三島屋変調百物語の4冊目。
中編が4本入った充実した内容です。
神田の人気ある袋物屋「三島屋」では、変わり百物語も評判となっていました。
不思議な経験を語りたい人を一度に一人ずつ迎え、姪のおちかが一人で話を聞き、おちかが叔父に一通り話した後は、「話して話し捨て、聞いて聞き捨て」というお約束。
第一話 迷いの旅籠
名主と共に村から出てきた百姓の女の子が語ったのは、幽霊を見た話。
先祖を迎える行灯祭りが禁じられてしまったため、村外れの空き家を行灯に見立てて飾る行事が行われました。
ところがそこへ、亡くなった人が姿を見せてしかも留まり‥?
第二話 食客ひだる神
箱根の七湯巡りをした夫婦に、ひだる神が取り憑いた?
商売は繁盛するが‥
気のいい夫婦はついに?
微笑ましい成り行き。
第三話 三鬼
お武家のしかもとある藩の江戸家老という大人の男性の訪問。
若い頃に左遷されて北部の寒村へ赴任した。
閑職のようだが、逃散もあったり獣害の危険もある土地で、腕が立つ侍がいる必要があったのだ‥
貧しい郷の悲惨な現実を思わせます。
第四話 おくらさま
島田髷を結い、娘のような振り袖を着た老女が登場。
生家では「おくらさま」に毎日捧げ物をしていたと。
だがそのために、犠牲になり‥?
姿の消えた老女が何者だったか、探し始めるおちか達。
おちかの身の上にも変化が起きるかもしれない、という思わぬ出会いがあります。
素直な若い娘には辛すぎる過去を抱えたおちか。
作品も中編にしておくにはもったいないような重みがありますが、これぐらい世間の広さ深さを感じることでやっと、おちかも少しは気持ちを立て直せるのでしょうか。
幸せを祈ります。
- 感想投稿日 : 2018年9月4日
- 読了日 : 2017年8月17日
- 本棚登録日 : 2018年9月4日
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