小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

著者 :
  • 講談社 (2010年5月14日発売)
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本棚登録 : 5177
感想 : 772
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今、NHKのBSでやっているドラマがとてもいいので。
いずれ総合でもやると思います。
穏やかな日常の陰に見え隠れする哀しみは、やがて‥
好評の家族小説。

高校一年の花菱英一は、元は写真館だった建物に一家で越して来ました。
両親は一見ごく普通だが、どこかセンスがおかしいと思っている。
何しろ、息子を友達の呼ぶあだ名の「花ちゃん」と呼ぶ~一家みんな花ちゃんだっつーの(笑)
越してきた写真館のスタジオを改装もせずにリビングにして、看板まで出したままなのだから。
そのために、あらぬ誤解を受け、「心霊写真を撮った責任を取れ」と言われてしまう…
妙な写真にぼんやり写っている…それは、念写だったのか?
いくつかの出来事に関わり、謎を解きほぐしていく物語です。

写真の主を訪ねて行ってみた不動産屋で、愛想のない事務員・ミス垣本に出会います。
独身だからではなく、社会人としてどうよと思われるぐらい欠けているものを感じたので密かに「ミス」とあだ名を付けたという。
ところが、電車の来る線路にいた現場を目撃してしまい、放っておけなくなる花ちゃん。
どこか壊れている年上の女性と、何気ないような縁が出来ていき…

身体の弱い弟のピカこと光(ひかる)は利発で、きれいな顔立ち。
親友のテンコこと店子力(たなこつとむ)がなぜか似たタイプで、そのせいか二人はすごく仲良し。
テンコは寝袋を抱えてよく泊まりに来るし、二人だけで遊んでもいる様子。
比べると自分は平凡と感じつつも、どっちのことも好きな花ちゃん。
コゲパンというあだ名の女の子も登場。誰の彼女になるのでもないけれど、仲良くなる距離感がなかなかいいですね。

実は、花菱家の兄弟の間にはもう一人、女の子の風子がいたのだが…
一緒に生活しているかのように両親は口にすることもある。しかし、もう亡くなっているのだ…。
家族はそれぞれに痛みを秘めて、自分を責めていた悲しみが次第に明らかに。
そのことに気づいた家族は、あらためて心が通い合うのでした。
日常的な描写の積み重ねから、少年が成長する様がじんわり伝わってきます。
ゆっくり読むのにいいですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内小説
感想投稿日 : 2010年10月6日
読了日 : 2010年9月30日
本棚登録日 : 2013年4月13日

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