ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2007年4月13日発売)
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本棚登録 : 3722
感想 : 434
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“夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。”

その子犬のような小さな生き物は、痩せて傷つき、震えている

“最初に感じ取ったのは体温だった。
そのことに、僕は戸惑った。
朝露に濡れて震えている腕の中の小さなものが、こんなにも温かいなんて信じられない気持ちがした。
温もりの塊だった。”

それから僕はブラフマンとの濃密な日々を過ごしていき、彼の生態について詳しく記録していくのだ。

※ブラフマンの尻尾
※ブラフマンの眠り方
※ブラフマンの食事
※ブラフマンの足音
   ・
   ・ 
 そして最後は……
※ブラフマンの埋葬

なんて愛おしいのでしょう。
愛情しかありません。

この物語の世界はとても美しく静か。
自然に囲まれた小さな村は、死者たちの世界のようで現実味がない。
古代墓地にいくつも転がる石棺や墓標。
埋葬人の見張小屋。
過去も未来も持たない僕。
この静けさや曖昧さが、なんとなく村上春樹の世界を思わせる。

その中で、ブラフマンの存在が生き生きと生命力に溢れているのだ。

170頁程の文章には、想像を巡らせるのに充分な余白と余韻があり、胸の奥深くに沁みていく。

あぁ、私達は生きているのだな。



※この本は、いるかさん・地球っこさんに「小川洋子さんの好きな作品」として教えて頂いた中の一冊です。
ありがとうございます♪

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2023
感想投稿日 : 2023年9月19日
読了日 : 2023年9月18日
本棚登録日 : 2023年9月18日

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コメント 4件

いるかさんのコメント
2023/09/19

aoi-soraさん こんばんは。

素敵なレビューをありがとうございます。
小川さんらしい、まさしく文学ですよね。

こうやって感想を教えていただけるのは、とっても楽しいです。
ありがとうございました。
そして、このような関係に感謝です。

aoi-soraさんのコメント
2023/09/19

いるかさん、こんばんは^⁠_⁠^
きれいな文章でした。
水彩絵の具で描いたみたいな風景の中で駆け回るブラフマンが愛おしい。
題名から結末が予測できるでしょ?
その上で読み始めるってのがまた切なかった。
素敵な作品を教えてくれてありがとう。
私も同じく感謝です!
(⁠人⁠*⁠´⁠∀⁠`⁠)⁠。⁠*゚⁠+

地球っこさんのコメント
2023/09/20

おはようございます!

素敵なレビューに、朝からじーんと浸ってます。
小川洋子さん、やっぱりいいな。
私も読んでみたいと思います。

aoi-soraさんのコメント
2023/09/20

地球っこさん、おはようございます♪
まだフワフワと物語の世界を漂ってますよ(笑)
なんか後を引くの
小川洋子さんの作品、少しずつ読んで行こうと思います。⁠◕⁠‿⁠◕⁠。

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