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感想・レビュー・書評
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私はコレを「買い」だと思う。借りるべきではない、買うべきだ。古本でいい。私の場合は、電子版の安売り時に買った。序でに言えば、スマホのテキスト読み上げ機能を活用して、数ヶ月間かけてやっと聴き終えた。耳に残るエピソードが沢山ストックされた。
基本的には推理小説新人賞を目指す人に向けて、有名どころの作家が、テーマを絞って惜しげもなく「企業秘密」を開陳している本である。貴方が物書きを目指していなくても十二分に読み応えはある。ただし、それには貴方がその作家の作品を何冊も読み通しているファンだ、という条件がつくけれども。目当ての作家が3人ならば「買った方が良い」、5人以上ならば「必ず買うべき」だろう。‥‥それは条件が厳しいんじゃないの?と思った貴方。以下のメンバーを見てもそう思いますか?この豪華執筆陣を見よ。講談社にせよ、新潮社にせよ、1出版社の企画では決して実現出来ない。「日本推理作家協会」の企画だからこその面子なのである。
赤川次郎/東直己/阿刀田高/我孫子武丸/綾辻行人/有栖川有栖/五十嵐貴久/伊坂幸太郎/石田衣良/岩井志麻子/逢坂剛/大沢在昌/乙一/折原一/恩田陸/垣根涼介/香納諒一/神崎京介/貴志祐介/北方謙三/北村薫/北森鴻/黒川博行/小池真理子/今野敏/柴田よしき/朱川湊人/真保裕一/柄刀一/天童荒太/二階堂黎人/楡周平/野沢尚/法月綸太郎/馳星周/花村萬月/東野圭吾/福井晴敏/船戸与一/宮部みゆき/森村誠一/山田正紀/横山秀夫(2003-2008年にかけての執筆やインタビュー)
もちろん、好きな作家のあの初期の本の裏話とか楽しいのであるが、ミステリ作家全体の「トリックに対する並々ならぬ情熱」も知ることができることで貴重でした。
1番は、ネタバレ込みで明かしてくれた驚愕トリックの作り方である。いちばん驚いたのは二階堂黎人氏の「ロシア館の謎」(講談社文庫「ユリ迷宮」収録)である。石造の館が一夜にして消えてしまう「家屋消失もの」。コレを成立させるために舞台を北シベリアにし、スパイモノにするために時代を第一次世界大戦直後にしたわけです。壮大な「物語」は、一つのトリックから生まれたわけであり、決してその反対ではないところに、繰り返しますが決してその反対ではないところに私は酷く感動してしまいました。二階堂黎人氏の作品は一作も読んだことはないのですが。
以下、ちょっと気に入ったフレーズの一部
森村誠一が推理小説民主主義論を展開。
「ミステリーは基本的人権の保障される民主主義社会において発達する。犯人の人権の保障されない社会や国家においては、合理的な証拠は必要なく、容疑者を捕らえて拷問にかけ、自供させれば、一件落着である。つまり、ミステリーは人権保障の指数とも言える。」
■プロとしてやっていける人間の条件
日常生活の中で、おやっと驚いたこととか、こうだとは思わなかったといった、些細なことがありますよね。それが全部小説のネタになると考えないといけないと思います。この世界でプロとして飯を食っていける人間とそうじゃない人間との違いというのは、 些細なことを真剣に考えるかバカにするかどうかなんです。(東野圭吾)
僕は、気に入った映画はほとんど記憶するくらい、もう何度も何度も観るんです。なぜ自分がその時にそう思ったのかを突き詰められるからです。その突き詰める作業の中から、自分が意外感や違和感を抱いた理由がはっきりしてくる。そこからアイデアが出てくる。(略)映画では、一番繰り返し観たのは「 007」シリーズですね。マンガでは「パタリロ」を何度も読み返しています。(東野圭吾)
─『空飛ぶ馬』で異性の「私」を書くのに難渋したようなところはありませんか?
北村 一カ所もないですね。「私」とか千秋さん(※〈覆面作家〉シリーズの探偵役)とか、書いていてひたすら楽しいですね。苦しい場面も楽しい場面も、その子たちのそばにいると。愛する子たちだから。(北村薫)
←あの超絶技巧の「女の子」視点を「一度も難渋したことはない」と言い切る北村薫に驚愕した。
原稿を書いた側にも価値ある一冊となった。他人のやり方を覗き見できるのは実に楽しいし、自分自身の方法論を言語化しておくことは、プロとして重要だと感じた。(文庫本あとがき 今野敏)
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プロ作家の方々の考え方が参考になるものばかりでした。アンケートで、プロになる、プロとしてやっていくためには、「書き続けること」という答えが多い一方、作家は儲からないのでやるなら兼業でとの現実的な意見も多数あって厳しい世界だなと。
作家の皆さんが理想の作品を挙げるアンケートも面白くて、複数の作家が回答している松本清張と横溝正史はやはり凄いんだなと感じました。ミステリーじゃないけど文章について三島由紀夫を挙げている人も何人かいて、改めて読みたいなと思いました。 -
面白かった!
『ミステリー作家』ではないと認識されている作家さんの文章も多くて、それが逆にためになる内容が多かった。
「この話どうなっちゃうんだろう?」って思わされれば広い意味でミステリーなんだと思います。
北方謙三先生の話が図抜けてかっこいい。
推敲は99%しない。
生きてるレジェンドか?(先生の作品が好きなので尚更そう思った)
作品を読んだことがない作家さんも多かった。山田正紀さん、神崎京介さんの文章が素敵だったので作品も読んでみたいと思った。
作品があまり好きではない作者の文章に対して、やはりあまり好きではないな…と思ったりして、この本で何度も言われている「本質はにじみ出る」ってほんとだなと思った(性格が悪い)
皆さんすごく真面目だと思う回答が多くて、合う合わないはあるけれど、皆さんプロフェッショナルなんだなと感じた。 -
ブログをこちらに書きましたので、宜しければお読みください。
↓
http://sommelierofbooks.com/study_training_history/howtowritemystery/
私たちを魅了してやまない数々のミステリー小説。
珠玉のミステリー作品の作家たちが、
どうやって小説を書いているのか、
どうやってストーリーやトリックを考えているのか、
気になりませんか?
『ミステリーの書き方』
は、そんな作家たち自身が
手の内を暴露した作品です。 -
43人の作家がミステリー小説の執筆作法について解説した本。
ミステリーに限らず小説を書きたい人は必ず読むべき本です。作家ごとに執筆作法は異なりますが、よく読むと多くの作家に共通する作法もあるのがよくわかります。 -
過去に、バカみたいに本を読んでいた時期があった。小学校から高校を卒業するまで、1日5冊、下手するともう少し。近所図書館ができてから、ほぼ毎日のように通い、当時の上限である5冊を借りて読みふけっていた。
最初は好きな作家。それでもあっという間に読み終えてしまう。では次は何を読むかというと、あとがきに書いてある別の作品。巻末のあらすじ、帰ってきた本が並んでいる棚からランダムに取ってみたり。一度読んだ本を最後のページから読んでみたり(実は面白いので巻末から読み返すことはオススメしたい)。ほんとにあの頃のログを知りたい。
もちろんそんな読み方をしていれば、記憶もあやふやで、大人になってから最後のページまで読んで「知ってる本だ」となることもある。
当時、いちばん読んでいたのはミステリーだったと思う。本格や新本格。古典は難しくて読めなかった。
ミステリーの書き方は、「えっ、こんな豪華な作家さんたちが書いてくれるんですか??」というラインナップで、かつて読んだ本の著者が自分の作品について語るだけでなく、オススメまで紹介してくれる。また、新たな視点を持って読めるような示唆もあり、楽しい。ひたすら楽しい。
けれど問題があり、読みたい本が増えてしまう。紹介されている読んだことのない本はもとより、かつて読んだ本も、もう一度読み返したくなるたくなる。ミステリファンなら絶対読んで損はないし、ミステリファンでなくとも読んで欲しい。全部じゃなくてもいいので。この中に一人でも好きな作家がいたらぜひ。 -
私はミステリーを書きたい人ではないのだけど、「執筆するということ」についてたくさんの作家がそれぞれに書いていて、読み物としてとても面白かった。
舞台裏を見せてもらっているというか……。有栖川有栖の「蝶々がはばたく」が好きなので、その舞台裏をかなり細かく見せてもらえたのが特に嬉しい。
綾辻行人が「教養主義は崩壊したといわれているが、……」と書いていたのが面白かった。本格推理小説を楽しむなら、やはり過去の名作を楽しんでおいた方がより楽しめる。教養主義的と言われればそれまでかもしれないけど、そして私はぜんぜん過去の名作を読み込めていないけれど、それは真理の一つなのではと思う。読もう。
読書が趣味の人間にとって、読めば読むほど楽しみが深まるなんて、なんて素晴らしいジャンルなんだろう!ってことだね。 -
今年ずっと読んでる本登録され続けていた本をようやく読み終えた。好きなミステリー作家の執筆事情が読めてとても楽しかった。いつか自分でも小説を1本書いてみたいな
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小説家志望の人間こそ、書を捨てよ、町へ出よう…ってやつか…
オールスターです。土瓶さんなら詳しい作家はいったい何人になるんだろう。
この前言っていた乙一さんのシナリオ理論は、シド・フィー...
オールスターです。土瓶さんなら詳しい作家はいったい何人になるんだろう。
この前言っていた乙一さんのシナリオ理論は、シド・フィールドの「三幕構成」というテキストらしいです。