オフェリアと影の一座 (大型絵本)

  • 岩波書店
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001106046

感想・レビュー・書評

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  • 何故エンデの作品には大人のファンが多いのか、これを読むとよく分かる。
    一番好きと公言される方も多く、人生の指針にしているという方も。

    1988年の作品だから、エンデはこの時59歳。
    最初の奥様が亡くなった後の一作目かと思うと、生と死、光と影というモチーフも一層意味が深く感じられる。

    お話の主人公は「オフェリア」というおばあさん。
    両親に役者の花形になることを望まれて付けられた名前だが、残念なことに声が小さ過ぎて夢は叶わず。適性を生かせたのが、役者のカンペ役。
    観客に見えない・聞こえない場所で小声でセリフを囁いてあげるというものだ。
    一生の仕事に打ち込んで幸せだったが、時は流れて劇場も閉じることになる。
    お払い箱になったオフェリアの前に現れたのは・・

    光を浴びる人生など、ほんの一握り。
    おおかたの人は光ある人生を夢見ては諦め、自分なりの小さな幸せを繋いで生きていく。
    光は誇らしく、影は疎ましいもの。
    だがオフェリアは違っていた。
    誰にも望まれない影を引き受け、決して拒まず、気負わず柔軟に生きた。
    影と共に、どころか、影に生命を与えることさえした。
    それは、思い描いていた光ある人生ではなかったかもしれない。
    それでも、いつも精一杯生きた。
    死の影さえも、そうして優しく迎え入れたのだ。

    最後にたどり着くのが光降り注ぐ輝く場所というのも、亡くなった奥様への追悼だろうか。
    そんなことを思うと涙が止まらなくなる。
    エンデ自身も若い頃は演劇学校に学び、舞台にたったこともあるという。
    光と影とを、その身体でじゅうぶん感じ取っていたことだろう。

    初めて読んだ日から20年以上、私の中にオフェリアが住み続けている。
    絵にするのはさぞかし難しいだろうと思われる話だが、ヘッヘルマンが見事に再現している。幻想的かつ神秘的な、深い深いお話。
    自分という役を必死で演じていると、いつの間にか大切なセリフを忘れてしまう。
    私の影も「それは違う、こうよ」と優しく囁いてくれているのかもしれない。

  • 思っていた以上に物語がとても良かった、、絵も然り。良かった…良かったな…これいいな!
    時間を置いてもなおじわじわと来て、何度も読み返してしまいました。

    読み終えてから、
    “苦しみや悲しみを沢山経験することで心の襞が増え豊かな人生になるんだよ”と母が以前言っていたことを、ふと思い出しました。

    オフェリアさんも、押し寄せる無数の影達を心良く受け入れ、影とともに生きることで影が思いもよらない光を生みました。まさにこういうことなんだろうな、、、と感じました。


    最初から最後まで、惹き込まれる作品!
    そして見事、抜け出せない症候群に。


    とても◎◎◎!


    ※ オフィリアさんは、いろんな行き場のない彷徨う影を自分の影として受け入れていくのですが、その影にも一人一人名前があります。
    その名前にはちゃんと理由があり、それが物語の一つの要でもあると思うので、くれぐれもお見逃しなく!

    • nejidonさん
      胡桃さん、こんばんは(^^♪
      うわぁ、嬉しいなぁ。私も大好きな作品です。
      エンデというと「モモ」の出番が多いのですが、こういう作品もある...
      胡桃さん、こんばんは(^^♪
      うわぁ、嬉しいなぁ。私も大好きな作品です。
      エンデというと「モモ」の出番が多いのですが、こういう作品もあるんですよね。
      オフェリアさん、素敵でしょ?
      何だかすごく身近に感じて、どんどん好きになってしまいます。
      実はエンデの別の作品を読む予定でしたが、とりあえずこちらを再読しようっと♪
      とてもワクワクしました。ありがとうございます!
      2020/12/16
    • 胡桃さん
      nejidonさん、こんばんは(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

      またまたこんなに素敵な絵本に出会えるなんて、nejidonさんの本棚は宝物がつまった宝石...
      nejidonさん、こんばんは(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

      またまたこんなに素敵な絵本に出会えるなんて、nejidonさんの本棚は宝物がつまった宝石箱みたいです(*⁰▿⁰*)

      私も大好きになりました。絵本も描いていたなんて…知らなかったぁ。
      はいもぅオフェリアさん素敵すぎて4回もつづけて読み返してしまうほど(>_<)
      全集中しました。笑

      私こそ、ワクワクをありがとうごさいました~! nejidonさんエンデを読まれる予定だったのですね~^^
      私はまだモモしか読んだことがなく、、この絵本を機にエンデ作品に火がついたので、読みかけの”はてしない物語”を読み直そうかなぁと思います(^^)♪

      読みたい本が増えすぎて幸せパンクおこしちゃいそうです。笑

      いつもありがとうございます♪
      2020/12/16
  • ミヒャエル・エンデの絵本!絶対面白い!と飛びついた。
    ……………すごくすごく良かったです。

    小さな街の小さな劇場。
    そこで生まれ育ち、世界中の悲喜劇をすっかり覚えており、ものすごく声が小さいせいで有名女優にこそなれなかったものの、劇場の縁の下の力持ちとして活躍してきたオフェリアおばあちゃん。
    しかし劇場はなくなってしまい…劇場にさいごまでとどまって思い出に耽っていたオフェリアさんは、そこで誰のものでもない影と出逢います。
    影たちのあいだで自分を引き取ってくれるひとがいるという噂が広がり、たくさんの影たちがオフェリアさんの元へ。そしてそして…?

    …と軽くあらすじを書いてみましたが、当然ながら本文を読んだ方が圧倒的に面白い。
    ユーモアをふんだんにつかった語り口が愛おしくてたまらない。
    物語の展開も常にどきどきわくわく。
    とある「影」との出会いでは少しヒヤヒヤ。
    どうなることかと思ったら意外でなんと素敵な結末!
    素敵なだけじゃなく、なんだか胸に沁みるんです…
    繊細な絵もとっても素敵で雰囲気バツグンなので、大人にもぜひ読んでほしい絵本。

  • 舞台の大女優になる夢が叶わなかった<オフェリア>が、年老いて、舞台に浮かぶ影法師(幻影)たちと仲良くなって、有名な舞台劇の台詞を教えて立ち上げた「オフェリアと影の一座」の幻想物語。 影たちを引き連れて世界中を駆け巡るオフェリア、その前に立ちはだかった影は「死」・・・「どうぞ、いらっしゃい」とオフェリアが声をかけると、天国の門が開いて宮殿のような劇場に案内されるのでした。そこには輝くばかりに美しい人々が「わたしたちは、貴女に拾ってもらった解き放たれた影たちです」と言って出迎えてくれるのでした。

  • エンデ絵本。文章の分量が多く(^^;;、ちょっとよくわからない作品もあつたりするのですが、これはすごく好みです♥︎ 女優になれなかったオフェリアさん。受け容れる人生の美しさ。ファージョン『マローおばさん』を思い出しました。エンデ作品にぴったりの絵だと好みなのかも。ヘッヘルマンさんの絵が素晴らしいです。『影の縫製機』『ゆめくい小人』に並ぶ、大好きなエンデ絵本になりました。

  • ミヒャエル・エンデの絵本、初めて!

    淋しくて、孤独を受け入れる優しさがあたたかくて、美しい。

    一旦落としておいて更に盛り上げるなんて流石でにやにやしてしまったよ!笑

  • 影があらゆる不自由さにみえる。それらをゆっくりと、でも確実に最後まで受け入れていくオフェリアは、きっと老いの達人。

  • 大人向けのお話会にて出会いました。
    恐らくパラパラめくったことはある気がするのですが、やはり人の声で聞くっていいなと思いました。

    絵本は1人でも読めますが、誰かに読んでもらうことで、耳で物語を理解しながら絵を鑑賞できます。とても美しいお話と絵でした。語りもとても素敵でした。

    絶版で手に入らない絵本だそうです。

  • >劇場の舞台のかげでプロンプターの仕事に一生をささげたオフェリアさんは、ふとしたことから影たちをひきつれて巡業に出かけます。
    なにしろ古今東西の名作のセリフは、お手のもの。
    幻想的な美しい絵本。

    絵本だけど、素敵な映画を一本観終わったような感じ。とてもよかったです。
    小さなおばあさんオフェリアさんはたくさんの影を拾ってあげますが、彼女自身も影を世話することで孤独が癒され新たな生きがいができたのだろうと思いました。
    後半、死の影と出会うところはドキッとしたけれど、静かで穏やかなラストには温かい気持ちになりました。

    エンデの『モモ』と『はてしない物語』は中学生の頃に読んで以来、本棚に並んでいる大切な本ですが、絵本も素晴らしかったです。
    絵本作品はほとんど読んでいないので、これから少しずつチェックしていきたいと思います。

  • 誰かを影で支える人生。
    はじめはちょっと切なくなりましたが。
    おしまいには,こんな人生も悪くないとおもえました。
    絵も温かで美しくとても好きです

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