- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000610711
作品紹介・あらすじ
戦争は人間を傷つける-。戦争は、「正戦」や「自衛」などの名目で人間の身体を破壊し、戦火の下で苦しみ、のたうちまわる人びとの姿を捨象する。9・11事件後の暴力の連鎖。「慰安婦」にされた女性たちの経験、立憲主義と平和主義を切り捨てようとする日本政府の姿勢などを踏まえて戦争の本質を論じ、傷つきやすい身体をもつ人間の具体的な生の経験から、反暴力・反戦争の思想を紡ぎだす。
感想・レビュー・書評
-
本書は、9.11、「慰安婦」問題、憲法改正といった議論を巻き起こしてきた政治的事例を、ケアの倫理という観点から考察している。個別の現実的事例から立憲主義とは、民主主義とは、そして平和とは何かを構想してくプロセスはスリリングで面白く、また、私たちがこうした政治問題をいかに表面的にしか見ていないかを露呈させる。個別具体的で文脈依存的だとされてきたケアの倫理は、現実の社会や政治の変革に対してどのように接続できるのだろうかと常々疑問に思ってきたが、本書を読めばケアの倫理という考え方は今日のグローバルな政治に対して極めて痛烈なカウンターになり得るものであることが理解できるはずだ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
烏兎の庭 第五部 書評 1.31.16
http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto05/bunsho/okano.html -
ホッブスによれば、人間は競争心から人を支配したいがために、暴力に訴え、またそうした人間に囲まれている恐怖心から安全を確保するために、暴力に訴え、さらには自らの評判を落とすような言葉や嘲笑を避けるために暴力に訴える。そして実際の戦闘行為が行われなくても、そうした状況に取り囲まれているとの不安に襲われているのであれば、すでに戦争状態である。