スプートニクの恋人 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2001年4月13日発売)
3.51
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本棚登録 : 18304
感想 : 1500

 性欲メイン。

 人間臭いはずなのに、どうしてだか人間のにおいがしないんだよなぁ。生きてるにおいがしない。不思議。主人公もそうだし、すみれもそうだし、ミュウもそう。ミュウはともかく他二人は性欲があるのに、どうしてもそこに「人間らしさ」が見えない。隔離された別の場所にいるアンドロイドの劇を見てるみたい。
 単純な疑問なんだけどさ、そう簡単にガールフレンドとかって作れるもの? セックスってできるもの? 基本引きこもりのコミュ障だから、ひとづきあいってすごく限定されてるんだよね。そんな簡単にセックスをするだけの付き合いの相手って見つけられるものなの? って疑問が常に付きまとうので、どうしても「同じレベルにいる人間」に見えないんだなぁ。たとえば、この主人公がどこかで下手うって相手を妊娠させただとか、二股ばれて大修羅場だとか、そういうのが盛り込まれてたらまだ人間として読めたかもしれない。本命には性欲を抱いてもらえないかわいそうさってのは、ただ悲劇(かどうかは知らんが)の主人公っていうエッセンスを加えてるだけで、人間味はないもの。
 ミュウの観覧車のくだり以降が劇的に面白くなる。そこまではちょっとつらい。
 主人公がさ、夜中に音楽を聞いて山上りするじゃない。そこで、「こちら側」に戻ってこなければ、彼はすみれのところに行けたんじゃないかって思うんだけど、そういう認識であってる? たとえその音楽を聴いたくだりそのものが夢でしかなかったとしても、ここまではっきり覚えているのなら、一度くらいは、「戻ってこなければすみれに会えたのでは」って考えてもよさそうなのになって思いました。
 村上春樹がすげー好きなひとは、作品のどこについて語るんだろう。ストーリィ性? 登場人物の思考? 地の文の表現? 今のところ三作しか読んでないけど、全部同じ主人公ですって言われても驚かないよ? 感想を聞いてみたい気もするけど、めんどくさいから聞きたくない気もする。
 抜粋。


ぼくの本物の生命はどこかで眠りこんでしまっていて、顔のない誰かがそれをかばんにつめて、今まさに持ち去ろうとしているのだ。


 ところどころある面白い表現が好きです。脳味噌食べる猫のくだりも好き。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 純文
感想投稿日 : 2017年4月6日
読了日 : 2017年4月6日
本棚登録日 : 2017年4月6日

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