ナウシカ考 風の谷の黙示録

著者 :
  • 岩波書店
4.19
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本棚登録 : 222
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000241809

作品紹介・あらすじ

一九八二年から雑誌『アニメージュ』に連載され,映画版の制作を挟み九四年に完結した,宮崎駿の長編マンガ,『風の谷のナウシカ』.この作品の可能性の種子は,時代の喘ぎのなか,いま,芽生えと育ちの季節を迎えようとしているのかもしれない――.多くの人に愛読されてきたこのマンガを,二十余年の考察のもと,一篇の思想の書として徹底的に読み解く.

感想・レビュー・書評

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  • 表紙は第5巻のナウシカの呟きを採っている。

    虚無にいわれるまでもなく
    私達が
    呪われた種族なのは
    判っている
    大地を傷つけ 奪いとり 汚し 焼き尽くすだけの
    もっとも醜いいきもの

    この後、虚無的になったナウシカはメーヴェに乗って王蟲のところへ行き、大海嘯の後に腐海の苗床になり大地の傷を癒そうとしている王蟲と共に、腐海の一部になろうと沈んでゆくのである。その瞬間、王蟲はナウシカを救うためにナウシカを食べる。

    もはやナウシカは、青き衣をまとった救世主ではなく、滅びゆく世界の仕組みを探し求める旅人でしかない。宮崎駿が、戸惑い探りながら作り上げた神話的物語。‥‥なんのことやらわかんないですよね。基本はやはり全7巻を読んでもらうか、この本をじっくり読むしかない(絵は少ないが、台詞はかなり採用している)。

    どうやら初めて本格的に現れたマンガ版「風の谷のナウシカ」論らしい。82年に連載開始、何度もの中断のあとに94年に全7巻が完結。「アニメと原作は全くの別物である」ことは、知る人ぞ知られている。私は、最終巻は特に暗く難解で、正直戸惑った。どう言葉にしていいのかわからないままに本棚の奥に仕舞われて25年が経った。

    そのあと「もののけ姫」(98年)は、正にマンガ版ナウシカだと私は思ったものだが、それさえも宮崎駿は否定して行った。もちろん宮崎駿の暗い衝動は、鈴木プロデューサーの仕掛けで巧妙に隠されている。この本は、直近アニメとの関連は、ほとんど言及されていない。残された課題は、そこだろう。

    赤坂憲雄は、私の比較的信頼する民俗学者である。もちろん、民俗学含む人類学のバイアスがかなり掛かっていて、もう少し別の読み方も出来る余地があると私は思っている。ただし、赤坂氏も言うように「裏読み」的な読み方(隠されたメッセージを探る→マニアックな読み方)には、私も与(くみ)しない。絵も含めた物語と直に向き合う。豊穣な物語世界が、この全7巻の中にあることを改めて確認させて貰った。

    短い書評で、赤坂憲雄版「ナウシカ論」を紹介することはできない。「ナウシカ」は反黙示録である。と言っても、なんことやらさっぱりわからないでしょ?私的には、最後の巨神兵が何故あんな「変容」を遂げたのか、今回やっと言葉でなんとか説明できる気がしてきた。とっても面白かった、とだけ言っておこう。



    ※本の趣旨とは関係ない処で啓示を貰うのは、読書の喜びのひとつである。文字を持たないナウシカ的世界の中で、文字がいかに世界を支配して変えようとしたかを、「ナウシカ」はもしかしたら見事に描いていたかもしれない。日本の古代、弥生時代は、もしかしたら意識的に文字を拒否していた可能性がある。もう一度、埃を被った本棚から引っ張り出して読む必要があるだろう。

  • 面白そうと思って、購入する前にもう一度、マンガ版『風の谷のナウシカ』を読み返した。

    ナウシカを一通り読むと、考えたくなる部分が幾つも出て来る。
    筆者もそんな思いに駆られて著したのだろうか。
    ストーリーを丁寧に追いながら、墓所のクライマックスシーンの解釈は、自分の中に渦巻いていた分からなさに、一つの示唆を与えてくれた。

    あとは個人的なナウシカ感想(笑)

    王蟲とは何だったんだろう。
    幼生を贄に取られた時は攻撃色を示し、粘菌に対しての大海嘯?には青いままだったのも、不思議。
    人間が生み出したシステムとしての生き物だけれど、彼らは新人類と同じ体液の色を持ちながら、怒りも悲しみも持ち合わせている。
    ナウシカに言わせると、だからこその慈しみと友愛なのだろうけど。

    ナウシカを読んで思ったのは、墓所は未来を統べる神にはなれず、恐らく清浄な世界で満ちることもないだろうということだった。
    それでも、ナウシカが墓所を壊したことで、王蟲の培養や巨神兵といった、明らかにレベルを超えた力で、一気に滅亡するエンディングからは遠のいたのではないかと思う。

    対して私たちは、核を扱えると思っているのか。
    そして、ナウシカのように分を超えたテクノロジーを見極める目を持っていると言えるのか。

    人間が生み出した巨神兵によって、裁定されたのは皮肉にも人間自身だった。
    映画では描かれなかったオーマの成長と、クシャナさんの決断が、マンガ版ではお気に入りだ。
    ここについても別冊出してくれないかな。

    こんな風に(笑)、『ナウシカ考』を元に各々のナウシカに想いを馳せて欲しいなと思う。

  • たっぷりナウシカの世界が語られている本書。
    所々難しいなと思うところもあったけど、思っていたより読みやすかった。
    てっきり、ナウシカの世界から私たちが住んでいるこの世界の物事を考えるというようなスタイルが取られているのだと思っていたが、読んでみるとあくまでナウシカの世界がどういう世界かというのを読み解くものであり、その点もとても良かった。
    しっかりと「ナウシカの世界を考える」ことができる本。
    この本は漫画版の「風の谷のナウシカ」を読み解いていくものであり、漫画版を読んでいなければ「??」になってしまうので読む際は漫画版の「風の谷のナウシカ」必読。
    漫画版もまた読み返して考察を深めたいなと思った。
    合わせて再読もしたい。
    とても興味深い本だった。

    ーすべては 闇からうまれ 闇に帰るー

  • 今は此れを少しずつ読んでいる。多くの人にも読んで貰いたい、、、
    特に、赤坂憲雄・鷲田清一対談を。。。

    2019年度記録集発行 ライフミュージアムネット | 福島民報
    https://www.minpo.jp/news/moredetail/2020052375701

    ナウシカ考 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b482341.html

  • ナウシカのアニメではなく、漫画版の考察である。漫画版を通読したのは20年くらい前であり、事前に読み返した方が良かった。漫画版は宮崎氏が足掛け13年に渡って書き上げたもので、その間にはラピュタ、トトロ、千尋を作っている最中は中断するという長丁場だ。この本を読み、改めてこの話の奥深さを認識することとなった。母と子の視点などは、自分では考えたことも無かったので、良かった。人間社会と環境問題を宮崎氏独特の世界観を持って書き上げたこの漫画は、漫画の最高傑作のひとつであろう。昨今世界的に環境問題が大きくクローズアップされている。願わくばジブリでもネットフリックスでもどこでも良いので、全編が原作通りに映像化されますように。

  • 「風の谷のナウシカ」を読み返さずにこの本を読んだので大丈夫かと思っていたが,かなり丁寧に引用してくれていたので思い出しながら読めて分かりやすかった.アニメ版との対比,他の宮崎駿作品との関連性など詳細に分析し,色々考えさせられることの多いナウシカを綺麗に整理整頓してくれた.最後のドストエフスキーが出てきたのにはびっくりしたが,これだけが,ちょっと分かりずらかった.とにかくまた漫画を読み返してみようと思う.

  • マンガ版「風の谷のナウシカ」を読み解く一冊。自分もこれまでに読破した3回のうち2回は熱を出してる重い問を投げかけてくるマンガ。この本の著者も25年の歳月をかけて本の形にした。
    宮崎駿がナウシカをどのように描き上げていき、ナウシカたちが作者の宮崎駿の手を離れ勝手に動き始めていったかがうっすらと見えてくるような気になった。もう一度漫画版を読まねばという衝動に駆られるが、生半可な気合では手をつけられないのもマンガ版風の谷のナウシカ。

  • 「マンガという表現の可能性を信じている」という締めくくりに共感。赤坂氏の論考もさることながら、そもそも宮崎駿のこのマンガに込めた思想がすごかったのだとあらためて。

  • 漫画版風の谷のナウシカの読本。

    アニメ版と漫画版ではまったく別のものであることは広く知られているとは思いますが、この本を読む前に改めて漫画版を読み、この本を読み切り、ナウシカという世界が複雑で示唆に富む内容であったことを知りました。

    いろいろな知識を持っていない私は理解していない部分も多々あり、まだまだ漫画版とこの本を読みかえしていく必要があると感じます。

    風の谷のナウシカの世界に一度は魅了されたことがある方、是非読んだ方が良いと思います。

  • 忌避から共生連帯へ149

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著者プロフィール

1953年、東京生まれ。専攻は民俗学・日本文化論。学習院大学教授。福島県立博物館館長。東京大学文学部卒業。2007年『岡本太郎の見た日本』(岩波書店)でドゥマゴ文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞(評論等部門)受賞。
『異人論序説』『排除の現象学』(ちくま学芸文庫)、『境界の発生』『東北学/忘れられた東北』『東北学/もうひとつの東北』(いずれも講談社学術文庫)、『北のはやり歌』(筑摩選書)、『岡本太郎という思想』(講談社文庫)、『ゴジラとナウシカ』(イースト・プレス)、『司馬遼太郎 東北をゆく』(人文書院)、『性食考』(岩波書店)など著書多数。

「2018年 『日本という不思議の国へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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