裁かれるコロンブス (アンソロジー新世界の挑戦 1)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000036313

作品紹介・あらすじ

「新世界」インディアスの発見者から被壊者へと転落してゆくコロンブスを、彼の同時代人が、きびしく糺す、異色の「コロンブス伝」。

感想・レビュー・書評

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  • 一世紀の間に大西洋を介して新旧両世界が対峙する緊張に満ちた問題空間が彼らを鍛えたのだ。

    ラスカサスのコロンへのこだわりは異常であった。なぜ彼がクロニカにおいてかくも多くのページをコロンに割いたのか、コロンを通して何を読者に訴えようとしたのか、問わるべきだ。

    インディオに共苦し、彼らの解放に生涯をかけた原因として、キリスト教徒に巣食う二つの無知、インディオの人間性や文化への無知と自らの加害責任への無知を問題視したが、彼はもう一つ根元的な問題に立ち入ろうとした。それは神意への無知と、それが結果する神意への裏切りという問題だ。コロン伝最大のモチーフはそこにあった。
    このコロンによる神意の裏切りは、先住民の善意を裏切る行為として、法的には神の法、自然の法、人間の法の蹂躙ふみにじるとして結果するものであると、ラスカサスは看破していた。

    ラスカサスにとって新世界の発見は、救霊予定者が多数住む、地球上にのこされた空間へとコロンを旅立たさた神意の実現以外のなにものでもなかった。もしコロンと航海者たちがその神意を体して事業を進めていたならば現前しているインディアスの破壊はおこりえなかったはずだとラスカサスは強調する。インディオの分割頣使も制服戦争もすべてが神意をふみにじる行為とされた。神意を洞察し、行為にはんせいし、インディオの生活と文化に敬意を払う真のキリスト教徒こそ、新世界へ赴く有資格者とされたのだ。

    神の法 自然の法 人間の法をふみにじるコロン、まさしく裁かれるコロンが姿をあらわしてくる。要は裁き方であり、詳しくは本文をよむしかない。全てはコロンに始まるとラスカサスの到達した認識だ。

  •  スペインによる新大陸における植民地支配の功罪を、コロンブスを例にとって列挙している本です。
     一般的に言って、スペインによる植民地支配には「黒い伝説」と「白い伝説」という分け方が存在します。植民地経営による富の搾取と原住民の奴隷化と、原住民のキリスト教化(文明化)という二つです。

     キリスト教化なんてインディオからみれば余計なお世話で、どちらも「黒い」のですが、その後の歴史で白人とインディオとの混血の文化が進んだことを考えれば、そんな考え方もあるかもしれません。

     ラスカサスは宣教師で、新大陸での布教に熱心に関わり、征服者によるインディオへの迫害をなんとかやめさせようとした偉い人です。使命感に燃えた容赦ない批判に強さを感じます。

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