レキシントンの幽霊 (文春文庫 む 5-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (1999年10月8日発売)
3.45
  • (321)
  • (699)
  • (1466)
  • (131)
  • (16)
本棚登録 : 7275
感想 : 609
4

1980~1990年代に書かれた短編集。
“孤独”や“心の奥底にある恐怖”が
テーマになっているように思えた。
村上春樹作品は長編が2~3作と短編集が他に1作くらいしか読んでないけど、もしかしたら短編のほうが好きかもしれない。
淡々と、静かに、美しい日本語で、目には見えない恐怖に引きずり込まれるような感じ。
「トニー滝谷」は前に映画を観たけれど、映画もまさに、静かで美しくて哀しかった。その雰囲気は、小説も同じだった。

目に見える恐怖よりも、目に見えない恐怖(罪の意識だとか、過去の思い込みだとか)のほうがずっと恐ろしい。

「沈黙」が一番印象に残った。
一見善良そうに見えて実はとんでもなく腹黒い人間って実際いる。
頭も良ければ自分を善く見せる術を知っているから更に恐ろしい。そうして周りをコントロールしていく。
そんな黒い人間の裏側に勘づいてしまった語り手の不幸な出来事とその後。
結局最後に勝つのは、自分は正しいと強く信じられる心なのだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年7月18日
読了日 : 2015年7月18日
本棚登録日 : 2015年7月18日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする