- Amazon.co.jp ・電子書籍 (155ページ)
感想・レビュー・書評
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漱石小説の登場人物は、絶妙な意識の低さが好き。三島は意識高すぎる。
超有名な冒頭。いや、本当それ。全面的に同意。どうして人の世はこうも生きづらいのか。
縁側で日向ぼっこして日がな一日暮らしたい的な文章とかね。
ストーリーが特別面白い感じではないんだけど、定期的に読み返したい小説。 -
青空文庫より。
物語を楽しむ小説、というよりは文章を楽しむ小説なのだな、ということを読んでいて思いました。単に画家が旅館に泊まって、旅館の人と話したり物思いにふけったりするだけの話なので、話の起伏なんてあったもんじゃない(笑)。それでも読ませるのはやはり漱石の文章の巧さとなるのでしょうか。
冒頭に「とかく人の世は住みにくい」が有名な作品ですが、鏡に映った自分の顔に悪態をつく場面が個人的には笑えました。またその時の感情描写が大真面目なので、余計に可笑しかったです。 -
山里の温泉宿を訪れた青年画家と、謎の美女と、「非人情」な世界について。
話の筋はあってないような程度で、ほぼ作者の絵画・詩歌などにたいする「美学感」が述べられていた。
1ページ中5語くらいは「生まれて初めて目にする言葉」ばかりでちと難読。
個性を尊ばれながらも無個性に扱われる近代社会のひずみへの危惧。
なんでもたったの1週間で執筆されたらしい。
いきいきとした会話のやりとりがきもちよかった。 -
1906年に書かれた夏目漱石の小説。絵画や詩句、人情と非人情といったテーマについて主人公が温泉宿で思索を巡らし、出会った人々と風雅で洒落た交流を連ねていく。20世紀が始まったばかりの当時の世相も垣間見える。
私自身はまったくと言っていいほど芸術方面に疎いので、彼のような心境にはなかなかなれない。主人公の想いが作者の想いかどうかはわからない。恐らくそういった考察も100年がかりで積まれているだろうが、考えすぎるのも野暮だろう。
満州へ出征する若者を見送るシーンで幕を下ろすのだが、主人公はその後の時代をどう生きて、どう死んだのだろうか。こういう風流な人が楽しく暮らせる世の中はこの後何年続いただろうか。そんなことがふと気になった。 -
冒頭は有名。高校生の時に初めて読んで、その東洋的な漢詩然とした描写する言葉の美しさにはまる。主人公が淡々と観察する様は諦観しているような、それでいて人間らしいような。読むと気分がよくなるのだが、今だうまく言語化できない、何度でも読み返したい一冊。
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読んだった感
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学生のとき、何度か挫折。今回初めて読破した。これは学力が上がったとか、忍耐力が増えたとかいう理由ではなく、50歳を越えて草枕の世界が心地よく思えるようになったのが理由だろう。ストーリーは退屈。画工である30歳上の男が、山中の温泉で出戻りの女と出会い、最後に彼女の表情に「憐み」を見つけるというもので、さしたる展開があるわけではない。主人公の口から芸術論が述べられる。「四角な世界から常識と名のつく、一角を磨滅して、三角のうちに住むのを芸術家と呼んでもよかろう」。なるほどと思う。また、茶道の雅味を煩雑と決め付け、「麻布の連隊のなかは雅味で鼻がつかえるだろう」とやっつけているのは痛快。明治時代の人々の会話も心地よいが、全ては理解できなかった。それでも、読書の快感は味わえる。もう20年ほどしたら、再読してみようと思う。
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相変わらず夏目漱石の難しい日本語に難儀したが、美しく、風景も浮かびやすかったほうかと。