文学』岩波書店、2015年)、「十六・七世紀の東アジア海域と男色ネットワーク」(『文学』岩波書店、2012年)など。

「2023年 『東アジアの都市とジェンダー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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