代表的日本人 (岩波文庫 青 119-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003311936

感想・レビュー・書評

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  • 戦後の日本人が西洋文化の潮流に揉まれていく中で日本人を伝えようとした書籍に興味があり、著名者のこの本を手に取ってみた。基本的な仏教の考え方と歴史を把握していないと少し難しいかもしれないと私が感じた時点で、何も知らない外国人が読んでも何かを多く感じることはできないだろうと感じた。それは戦後の否定的な文化統制や自国強制に反発するヒステリックな一面にも見えた。鈴木大拙みたいな展開を期待してしまっていた。

  • 2018.3.24

  •  内村鑑三が西洋人に向けて、過去の偉人たちを紹介する本。新渡戸稲造『武士道』、岡倉天心『茶の本』と同様に、英語で日本の文化を伝えた本であり、この本で紹介される人物は一般的に人格者と言われる人たちである。また、西洋の人たちに伝えるという意図もあってか、いずれの人物の説明においても、キリスト教と関連させて説明する。そうすることで、日本人にもキリスト教徒にも負けないくらい、倫理的に立派な人物が、日本にもいたことを知らしめようとした。

  • 日本の歴史的名著の一つ。日本を代表する5人の偉人について、若干の著者の解釈や西洋との比較を交えながら描かれている。強い志や人間としての徳を持った人が歴史上で成し遂げてきたことを知ることができ、また、どんな考え方をしてどのように実行してきたかを知ることができ、勉強にもなる。その中には、事をなす前にまずは徳を持つことの大切さ、人に尽くす、世の中のために尽くすという信念を持って成し遂げてきた経緯を読むことができることから、弱い自分の心の戒めとして何度も読み返す価値のある本だと思った。

    二宮尊徳の、最初に道徳があり、事業はその後にあるのである、後者を前者に先立ててはならない、という言葉は印象的であった。また、上杉鷹山の変革は、人の心や行動を改めて藩を立て直していったこと、医療や教育などさまざまな取り組みを行っていたこと、それを19歳に藩主となって若くして成し遂げていったことに強く尊敬を持つ。

  • 内村鑑三先生が5人の代表的日本人を題材に日本人の道徳観を説いた本。外国人向けに日本の思想を紹介した内容であり、偏ったバイアスがないのが良く、日本人が客観的に日本を学ぶのに優れた本である。

    以下、中江藤樹より備忘しておきたい一文。
    ・“学者”とは、徳によって与えられる名であって、学識によるものではない。学識は学才であって、生まれつきその才能をもつ人が、学者になることは困難ではない。しかし、いかに学識に秀でていても、徳を欠くなら学者ではない。学識があるだけではただの人である。無学の人でも徳を具えた人は、ただの人ではない。学識はないが学者である。

  • 新渡戸稲造 「武士道」、岡倉天心 「茶の本」と並ぶ、内村鑑三の、「代表的日本人」
    その特徴は、欧米人に向けに、外国語でかかれたものを、和訳したものを改めて出版したものである。
    「代表的日本人」は、日清戦争中に、Japan and the Japanese の題で、公刊された書物の再販です。

    5名の特徴は、いずれも、貧乏な家庭に生まれ育ち、そこで、人から非難や抵抗をうけて、苦労して大成をなし、人をまとめ上げて和となし、死んでは聖人として称えられる。名や財を求めず、清貧にあるものを、内村鑑三は、代表的日本人と呼んだ。

    それぞれ、気になったのは、以下です。

    ■西郷隆盛
    ・動作ののろいおとなしい少年であった西郷を変えたのは、縁戚の武士が自らの前で腹を切り、「命というものは、君と国とに捧げなければならない」を語ったこと。それを彼は生涯わすれることはありませんでした。
    ・西郷に影響を与えた人物、それは、藩主の斉彬と、水戸藩の藤田東湖先生の2人であった。
    ・機会を作るのも、それを用いるのも、人である。
    ・西郷とは不思議な人で、ヨーロッパ文化というものにまったくの無関心でした。彼の度量が広く、進歩的な人物の教育はすべて東洋によっていました。
    ・物事は、一度動き始め、進路さえきまれば、あとは比較的簡単な仕事である。その最初の指導者が西郷隆盛であった。
    ・西郷と勝、旧友がいう、我々が一戦を交えると、江戸の罪のない人々が苦しむこととなる。西郷の情が動き、江戸は救われた。
    ・強い人は、弱い人が相手でないとき、もっとも強い。西郷の強さの奥には、女性的な優しさがありました。
    ・彼が掲げた「敬天愛人」とは、「天はあらゆる人を同一に愛する。ゆえに、我々も自分を愛するように人を愛さなければならない。」ということです。

    ■上杉鷹山
    ・変革とは他人を待つのではなく、まず自らが始めなければなりません。
    ・鷹山の倹約はけちではありません。施して浪費するなかれ、
    ・東洋思想の一つの美点は、経済と道徳を分けない考え方にあります。富は常に徳の結果であり、両者は木と実との相互の関係と同じです。
    ・鷹山の優れたことは、改革の全体を通じて、家臣を有徳の人へ育てようとしたことである。

    ■二宮尊徳
    ・仁術さえ施せば、この貧しい人々に平和で豊かな暮らしを取り戻すことができる
    ・信念:ただ魂のみ至誠であれば、よく天地をも動かす
    ・利己心はけだもののものだ。利己的な人間はけだものの仲間である。村人に感化を及ぼそうとするなら、自分自身と自分のもの一切を村に与えるしかない。
    ・尊徳にとって、あくどい手段で獲得した財産は本当の財産ではありませんでした。

    ■中江藤樹
    ・天子から庶民にいたるまで、人の第一の目的とすべきは、生活を正すことにある
    ・藤樹の理想とは、謙譲に徹することでした。仏陀はそれにかなう人ではなかったのです。
    ・藤樹は、弟子の徳と人格とを非常に重んじ、学問と知識を著しく軽んじました。
     学者というのは、徳によって与えられる名であって、学識によるものではない。
     学識は学才であって、生まれつきその才能を持つ人が、学者になることは困難ではない
     しかし、いかに、学識に秀でていても、徳を欠くなら学者ではない
     学識があるだけではただの人である
     無学の人でも徳を備えた人は、ただの人ではない
     学識はないが学者である
    ・先生は利益をあげることだけが人生の目的ではない。それは、正直で、正しい道、人の道に従うことである。とおっしゃいます
    ・藤樹によって謙譲の徳とは、そこから他の一切の道徳が生じる基本的な道徳でした。これを欠けば一切を欠くにひとしくなります

    ■日蓮上人
    ・すでに「末法」が世に到来していること、新しい世をもたらすためには、新しい信仰が必要であり、その機会が到来していることを深く確信しました。
    ・預言者故郷にいれられず、といわれます
    ・私はとるにたらぬ、一介の僧侶であります。しかし、法華経の弘布者としては釈尊の特使であります。それゆえ梵天は我が右に、帝釈天は我が左に合って私を守り、日天は私の先導となり、月天は、私にしたがいます。我が国の神々はすべて頭をたれて私を敬います。
    ・日蓮の大望は同時代の世界全体を視野に収めていました。仏教はそれまでインドから日本に東に進んできましたが、日蓮以後は、日本からインドへ西に向かって進むと日蓮はいっています。
    ・闘争好きを除いた日蓮、これが私どもの理想とする宗教家であります。

    目次
    凡例
    はじめに

    1 西郷隆盛 新日本の創始者
    2 上杉鷹山 封建領主
    3 二宮尊徳 農民聖者
    4 中江藤樹 村の先生
    5 日蓮上人 仏僧

    ISBN:9784003311936
    出版社:岩波書店
    判型:文庫
    ページ数:256ページ
    定価:780円(本体)
    発売日:1995年07月17日第1刷
    発売日:2021年05月27日第46刷

  • 今回3回目くらいかと思うが、本棚への登録がなかったので、また再読した。

    内村鑑三さんは、民衆の心をつかんで、民衆のために尽くした人をセレクトしているように思う。日本人には、こんな立派な人物がいるのだと、誇らしげに伝えようとしている。

    ここに選ばれた、西郷隆盛、上杉鷹山、中江藤樹、二宮尊徳、日蓮の5人は、内村鑑三さんの心底惚れぬいた人物、心底尊敬している人物であることが、文面から強く伝わってくる。

  • 5人のうち、気になる所から読んでみてもいいかもしれません。
    私が1番印象に残ったのは、二宮尊徳。正直二宮金次郎像のイメージしかなかった私ですが、この本で彼の精神や生き方を学び、像への見方が変わりました。笑

  • 図書館で借りた。
    日本人が海外に向けて日本人を記した本。ドイツではこれにより日本学が発展したとか。「代表的日本人」として、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人を取り上げている。それぞれの人となりを描き、「こういうものが日本人である」という本。
    価値観や徳などの”日本人的感覚”が記されている。著者の思いも強いが、5人の伝記モノとしても興味深く読める。
    日本人が書いた外国語の本を、日本人が日本語訳されたもの、という特殊な位置にあるので、元の英文がどうかは分からない。尚、英題は "Representative Men of Japan."
    100年以上前とは言え、当然ながら自然な日本語である。言いたいことは伝わってくる。逆に、「この文章、どこまで当時の外国人に伝わっているのかなぁ?」というのは都度思う。

  • 新渡戸稲造の「武士道」、岡倉天心の「茶の本」と並ぶ内村鑑三が書いた、日本の文化や人物を西欧に紹介する著書。内村鑑三が書いた

    西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人について描かれている。

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著者プロフィール

1861年生まれ、1930年没。思想家。父は高崎藩士。札幌農学校卒業後、農商務省等を経て米国へ留学。帰国後の明治23年(1890)第一高等中学校嘱託教員となる。24年教育勅語奉戴式で拝礼を拒んだ行為が不敬事件として非難され退職。以後著述を中心に活動した。33年『聖書之研究』を創刊し、聖書研究を柱に既存の教派によらない無教会主義を唱える。日露戦争時には非戦論を主張した。主な著作は『代表的日本人』、『余は如何にして基督信徒となりし乎』など。
佐藤優
作家、元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。現在は、執筆活動に取り組む。著書に『国家の罠』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。おもな著書に『国家論』(NHKブックス)、『私のマルクス』(文藝春秋)、『世界史の極意』『大国の掟』『国語ゼミ』(NHK出版新書)など。『十五の夏』(幻冬舎)で梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。ほかにも著書多数。

「2021年 『人生、何を成したかよりどう生きるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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