国際メディア情報戦 (講談社現代新書) [Kindle]

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  • メディアリテラシーという言葉を一言で説明するのは難しい。ある情報がここに届いたのはなぜか。そしてその裏にある、届けられていない情報はどういったものかということを想像できるかどうか。

    引用
    目の前にある情報が、なぜいま、このような形であなたのもとに届いたのか、情報源からあなたまでの間にどのような意志と力が働いたのか。それを推察し見抜くことで、世界が全く違う姿となって立ち現れてくる。

    本書は90年代のボスニア紛争から、2000年代のビンラディンの伸長やオバマの選挙戦略などの豊富な事例で、「情報戦」がどのように行われてきたかを解説している。
    世界の数多ある紛争の中で、なぜ他の紛争と違いボスニア問題は国際的な注目を浴びたのか。混沌とした戦争で、なぜセルビアが加害者、ボスニアが被害者という、ボスニアの視点で世界の報道が展開されたのか。

    引用
    「情報戦」とは、情報を少しでも多くの人の目と耳に届け、その心を揺り動かすこと。いわば「出す」情報戦なのだ。情報は、自分だけが知っていても意味はない。現代では、それをいかに他の人に伝えるかが勝負になっている。

    バズる、バズらせる、というような言葉は2010年代には一般的になった。
    SNSなどで誰もが発信者になる時代が定着した。
    誰もが発信する時代のはるか前から、マスメディアを通じていかに自分たちの主張を伝え、目的を遂行するか、プロフェッショナルたちがしのぎを削ってきた。
    メディアが取り上げたくなる情報を、ジャーナリズムの文脈の中で適切に提示することで、情報展開の目標を遂行する戦いだ。
    世論の巨大な潮流にはどんな大メディア、権力者もあらがえない。
    世論の流れに乗り、わずかに舵をきって次の道筋をつける。
    権力による情報規制のような単純な話ではない。

    引用

    『戦争広告代理店』の主人公は、アメリカのPR会社の凄腕エキスパートだ。その能力とテクニックの限りを尽くして、紛争当事者の一方であるクライアント、ボスニア政府に有利な国際世論を誘導しようとする。少しでも役に立ちそうな情報は徹底的にメディア空間に広げるようにし、邪魔者が現れればその弱点を突いて除去するようなこともする。
     しかし、彼はいわゆる「やらせ」や「捏造」はしない。むしろ厳に慎んでいる。詳しくは後述するが、PR業界にはたしかに過去にはそんな例もあったし、いまも程度の低い業者の中にはそういう手合いもいるかもしれないが、私が描きたい「国際メディア情報戦」はそのようなものではない。不正な手段を用いず、きわめて洗練された形で、国際情報空間の仕組みと実態を熟知した上でその戦いに挑む。そういうプロフェッショナルの仕事だ。そして、ここが大事なところだが、それは「報道・表現の自由」を基礎とするジャーナリズムの基本的なルール、さらには民主主義の理念に敬意を払い、順守することが前提で行われている。

    受信者であり発信者でもある現代人としては、自分の入手する情報がたくさんの意思の集大成であると実感できる。
    そして発信者として、どれだけ雄弁に語っても、目線ひとつ、相槌ひとつですべての印象が左右されると知っておかなくてはならない。

  • 前作同様、読み応えのあるものだった。情報戦に対して日本がどのように望むべきかは重要な提言だ。

著者プロフィール

1965年、東京生まれ。1990年、東京大学文学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして数々の大型番組を手がける。NHKスペシャル「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」「バーミアン 大仏はなぜ破壊されたのか」「情報聖戦~アルカイダ 謎のメディア戦略~」「パール判事は何を問いかけたのか~東京裁判・知られざる攻防~」「インドの衝撃」「沸騰都市」など。番組をもとに執筆した『ドキュメント 戦争広告代理店』(講談社文庫)で講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞をダブル受賞。二作目の『大仏破壊』(文春文庫)では大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。

「2014年 『国際メディア情報戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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