寡黙な死骸みだらな弔い (中公文庫 お 51-2)

著者 :
  • 中央公論新社 (2003年3月25日発売)
3.78
  • (206)
  • (256)
  • (350)
  • (18)
  • (1)
本棚登録 : 2544
感想 : 241
5

短編集と言いつつ、連作小説です。
見知った人や情景が少しずつ重なったり連なったりしながら、この時計塔のある静かな街の人々の生活や思いを描いている。

私は連作小説が好きです。すべての話の人や景色が、どうにもほかの短編の中で見覚えがある。読み進めるうちに、その人の知らなかった過去や考えや危うさが少しずつ見えてくるドキドキ感が好き。

すべての話に死があり、弔いがありました。その人の一部を手に入れたいと思ったり、嫉妬したり独善的だったり、過去を引きずったり自分を騙したり。そういう人の暗い部分や悲しい部分や切ない部分を、綺麗で上品で丁寧な言葉で描けてしまうのが不思議。
お気に入りの小説になりました。

老婆Jが好きです。最後の部分に冷やりと寒気が走りました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小川洋子
感想投稿日 : 2011年10月23日
読了日 : 2011年10月23日
本棚登録日 : 2011年10月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする