潤一郎訳 源氏物語 (巻1) (中公文庫)

  • 中央公論新社 (1991年7月10日発売)
3.90
  • (30)
  • (23)
  • (35)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 456
感想 : 32
4

令和6年大河ドラマに備えて『源氏物語』の最新の角田光代訳で読んでいます。私がいままで読んだ源氏物語は、高校の授業と、漫画『あさきゆめみし』、田辺聖子の『私本源氏物語』、そして角田光代版なので女性による現代訳ばかりでした。
そこで男性訳でも読んでみようかなと思って、谷崎潤一郎版を角田光代訳と同時進行で進めてみます。

角田光代訳はとーーーっても読みやすくわかりやすくなっていますが、かえってそのために現代感覚で「この男いい加減にしろー」と思ってしまうこともありました。(当時の価値観宗教観は今と違う!とは分かっていますが)

こちらの谷崎潤一郎訳は、「丁寧過ぎる意訳にはせず平安朝の女性が造った写実小説ということを大切にする/読んでいくうちに自然と会得しそうなこと、字引きをひけば分かることは注意を入れていない/一字一句の詮索にとらわれずに安易な気持ちで読んでもらいたい」という訳し方です。
そのため言葉や行動がわからないこともあるのですが、それがむしろ一つ一つの出来事に引っかからずに全体の流れに乗る読み方になり、現代感覚での「いい加減にしろー」とはあまり感じませんでした。良かった(笑)

私としては角田光代訳で人物や流れを把握し、谷崎潤一郎訳で日本語の言葉を楽しむという順番で良かったなと思います。

こちらの一巻は『桐壺』から『花散里』まで。
巻ごとの出来事は角田光代版で書いたので、登場人物を改めて整理整頓します。
角田光代版感想
https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/430972874X

<光君血縁>
・光君:色好みの主人公。危険な恋、無理な恋ほど燃える。良いところは面倒見の良いところ。一度通った女性はちゃんと面倒見る。
・桐壺帝:光君の父
・桐壺更衣:光君の母。身分が低いのに寵愛されたので、他の女性たちからいびられたり「帝がどこにでも呼ぶ軽い女」扱いされる。心労に倒れて亡くなる。
・朱雀帝:両親は桐壺帝と弘徽殿女御。光君の異母兄。『葵』の巻で帝になった。

<藤壺女御>
・藤壺女御:桐壺更衣に似ているという事で入内した。前帝の四の姫なので身分は高い。光君にとっては、母親であり、理想の女性。光君と関係して若君を産む。

<左大臣(ひだりのおとど)>
大殿(おおいとの)とも呼ばれる。光君関連で「大殿のほうでは…」と書かれていたら葵の上のことを示すとか。
・左大臣:頭中将と葵の上の父。葵の上を嘆く場面は痛ましい。半ば引退していたが、光君のたっての願いで太政大臣になった。光君の面倒見の良さ、恩を忘れないところが現れる。
・頭の中将:葵の上と母親を同じくする兄。正妻は右大臣家の四の君。光君と仲が良い浮気っぽい色男。
 位がかなり変わりますが、現代語訳では便宜上「頭中将」で統一します。
・葵の上:左大臣と正妻との姫。頭中将の妹。光君の正室だがなかなか心が通わなかった。出産直後に物の怪に取り殺される。

<右大臣(みぎのおとど)家>
・右大臣、正室:光君、左大臣家とはどうもうまくいかん。
 頭中将の正妻は右大臣家の姫。夫婦仲はあまり仲良くないようだけど子供は数人いるみたい。頭中将は人脈がバランスいいな。
・弘徽殿女御→太后:右大臣の姫。朱雀帝の母。桐壺更衣も気に入らないし、光君も気に入らないし、藤壺女御も気に入らない。
・朧月夜(内侍):右大臣家の姫で弘微殿大后の妹。朱雀帝に入内しているが光君との逢瀬がバレてピンチ!光君に連れ込まれたときは「困ったことになったけど、光君なら安心だし(安心なの!?)、騒いだりして強情で無粋だと思われたくないし」ということ。これが当時の恋愛感だったのか?

<貴族や従者>
・藤式部丞(とうしきぶのじょう)、左馬頭(ひだりうまのかみ):『箒木』の巻で、光君、頭中将とこの二人の合計四人で女性についてあれこれ言う。
・惟光:光君の乳母の息子。

<六条御息所周辺>御息所とは、帝や東宮の子を産んだ女性です。
・六条御息所:前夫桐壺院の弟(先の東宮)の死後、光君の恋人になったらしい。桐壷帝は光君に「弟が大切にしていた妻なんだから通うだけじゃなくてもっと大切にしてくれよ」と言っていたようだ。光君より年上で気位も高いので光君は近寄りがたく思うようになっていた。
 嫉妬に悩み生霊になって、夕顔と葵の上を取り殺したっぽい。六条御息所の葛藤描写はさすが女性作家だなあと思う。
・斎宮:六条御息所と、桐壺院の弟の間の姫。伊勢神宮の斎宮に就く。

<空蝉周辺>
・空蝉:衛門督(えもんのかみ)の娘で入内も期待されていたが、伊予介の後妻になった。忍んできた光君と一夜を共にするが、その後は避け続ける。そのため思い通りにならない恋ほど燃える光君の忘れられない女性になる。
・伊予介(常陸守):空蝉の年上の夫。
・小君:空蝉の弟、12,3歳。光君は、空蝉を口説き落とすために小君を引き取って、朝廷で働けるように面倒を見る。この年齢でも恋愛事情に参加するのね…
・軒端荻(西の対の女):伊予介の前妻の娘。空蝉の部屋に入り込んだ光君は人違いに気がついたけど、うまいこと口説いて関係を持つ。「光君は女性に不誠実なことはしない」って書かれるけど、軒端の荻には不誠実だと思う。間違えて手を出して「ずっと好きでした☆結婚するより忍び合うほうが燃えるよね☆」そして彼女が結婚するときには「処女じゃないってバレても大丈夫かなあ」って無責任では…
・紀伊守:『帚木』で光君を迎えた伊予介と前妻との息子。

<紫の上周辺>
・兵部卿宮:桐壺院の弟で、紫の上の父親。
・尼君:紫の上の祖母。
・紫の姫君:父親が、先帝の息子であり藤壺女御の兄。藤壺の姪なのでよく似ている。光君は、理想の妻にするため隠して育てていた。いきなり妻にされて傷心だったが、光君の理想の妻になっていく。

<女性たち>
・夕顔:物儚げな家に隠れ住む女。頭の中将との間に娘もいるが、正室の実家である右大臣家から嫌がらせをされて姿を隠した。光君との廃屋の逢引きの最中に物の怪に取り殺される。
・朝顔の君:式部卿宮の姫。朝廷女房。賀茂の斎院も務めた。光君とは適度な距離を保ちつつ関係を続けている。
・花散里:桐壺帝の女御の麗景殿(優しい人柄らしい)の妹
・末摘花(常陸宮の姫君):常陸の親王の遺された姫。うら寂しい屋敷に住む。「零落した姫」であり個人資産もない。光君が顔を覗き見たら、座高が高く鼻が長くて赤くてなんか興ざめしちゃった。でも関係しちゃったら面倒見ないとなあ、と思う。
・大輔命婦(たいふのみょうぶ):左衛門の乳母の娘。末摘花の様子を気にかけている。浮気者だがおもしろいところがある女として光君もよく用事を言いつけている。酸いも甘いも噛み分けた熟女ってところ??
・源典侍(げんのないしのすけ):年配で好色。面白がった光君と頭の中将が手を出す。「年配」と書かれているが、この時代の年配なら30歳くらいだろうと思ったら、56、7歳なの??やるなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 源氏物語
感想投稿日 : 2023年12月22日
読了日 : 2023年12月22日
本棚登録日 : 2023年12月22日

みんなの感想をみる

コメント 2件

hei5さんのコメント
2023/12/23

谷崎訳の源氏物語は、青空文庫の作業が終わるのを待ってゐます。
与謝野晶子訳は ストックだけしてるけど、全く手付かずデス。
とことん読書にはお金を掛けないことにしてマス

淳水堂さんのコメント
2023/12/27

hei5さん

いいねとフォローありがとうございます!
私も基本的には図書館で借りて、手元に置きたい本だけ買ってます。
『源氏物語』は訳がたくさんあるし、大長編だし、どれにするか悩みますよね。

ツイートする