アフター・ヨーロッパ――ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000612869

感想・レビュー・書評

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  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001131306

  • 読みたいで登録してから3年以上経てやっと読みました。
    少し前のヨーロッパを出来事を丁寧に分析している。
    タイトルが「アフターヨーロッパ」なのだから、もう少し、先を予測した話をしてくれてもいいのに。
    こじれた状況をこじれたまま筆を置いた感じ。

  • 難民の流入や格差の拡大で揺れるEUだが、それはアメリカも含め世界的な流れである。
    ポピュリズムという言葉が世界を駆け巡り、ヨーロッパ各地で極右的な政党が勢力を伸ばしているが、ギリシャ危機やBrexitなど様々な事態を迎えて、EUはどこに向かっていくのだろうか。
    民主主義を突き進めていくと、強権的なリーダーを求めていくジレンマ。
    ある意味理想的な国家の形は、もしかしたら中国なのかも知れないと思えてくる。

  • ブルガリア出身の政治学者による欧州社会の現状に対する考察。

    頁数は訳者あとがき含めて130頁ほどだが、内容は濃い。

    欧州共産圏崩壊により、Fフクヤマは「歴史の終わり」と言ったが、EUというより広範囲な後ろ盾があるために、「国」という縛りが希薄になり、地域エゴが先鋭化した。

    日本にいると実感しづらいが、アフリカ難民/移民流入の影響は非常に大きいのだろう。
    EU諸国の国境撤廃の流れを、正反対の国境封鎖の流れに変えてしまった。

    エリート層は国籍に関係なくどの国でも同じようなポストを得られるが故に祖国に対する忠誠心が薄れ、移動の自由度が低い一般層とエリート層との二層分離が進む。
    特に中欧ではエリート層・若年層が国外に抜け、人口が減少すると同時に、政府には統治能力よりも国民への忠誠心を求めるようになる。

    結局、二度の欧州大戦の反省から誕生したEUとは多分に統一理念に基づく政策実験だったが、理念が先行してしまった故に、大戦の直接の記憶がなくなる中で、「エントロピー増大の法則」にやられつつあるということだろうか。

    複数の国民投票の例に見られるように、民主主義を純粋に追及すると衆愚政に行き着く。
    経済統合と国家主権、民主主義の三つが同時に成立しないというトリレンマを前提に、三方一両損的現実的な方向に物事を進める知恵をEUが持つか。

  • ハプスブルク帝国の分裂にトラウマがある。ポピュリズムによるEU危機はその再現か?

  • 気になったとこ。

    人々かリーダーに対する信頼を深めるのは、能力。勇気、献身のためではない。彼らが危機の時に最も近い非常出口に駆け込むのではなく、むしろ自分達を、本気になって助けてくれるだろうと感じるから。人々に彼らを疑わせるのは、移動可能な能力。問題かま生じた時にその国に留まるコストを自分たちと共有するかわりに、その国を離れるという選択をすることを恐れる。土地所有の貴族達はその国を離れる権限を持っていない
    ポピュリズムの魅力の中心は忠誠心、つまり民族、宗教、あるいは社会集団への無条件の忠誠心である。

  • 60(全126)ページまでで図書館に返却。▼グローバリゼーション。旅行者はお金を使い、笑顔をばらまき、称賛し、かつ出国する。難民は世界の悲惨さと困難に直面して途方に暮れる。我々の間にいるが、我々の仲間ではない。旅行者をひきつけ難民を排除することが欧州が望む世界秩序の縮図である。▼欧州のポピュリズムは、リベラルなエリートの偽善に対する反乱である。難民危機は、冷戦後のパラダイムが無益であることを露呈した。▼地球の人口の97%に当たる60億人以上が、出生という抽選によって、終身会員の資格を割り当てられ、それを維持することを選択するか強いられる。この生特権抽選こそが、リベラル政治の主要な約束に異を唱え、グローバルな問題における移動の中心的な役割を明らかにする。▼人々は自分の生活を、もはやめったに隣人とは比べない。彼らは自分の生活を地球上の最も裕福な住民と比較する。▼国境が解放されたEUでは、中東欧からの人口の流出が止まらない。難民だけが問題なのではない。またロマ人の問題。▼東西を分断するのは、世界主義的なものの見方に対する、中央に深く根付いた不信である。

  •  この数年来、あきらかに不安定になった欧州のその背景を読み解こうとする一冊である。ほとんどあらゆるところで対立構造に終始している欧州社会を、移民、民主主義、国民といった目に見えるところを切り口に読み解いていく。「国民投票」の功罪を語るところに筆者の熱意を感じ取ることができる。
     だが、読み通してみて、ここに課題として並べられたものに対して、本書の中で答えが得られるわけではないし、またその方向性についても残念ながらまとまってはいない。現在進行形の中間報告というところだろう。
     それでも、欧州の何かに経済的価値を追い求めようとする立場にあっては、考えるヒントを与えてくれるものである。

  • 日経新聞2018113掲載
    BRUTUS202111合本掲載 評者:田野大輔(社会学、歴史学)

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著者プロフィール

1965年生。ブルガリア出身。ソフィア大学卒。ヨーロッパとデモクラシーを研究する政治学者。ソフィアの「リベラル戦略センター」理事長、ウィーンの「人間科学研究所」常任フェロー。『ニューヨーク・タイムズ』に定期的に寄稿。TEDtalkにも登場。著書に、『アフター・ヨーロッパ――ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか』(岩波書店、2018年)など。

「2021年 『模倣の罠――自由主義の没落』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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