イスラム飲酒紀行 (SPA!BOOKS) [Kindle]

著者 :
  • 扶桑社
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感想・レビュー・書評

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  • イスラム圏では飲酒がタブーときいて、そういえばそんなこときいたことあるかもと思う程度の無知で、飲酒もしないわたしだが、すごくおもしろく読んだ。さすがやっぱり高野本。語り口がおもしろいからぐんぐん読める。酒好きの高野さんが酒が飲めないとなるととたんに不機嫌になったり、イライラしたりする心理描写がおもしろかった。もし甘いものがタブーの国とかあって行ったらわたしもそうなるんだろうなとか想像して共感したり。

    イスラムでは表だっては酒はないことになっていて、だれにきいても「ない」と答えるのに、必ずどこかにはあって、飲む場所もあって飲んでいる人がいる。高野さんが勘をはたらかせていろいろな人に尋ねたりしてさがしあてるところがミステリのようでスリリングだった。見つかったら逮捕されるわけだし、怪しい人に怪しげな場所に連れていかれて大丈夫なのかとか心配したり。

    一章が短く感じて、もっと長くてもよかったな。
    あと、電子書籍は写真が見にくい。カラー写真だったらしいけどわたしはキンドルペーパーホワイトなので当然モノクロで。それで価格が安かったのか。これは紙の本で買ったほうがよかったかも。

  • 「おおっぴらにはお酒が飲めない国に行って地元の人とお酒を飲む」ということのために相当頑張った記録。
    ばかばかしくてとても良い。
    初めて電子書籍を購入してみたが、美しい写真がモノクロでしか見られず残念。やっぱり初めて読むときは紙の本が良いですな。

  • こんなのタイトルからして面白いに決まっている。

    短編エッセイの詰め合わせで肩の力を抜いて読めるので、高野さん初心者にもおすすめ。
    逆に高野さんの本を読み込んでる人には物足りないかもしれないが、気楽に楽しく読めるというのが本書の良いところかと。

    強いていうならば酒が好きだとなお楽しめます。
    ビールでも片手にどうぞ。

  • ミャンマー北部でアヘン栽培をする集落に住み、実際にアヘンを栽培したルポ『アヘン王国潜入記』で高野秀行を知った。『アヘン王国潜入記』は全てがべらぼうに面白いのだが、戦後生まれの日本人が書いた文章で、これほどアヘン中毒になる様を生々しく書いた書籍はないだろう。

    さて、その高野氏だが、当然日本に戻ってからは違法薬物であるアヘンを吸うことはできない。その代わりに頼るようになったのがアルコールである。

    しかし、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」ライターである高野氏はイスラーム圏にも行くことが多い。そこで困るのが酒の調達だ。

    イスラームではアルコールは禁じられている。しかし、イスラーム社会は本音と建前の社会でもあり、意外と簡単に酒が手に入るという。その顛末を描いたのが本書だ。

    特に面白いのは、イランではスーフィーが異端とされた結果、一部のスーフィーは「俺達はムスリムではない」と飲酒をするようになったという部分だ。イランという厳格なイスラーム国家の内側でしか見ることのできない光景だ。

    しかし、高野氏は「簡単に」酒が手に入ったと言っていたが、それは高野氏のフットワークの軽さによるものだろう。普通の一般人には真似できそうにないので、大人しくイスラーム圏では酒を我慢したほうがよさそうだ。

  • 高野秀行『イスラム飲酒紀行』読了。
    『幻獣ムベンベを追え』や『アジア新聞屋台村』でおなじみ辺境冒険作家が放つ本作は飲酒が禁止されているイスラム圏で酒を求めてアフリカ、中東、東南アジアの国々を彷徨う爆笑珍道中。
    酒のためなら危険もなんのその。
    赤線だろうが闇市だろうがオアシスだろうが乗り込んで一杯!

    そこで出会う人々は親切で人懐っこい。
    イスラムは本来異教徒には寛大だという事を思い返させてくれる。
    高野さんの突撃精神に笑いつつイスラムの懐の深さも知ることが出来た快著!
    おススメです‼️

  • やっぱり高野さんの本は本当に面白い。これは飲酒紀行と称しながら、イスラム文化ガイド的性格を持っている。世界中のイスラム国家を周りながらお酒のありかを探す旅をしながら、飲酒文化を媒介にした文化論なのです。イスラム国家といっても、イスラム化される前の土着的な文化を混ざったり、あるいは一緒に住んでいるキリスト教徒やユダヤ教徒、仏教徒などとの共生によって、生活圏は保たれており、意外に柔軟な宗教なんですね。そして表紙はもちろん森清さんの写真が実に素敵。被写体そのものは、そんなに美しくもないかもしれないが、独特の美が宿ってる。そして独特の生活感が見事に描写されている

  • 「私は酒飲みである。休刊日はまだない。」

    高野秀行といえばブータンでイエティを追いかけながら酒を飲んだり、謎の独立国家ソマリランドに潜入したりしている肩書きは辺境作家だ。「誰も行かない所へ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」のが本文ではある。イスラム圏とはいってもいろいろ差はあるが原則としてイスラームは酒を飲まない。国によっては外国人でも飲めない。それでも高野氏は酒を求めてなんとかたどりつく。アル中ではないと言いながら夜になると酒を求める。そしてそれを書き残したのがこの本だというわけだ。

    パキスタン、アフガニスタン、チュニジア、イラン、マレーシア、イスタンブール、シリア、ソマリランド、そしてバングラディッシュ。この全ての国で酒を飲んだ人はおそらく他にいないだろう。だいたいソマリランドは独立国家として認められていない。

    イスラム圏で酒を飲むためにはまず売ってるところを見つけないといけない。探すために聞く相手は先ず運転手だ。そしてもう一つが学生である。そのどちらでもないのがアフガニスタンのケースでカブールは建物に何も表示がない。爆弾テロ対策ということだが少しでもビールがあることにかけて中華料理を探す。イタリアンでもフレンチでもいいはずなのに取材初日からそんな高いところにはいけない、中華なのだと。しかしガイドブックに載っていた中華料理は半年前に爆弾テロでなくなっていた。中華料理屋を爆破してどうするんだか。ホテルのフロントがようやく思い出したところをメモってもらいタクシーで乗り付けるが降ろされた場所はトタンの壁の前、とりあえずそこの門をばんばん叩くと郵便受けの様に覗き窓が開く。見える眼はおそらく中国系の女性、「ここ、料理屋?」「あんた、何が欲しいの」「ビールだ」合言葉は正しく門は開いた。中にある木造の民家に入るとそこにあったのは。

    大きな木のテーブル、ミラーボールにバーカウンターと酒のボトル奥からは麻雀の音が聞こえる。そしておばさんがどなると出てきたのはケバい化粧と露出の高い服を着た中国人の女の子だった。たどりついたのはただの中華料理ではなくカラオケ兼置屋だったのだからイスラム過激派からすれば爆破する理由はある。「ビール二本」「何か食べるものある」「面条」よって来た色気はまるでない女の子を適当にあしらいながらカラオケも断わりビールがあればいいとおかわりをすると女の子はあきらめて麻雀にもどる。そして出てきた料理はトマト卵麺、なすとピーマンの炒め物、インゲンと牛肉の豆板醤炒めこれが劇的に美味い。麺以外は賄いだったのだが。「お勘定」「二十五ドル」「高い!」「じゃあいくらだ?」「十ドル」「十五ドルでどうだ?」「じゃあ十二ドル」「オーケー」店を出ると塀越しにアフガンの岩山が見え、麻雀牌のじゃらじゃら言う音と娘たちの笑い声。俺はいったい今どこにいるんだろう。

    チュニジアでは森の奥のオアシス・バーに行き、イランではキャビアでビールに執念を燃やす。シリアのレストランで仲良くなった美人学生のサバちゃん「あたし、父の前でも飲んでるもん!」というその父親の仕事を聞くとカリフォルニアのシュワちゃんと同じだという。俳優!ではなくダマスカス州知事の娘だった。バングラディッシュではミャンマーの国境地帯の少数民族の村まで酒を求めて行く。ガイドのバイさんがつぶやく「私たちの宗教では酒を厳しく禁じている。なのに、どうして私たちは酒を造って飲んでいるのだろう?」非常に細かく規定が決められているイスラームではなく仏教の五戒の最後が「酒を飲んではいけない」だ。表では宗教上の決まりを守り裏では酒を飲むイスラームと境界自体がはっきりしない仏教、高野秀行がさがしていく辺境とはこういうところだったりもする。

  • 読了。

    【電子書籍】
    イスラム飲酒紀行 / 高野秀行

    宗教として禁酒を掲げているイスラム国家で酒を探す大冒険です。
    けっこう前に電子書籍で安売りしてたときにポチってちょこちょこと見ては休み見ては休みしていた。
    めちゃおもしろかったw

    アル中ではないがアル中の一歩手前みたいな著者が取材や観光で酒を求め彷徨う。
    カタール、パキスタン、アフガニスタン、チュニジア、イラン、マレーシア、トルコ、シリア、ソマリランド、バングラデシュ。

    トルコやマレーシアは酒はよく見かけるけど、探すんだね。著者が良いと思うところをw
    マレーシアの場合、酒がおいてあるのはだいたい中華料理屋とかなのでマレーシア地元料理のお店には酒がなかったりする。
    トルコは普通に酒あったね。モスク近辺以外はw

    イスラムの人たちは基本いい人たちなのでタリバンとかISISとかの印象を強く持たないことをおすすめします。

    たいへん面白かったです。

  • ここまでくると立派なアル中だと思いますが、作者の情熱には脱帽です。

    やっぱりイスラムでもこっそり飲んではいるんだなぁ!なんてったってオマル・ハイヤームの国だから。完全になくすなんてできないよね。

    『月の光に夜は衣の裾をからげた。
    酒をのむにまさるたのしい瞬間があろうか?
    たのしもう! 何をくよくよ? 
    いつの日か月の光は墓場の石を一つずつ照らすだろうさ。』
    四行詩集(ルバイヤート)より。

  •  『アヘン王国潜入記』など怪しげな探検記を数多く書いている著者が「イスラム圏で酒を飲む」というテーマで『週刊SPA!』『本の雑誌』『ジー・ダイアリー』の3誌に発表した8つのエッセーをまとめたもの。

     イスラム教が支配的な国であっても飲酒に関する規制は千差万別で、外国人向けのレストランなら普通に飲める場合も多い。しかし著者が求めているのはそういうものではなく、現地で作られて現地の人々が飲んでいる酒を現地の人々と一緒に飲んで酔っ払うのだ。

     違法行為として捕まったり、体を壊したり、犯罪の被害に遭うリスクもあるだろう。それでもためらいなく怪しい店に入って何の保証もない酒を飲むのだから、度胸があるというか酒に取り憑かれすぎというか。私も呑兵衛だがさすがに真似できない。だが他人の話は面白く聞ける。

     出版は2011年だからもう10年前。どの国も当時とは状況が変わっているだろうが、酒を飲む人の気持は多分そんなに変わっていない。ここに出てくる愛すべき飲兵衛たちが、今も楽しく飲んでいることを願いたい。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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