文学キョーダイ‼ (文春e-book) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「夕暮れに夜明けの歌を」の奈倉有理さんと「同志少女~」の逢坂冬馬さんが実の姉弟、って知ったときは確かにびっくりしたけど、もはや有名な話なのかな、そのおふたりの対談。
    もっと文学文学した内容かと予想してたら、わりと意外(でもないかもしれないけど)なことに、現代日本社会の話がすごく興味深くてよかった。

    おふたりの子供のころとか育った家庭の話とかは、まあそうだろうなというか、こういう姉弟が出るべくして出たというか、ご両親ともやっぱりすごく知的で文化的で現代的、っていう印象。私とは年代が20年くらい違うとはいえ、親が、好きなことをさがしさない、とか言うとか、あんまり考えられないし。

    それより、おふたりとも、ファシズム化傾向にある今の日本の社会について、戦争と平和について、などについて深く真剣に考えているのが伝わってきてすごくよかった。どういうふうにファシズムというものが進んでいくのかとか、なんで日本人はデモをしないのかとか、日本のメディアの状況とか、いろいろ海外と比べて説明したり、読みやすくわかりやすいうえ、すごく考えさせられる。そういうものごとに対する、小説やエッセイや翻訳の書き手として、あるいは読み手としての立場というか、ありかたというか、私は単なる読み手だけど、なにができるだろうかとか自然に考えさせられるというか。とりあえず、もっと本を読もう、と思った。
    ほんと、逢坂さんには、ご自身おっしゃっているように、これからも、小説以外でも、現代日本についてガンガン言っていただきたい!
    先日、歌われなかった海賊へ」を読んだときは、小説にしてはあからさまに登場人物に著者の意見を言わせすぎ?のような気もちょっとしたんだけど、この対談読んで、言いたいんだなってことがよくわかった。いいと思う! 一方で奈倉さんは、同じ思いでも、直接的にあからさまには言わずに思いを伝えたい、という考えで、それもよくわかった。

  • 小説では無く対談本だったのか。
    太字箇所は本人達の指定なのか、出版側の処置なのか気になる。
    様々なテーマに派生しているので、章ごとに読み返してみたい。普段あった際は時事的会話が多いとの事。
    後半は戦争について。

    どちらかの名字が本名なのだろうか。
    聞き役の姉、しゃべり倒す(しゃべりまくる、表現では足りない)弟という感じで、
    だから作品内容含めて逢坂氏が女性なのでは、と思う読者がいるのかなぁ、と思ったり。
    幼稚園児で自分の見解を理路整然と伝えるって凄い。
    ミリオタとしても男子がハマる理由としてありがちな破壊衝動からくるものでは無いと当時祖父が理解していたらどうだっただろう。
    大学時代の同性との会話について触れているが、今現在、話の合う同性の親友はいるのだろうか。
    お姉さんが周囲との価値観の違いに悩まされなかったのは両親の選択肢の大きさ と触れているが
    親御さんを含めた対談本はでないだろうか。


    読み終えると弟さんへの感想が大部分を占める。。
    お姉さん「よくなにも見ないでそんなに語れるね(笑)」
    本屋大賞のスピーチ 気になる。

    小説の監修を姉に依頼した際、名字から民族のルーツ問題が生じること、パン屋が存在しないという事になるほど、と。
    監修って専門的知識が必要なのだなと改めて。
    それが身内だとしたらやりにくい部分もあるかもしれないがやりやすい部分も多いのだろうか。

    プーチン氏を親日家とか、親しみキャラ全開に紹介したメディアは確かに問題あるかもしれないが
    国の擬人化は『ヘタリア』などは国民の性格を表現して、怖い上司は別問題なので、弟さんの「最悪のカルチャーね。」全否定が切なかったり。権力者のキャラクター化 に大部分かかっていると思いたい。。
    結構言い切りタイプなのだろうか、共感もありつつ、う~ん。。となる意見もあったり。
    説明する際の擬音語の表現が面白い。


    親御さんの 特に母親が語学大好きで生涯学習を体現している人で凄い。

    「サブスク…お手軽便利ではあるんだけど、(テレビは)自分の好みとは関係なく映画がやってくるから、思いもかけず面白い映画に出会ったり。」
    「ものや人を粗末に扱う言動、危険なことがもてはやされて、男子しかいないサークルの中でのヒエラルキーがあがっていくという。非常に未熟で幼稚な価値観」
    「ドラマは、確かにものすごいビジュアルを提供…でも…想像の余地がどんどん失われている」

    「今みたいに四六時中、同級生や同じ趣味の友達とかの存在をずっと気にしなきゃいけない状態というのは、気が休まる暇がないんじゃないかって。」

    『地図と拳』小川哲
    『11文字の檻』青崎有吾
    『レペゼン母』宇野碧
    『敗北を抱きしめて』ジョン・ダワー
    『機龍警察』『自爆条項』月村了衛
    宮内悠介
    伊藤計劃

    『宇宙人のいる教室』『ふたりは屋根裏部屋で』『9月0日大冒険』『ぼくのミラクルドラゴンばあちゃん』『絵にかくと変な家』さとうまきこ
    『タラント』角田光代

  • 読書をすることがどんなに素晴らしいかを姉弟で語ってくれている。本の紹介がいっぱいあったので、ついつい購入してしまった。そして二人は、戦争がない世界へそのあり方を変えるために執筆しているということ。元々ファンだったけど、さらにファンになってしまった。この二人、サイコーです!

  • 朝日新聞2023年10月21日
    サンキュータツオの書評で本書を知った。
    「高橋源一郎氏からラジオ出演を
    依頼されたとき、姉弟と公言。
    高橋氏は椅子から転げ落ちそうに
    なったという」
    (P48にそのくだりがある)
    高橋源一郎が驚く様子が想像できて
    可笑しかった。
    奈倉の言う
    「空想だと思われた小説が予言的な
    内容だったとして見直されるとき、
    大事なのは『予言かどうか』ではなく、
    社会に潜在している問題を作家が
    いかに感じとって盛り込んでいたのか
    ということ」(P186に発見)
    はラディカルだ。
    「作家と読者の想像力は国籍年齢性別を
    超えるためにある」
    「想像力の欠如は、読書体験に由来するの
    かもしれない」
    というサンキュータツオの感想。
    たしかにデリカシーのない人は読書が
    足りないのかもと思った。

    「好きなことを突き詰めていったら、
    その先にたぶん面白いことがあるだろう」
    (P11 逢)

    「絵画や音楽をやっている人が、
    作品そのものや専門分野技術じゃなく
    所属で偉さを判断するようになったら
    終わり」(P14 奈)※

    「さかなクンも、好きなことを突き詰める
    人生を送れることがよかったんであって、
    『海洋大の客員教授になれてよかったね』
    って話ではない」(P14 逢)

    「自由だと思い込んでいる不自由が
    なによりも自由を奪っている」
    (P150 奈)

    「本意でない言葉を発し続けていると、
    結局は自分自身の心を傷つけてしまう」
    (P151 奈)

    「もしなにかきっかけがあって
    お仕事の声がかからなくなっても、
    たぶん僕はずっと小説をかいている
    と思う」(P152 逢)

    「全体主義体制成立の前段階として、
    性的マイノリティを弾圧する」(P211逢)
    はすごく怖いことだと思った。
    実際に今のロシアや中国や北朝鮮で
    行われている。
    これって全体主義になるってことだろう。
    今まで権力者がなぜ性的マイノリティを
    嫌うのか釈然としなかったが
    「単一の国家政体のもとに国民が
    統合されているという幻想を持とう
    とする勢力、ファシズム的な勢力から
    すると、性的マイノリティって価値観の
    攪乱者」(P211逢)
    という説明で腑に落ちた。
    国家に縛られる愚を語れるのは、
    留学したり、翻訳したり、世界的な視点を
    持っているからこそだろう。
    ロシア国民の苦悩を市民レベルで知れるのは
    勉強になった。

    「自分のしていることがなんにつながるのか
    考え続けること」
    「自分の仕事の内容やひとつひとつの言動は、
    戦争をなくす方向を目指しているのか、
    それとも戦争をする社会構造に加担して
    いるのか。考えるのを放棄しない」
    (P224 奈)

    「自由がわからないことは責任がわからない
    ということと似ている」(P224 奈)

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著者プロフィール

1982年東京都生まれ。ロシア文学研究者、翻訳者。ロシア国立ゴーリキー文学大学を日本人として初めて卒業。著書『夕暮れに夜明けの歌を』(イースト・プレス)で第32回紫式部文学賞受賞、『アレクサンドル・ブローク 詩学と生涯』(未知谷)などで第44回サントリー学芸賞受賞。訳書に『亜鉛の少年たち』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著、岩波書店、日本翻訳家協会賞・翻訳特別賞受賞)『赤い十字』(サーシャ・フィリペンコ著、集英社)ほか多数。

「2023年 『ことばの白地図を歩く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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