- Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003252956
感想・レビュー・書評
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尊敬する鹿島茂・小林信彦がそろって推すバルザック。面白いという折り紙付きの「従妹ベット」岩波文庫版上巻を借りてくる。旧漢字・旧仮名遣いに歯が立たない。
別の図書館までゆき、これなら読めそうだと河出世界文学大系23巻を借りてくる。帰宅してからよく見れば、訳者は同じ水野亮ではないか。それでも新仮名遣いになった分、読みやすい。
河出版の書影が見つからない。半分ほど読んだところで岩波の上巻を読んだことにする。
追記:筒井康隆短篇「耽読者の家」の中の台詞「バルザックは『人間喜劇』の中の『ゴリオ爺さん』が有名なんだけど、ぼくは今読んでる『従妹ベット』の方があれより面白いし、傑作だと思う」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
体調優れず小説でも読んで養生…と思ったらあまりに強烈でウトウトできず。登場人物が男も女も怪物揃い、互いを喰いあう愛憎劇の陳腐スレスレの物凄さに仰天。岩波文庫の旧仮名も凄みの一因か。名訳なので古書を探す価値あり。
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とにかく読むのが辛い話だ。
こんなに人間の嫌らしさをリアルに描かれると、
共感してしまうことが辛くなる。
ベットは簡単に言うと嫌な女なのかもしれない。
けれど、ずっと周囲から向けられる優越感に傷付いてきている。
自身の中では当然のことが周囲には奇異に見える。
なんて嫌な世間なのだろう…そしてその結末の嫌らしさも。 -
副題「貧しき縁者」。親戚同士に著しい貧富の差がある場合、どのような人間関係が営まれるのかに焦点をあてた作品で『従兄ポンス』と対になっている。
この作品はとかく登場人物のキャラクターが強烈。立派な人物だけど救いようのない女好きのユロ男爵、貞操この上ないが不幸な男爵夫人、典型的ブルジョワのクルヴェル、憎しみにとらわれた策謀家のベット、悪女の権化のごときヴァレリーと数え上げたらキリがない。
その中で話の中心となるのはやはりユロ男爵で、彼を中心に巻き起こる事件が主軸。特に物語後半のユロ一家の破滅への真っ逆さまの転落模様は壮絶。そして悪にはそれなりの報いがありユロ一家は再生してめでたしめでたし・・・で終わるかと思いきや、そうでないエンディングも衝撃的。なにもそこまでせんでも(笑)
キャラクター、話の筋、ともに優れており間違いなく魅力的な作品。だが、欠点としては作者のバルザックの饒舌っぷりか。この作品自体、当時のパリの風俗観察・研究の成果といえるようなものであるゆえに、当時のパリに対する見解やら描写がやたらと多く、薀蓄に阻まれてなかなか話の筋が進まないことにイライラするかも。何といっても、上巻280ページまでは前振りにすぎないってんだから、饒舌にすぎると言っても間違いなかろうよ。
しかし序盤の退屈を乗り切れば、これほど面白い小説もなかなかないと思われる。オススメ。