北斎 富嶽三十六景 (岩波文庫 青 581-1)

制作 : 日野原 健司 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003358115

作品紹介・あらすじ

富士を描いた葛飾北斎(1760─1849)の浮世絵版画の代表作。輪郭線が藍摺りの36図に続いて、輪郭線が墨摺りの10図(通称、裏富士)が加えられ、計46図からなる。遠近法や陰影法の西洋の画法を取入れた奇抜な構図が一大人気を呼んだばかりか、ヨーロッパの芸術家達にも多大な影響を与えた。各画に、鑑賞の手引となる解説を付した。〔カラー版〕

感想・レビュー・書評

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  • 「どうだ、面白ぇか。え、こっちはどうだ」と、北斎の娘、葛飾応為を描いた朝井まかてさんがこの三十六景の北斎の「企み」を説明していた(「図書2019年6月号」)。「これは活き活きと自由に虚構を用いた、壮大な物語なのではないか」。私も今回初めて全ての作品を一覧してまかてさんの説に同意する。

    例えば「深川万年橋下」。大勢の人々が行き交う万年橋を真正面に捉え、その先に隅田川、対岸には武家屋敷、橋の下のに富士山を置く。けれども、実際には橋の下の富士山を眺めるのは角度的に無理なのだ。構図的には、透視図法で両岸を描き、画面いっぱいに弧を描く万年橋。しかも中央に富士山を配置せずに、やや左にずらして、しばらく絵を眺めさせて発見させる。技巧を凝らし嘘をつき、何かの「夢」を見させる。見事である。「東海道吉田」の富士見茶屋の富士山も、あんなに見事には見えないらしい。承知で描いているのである。

    「三十六景」と言えば、「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」ばかりが表に出てくるが、やはり「観た」というならばひと通り観なくては、北斎のたくらみには乗れない。文庫本は小さいし、真ん中で改貢のために絵が切れてしまうし、色も正確とは限らない。でも、ホンモノを全部実際に観るのは、現代日本では夢物語なのだから、私はこの夏ゆっくりと手元に持って愛でて、日本美術の教養を堪能した。

  • 刊行記念「富嶽三十六景」人気投票
    https://www.iwanami.co.jp/fugaku36/

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    富士を描いた葛飾北斎(1760─1849)の浮世絵版画の代表作.輪郭線が藍摺りの36図に続いて,輪郭線が墨摺りの10図(通称,裏富士)が加えられ,計46図からなる.遠近法や陰影法の西洋の画法を取入れた奇抜な構図が一大人気を呼んだばかりか,ヨーロッパの芸術家達にも多大な影響を与えた.各画に,鑑賞の手引となる解説を付した.〔カラー版〕
    https://www.iwanami.co.jp/book/b431810.html

  • もっと高いところからじゃないとこの構図にはならないでしょ、とか、この角度からはこうはならないでしょ、とかもあって、北斎は効果を狙っていたということだけれど、たぶん北斎は心のドローンで見ていたのね。

    今回は「駿州江尻」が印象に残りました。
    この風! 確かに画の中を風が吹いている!

  • 富嶽三十六景(46個ある)を学芸員である筆者が一つずつ解説してくれる美術本。
    三大役物と呼ばれる「神奈川沖波裏」「凱風快晴」「山下白雨」はやっぱり別格すなぁ。北斎好きなので色々と満足。

    絵画としての面白さのために、現実にはあり得ない構図/場面を描くのも北斎の外連味が為せる技だね。さすが画狂人…。
    つか「北斎ブルー」と呼ばれるものが「プルシアンブルー」なわけだけど、スタートはヨーロッパだったんだな。それが印象派にウケたのは、なんというか逆輸入感あるかも。

    三大役物以外だと「甲州三坂水面」「東海道品川御殿山ノ不二」「甲州伊沢暁」あたりがお気に入り。「すやり霞」とか知らんかったし、技法的な部分にも興味出てきたなぁ。

    本の形態上しょうがないけど、見開きの間の部分がちょい見にくいなー。ある意味こういうのは電子の方が良い…のか?(発色の問題があるかもだけど)

  • 葛飾北斎 富嶽三十六景

    すべての絵がカラー印刷で解説付き。素晴らしい。さすが 岩波文庫 


    メトロポリタン美術館の使用図が多いのは、日本の所蔵品よりメトロポリタン美術館の方が 早摺りで保存状態がいいということか? だとしたら残念。北斎の最上品は日本にあるべきと思うが。


    富嶽三十六景が 46点あることを初めて知った。発刊当時 好評だったので 続編「裏富士」として10点追加したらしい。46点目の「諸人登山」は 遠くから富士山を描くのでなく、富士山を登っている場所を描いている。描き納めな感じがして洒落がきいている


    有名な「凱風快晴」「神奈川沖浪裏」「山下白雨」は、風景画というより宗教画に近い迫力がある。ぼかし、グラデーション、青色の鮮やかさが 富士山の存在感や立体感を際立たせている。藍染の青色と思ったら、プルシアンブルーという輸入合成顔料らしい


    旅人や人足の着物のヨレ感や着崩れ感もよく出てる

  • 富嶽三十六景は有名であるが実際に全作鑑賞した人は少ないかと。

    どちらかというと太宰の短編小説の題名り葛飾北斎の名作を解説、入手しやすい文庫なのが良い。逆に各作品、真ん中が分断されてしまうのが難点。大判か電子書籍の方でじっくり鑑賞したい。

    実際には46枚あるんですね。

  • <目次>
    省略

    <内容>
    葛飾北斎の「富嶽三十六景」の解説文庫本。人気があったため実際は46枚の作品がだされたものだが、すべてをカラー刷りで紹介し、次の2ページで解説をしている体裁。どの解説書でもそうなんだろうが、北斎が描いた場所を特定しようとするのは、無意味な気がする。


    逗子市立図書館

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/720670

  • 文庫版ながら、見開きに版画、次に解説。おすすめ。

  • 葛飾北斎『富嶽三十六景』の図説。版画は状態の良い初摺りをカラー掲載している。ただ、見開きとなっており中心の切れ目が残念。解説では後摺りでの色彩の違いを記載しており、欲を言えば後摺りも見てみたかった。驚いたのは三十六景と言われながら四十六景あること。当時からの人気が伺える本作は、北斎が実際の景色よりも構図の面白さを追求したということで、目論み通り鑑賞している側に大きなインパクトを与え、そして時代や国を超えて人々の心を掴む名作となった。風・波・雲など捉え所のないものや、朝焼けと夕焼けの微妙な違いや、人物・植物・動物の個性を写しとるその描写力・表現力は卓越しており、鋭い観察力を感じる。いくら眺めても見飽きない作品だ。

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