“夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。”
その子犬のような小さな生き物は、痩せて傷つき、震えている
“最初に感じ取ったのは体温だった。
そのことに、僕は戸惑った。
朝露に濡れて震えている腕の中の小さなものが、こんなにも温かいなんて信じられない気持ちがした。
温もりの塊だった。”
それから僕はブラフマンとの濃密な日々を過ごしていき、彼の生態について詳しく記録していくのだ。
※ブラフマンの尻尾
※ブラフマンの眠り方
※ブラフマンの食事
※ブラフマンの足音
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・
そして最後は……
※ブラフマンの埋葬
なんて愛おしいのでしょう。
愛情しかありません。
この物語の世界はとても美しく静か。
自然に囲まれた小さな村は、死者たちの世界のようで現実味がない。
古代墓地にいくつも転がる石棺や墓標。
埋葬人の見張小屋。
過去も未来も持たない僕。
この静けさや曖昧さが、なんとなく村上春樹の世界を思わせる。
その中で、ブラフマンの存在が生き生きと生命力に溢れているのだ。
170頁程の文章には、想像を巡らせるのに充分な余白と余韻があり、胸の奥深くに沁みていく。
あぁ、私達は生きているのだな。
※この本は、いるかさん・地球っこさんに「小川洋子さんの好きな作品」として教えて頂いた中の一冊です。
ありがとうございます♪
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2023
- 感想投稿日 : 2023年9月19日
- 読了日 : 2023年9月18日
- 本棚登録日 : 2023年9月18日
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コメント 4件
いるかさんのコメント
2023/09/19
aoi-soraさんのコメント
2023/09/19
地球っこさんのコメント
2023/09/20
aoi-soraさんのコメント
2023/09/20