インターネット (岩波新書 新赤版 416)

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  • / ISBN・EAN: 9784004304166

感想・レビュー・書評

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  • インターネットは世界中をつなぐ大規模なネットワークである。

  • [「もはや空気」の基盤とは]もはや日常生活に欠かすことのできない社会的・世界的インフラとなったインターネット。もはやその存在がなかった頃が想像できない程の普及を誇っていますが、意外と知られていないそのインターネットの基礎的知識やそれを支えている哲学を紹介していく作品です。著者は、自身も日本におけるインターネットの普及に一役も二役も買われた工学博士の村井純。


    よく目にするし耳にするけどなかなか人に聞きづらいインターネット用語や、どうやってその世界が成り立っているかが明確にわかり非常にgood。白眉はインターネットがどういう哲学に基づいて成り立ってきたかという箇所。意外と適当、もっと言ってしまえば「間に合わせ」の必要性をしっかりと認識していたからこそ、ここまで急速に広がったというのは最先端のテクノロジーとその普及の関係性を考える上で非常に参考になると思います。


    初版が1995年なのですが、今日のインターネットの発展ぶりを、村井氏のような専門家でさえ当時は想像していなかったのではないかとうかがわれます。そう考えると技術の急速な進歩に改めて驚かされずにはいられません。と同時に、その急速な進歩を見事に生活の中に取り入れてきた人間の適応力や柔軟性の高さに感心するばかりです。今の仕事もインターネットがない頃にどうやってやってたんだろうと思わずにはいられないですし。


    〜インターネットのテクノロジーが発展していくときに重要なのは、そのテクノロジーの発展と、それを利用していく人間社会が遊離しないようにすることだと思います。〜

    往時の考え方がわかって面白かったという不思議な一冊でした☆5つ

  • 今読んでも、すごく新鮮!
    おすすめ。

  • インターネットとは、
    「世界中のすべてのコンピュータをつなぐ
    コンピュータ・ネットワーク」

    「われわれは、プレジデントも、チェアーマンも、
    キングもいらない。われわれは、それを根拠に動いてはいない。
    われわれが信用しているのは、
    動いてるコードとラフ・コンセンサスだけだ。」
    マサチューセッツ工科大学(MIT)
    デーブ・クラーク

    インターネットの哲学ー
    すなわち両端のコンピュータがすべてを決する。

    インターネットは、プログラミングが優しい。
    優しいということは、インターネットのプログラマーが増える。
    それは、インターネットを支えるエンジニアがたくさんいる。
    どんなよい技術でも、
    それを支えることのできる技術者が少ないならば、
    普及して運用されることはない。

    インターネットの技術の面白いところは、
    「いいかげん」な技術の集合である。

    インターネットは、常時つながっている人と
    必要時につなげる人を区別する。
    コンピュータの進展は、
    情報をコンピュータに蓄えられるようになった。

    コンピュータのソフトウエアーは、
    ある人が最初に作り出したあとは
    他の人はそれを使いながら、
    新しいことを創造していく。
    そのような作り方が効率的です。

    検索そして百科事典
    検索を「中央に集中させて」すすめるのではなく、
    「情報の関連情報はあそこにある、
    これ以上のことを知りたければあそこにあるというかたちで、
    情報に指標をつける。」
    それに、つながっていく方法を確立した。

    この体系がどんどん発展していけば、
    そもそも「価値」というものをどのように
    考えていけばよいのか。

    従来の百科事典ならば、ある項目については一通りの、
    権威ある記述しかないわけですが、
    wwwで情報をたぐっていった場合、
    幾通りもの記述に出くわす。

    インターネットの参加者それぞれの視点での
    知識の体系を、それぞれの価値観にもとづいてつくっていく。
    知識の裏付けに権威があるというのではなく、
    それぞれの人が持っている見方に基づく
    自分の判断によって知識を選び、
    獲得していくという方法。

    種々の情報が全く等価に並んでいて、
    完全に自分の目で情報を選ばなければならない。
    というような状態ではなく、
    手がかりをだしながら、選択可能性を高める。

    インターネットは、マーケッティングがしやすい。
    アンケートがとりやすい。

    国境がなくなる
    売っている人がいる国とかっている人がいる国は違う。
    通常の売買いなら必ず関税がかかっていた。
    資本の準備や、地理的な制約を簡単に超えることができる。

    インターネットの基本は、デジタルテクノロジーにある。
    人間が持っている財産としての「デジタルデ-タ」
    はどんなものがあるのか
    文字、映像、音など 人間 が作り出してきた
    デジタル表現(数値による表現。)であらわされはじめた。

    データ通信 従量課金
    あらゆる通信回線が、電話の音声だったら
    何回線分に相当するのかという計算によって、
    比例的に料金をきめている。

    セキュリティの問題は、
    (1)技術の問題
    (2)仕組みの問題 
    (3)人間たちの振る舞いの問題。にある。
    そもそもどこにプライバシーが必要なのか、
    プライバシーとは、どの範囲なのか

    コンピュータを使う力、コンピュータネットワークに
    参加するときの基本的な作法ーコンピューターリテラシー
    を身につけるような、教育の仕組みを作る。
     
    日本では、コンピュータ・サイエンスの分野の研究は、
    なかなか評価されません。
    科学研究の中では「役に立つ研究」や
    「分かりやすい結果が出る研究」というのは、
    評価されにくい風潮がある。

  • 書かれた時代が1995年とウィンドウズ95が発売された時で、当時の通信コストの高さなど、大変興味深かった。
    又、インターネットの基本的な仕組みや、予想された未来を今読んで現実と照らし合わせて見るなど、色々な楽しみ方が出来る本だった。

  • 1995年でこの内容は衝撃。村井さんの凄さを実感。

  • インターネットの発展史がよくわかる本。特に日本においては、民間の力でほとんど成立させ、行政は無力であったこと、また行政の横槍がなかったから何とか成立したのかもしれない。

  • 初版1995年。さすがに前半の解説は今更なものだし後半のこれからの話題も今となっては陳腐化しているが、本題は4章『インターネットの変遷』。日本にネットがなかったころ。如何にして接続し、何を決め、どの問題を正しく先送りしたのか。運用優先のインターネットでマルチバイトの問題まで先送りにしてしまっていたら、今の日本のインターネットはどうなっていただろうか。必要な場所に最適な人がいた事実に感謝。しっかし過去から未来まで語り尽くしてしまった本書の後、何を語るのだろうか…。続刊に期待。

  • 1995年に発行された本書は、
    今でもネットに関わる人達の必読書として知られているらしいです。

    たしかに、
    本質的な話をしているので、
    今でもまったく色褪せていない印象を受けます。

    もちろん現在では当然とされているような、
    「双方向性」「対等性」「日常性」といったネットの特徴や、
    分散型の仕組みであることなども書かれていますが、
    社会のインフラストラクチャーとして非常に低コストであること、
    さらに「拡張性」「到達性」「冗長性」も兼ね備えていることなどは、
    ネットの特徴として忘れられがちなのかなぁと思いました。

    また、
    「本質的に個人主義に立脚してつくられていったアメリカのインターネットと、
    強い権威と管理主義のもとに築かれてきた知識体系や情報体系に影響されている、
    ヨーロッパやアジアのインターネットとは、その意味が相当に違う」
    というのはおそらく、
    この前ニコニコ超会議で東浩紀が言っていた、
    「情報」と「コミュニケーション」という、
    インターネットの二つの側面を現代人は分類できてない、
    といった話に通じるのでしょうし、
    「インターネットの革命性、インターネットの衝撃は、ヨーロッパやアジアの国でこそ、
    本当に大きな意味を持っているように思います。」 というのは、
    「アラブの春」や「オキュパイ運動」などを見るに、
    「コミュニケーションのための使い方」がこれからも"大きな意味"を担っていくように思います。
    「希望論(宇野常寛・濱野智史)」にも同じようなことが書いてあったかな。

    今回一番の衝撃だったのは、
    インターネットは軍事ネットワークから発展した、
    というのは俗説だということ。
    ショック。
    核戦争時を想定したものだと思っていました。

    この俗説はアメリカ・タイム誌で、
    「インターネットは核攻撃下でのコミュニケーションの生き残りを想定して開発された」
    という記事が掲載されたところから広まったようです(wikiより)。

    しかし当時も、
    ARPAネット立ち上げ時のIPTO責任者であったロバート・テイラーは、
    この記事に対して事実とは異なる旨、
    正式な抗議をタイム誌に対して行ったみたいですね(続:wikiより)。

    この本によると、
    そうした誤解は、
    ARPAネットが国防総省の一機関であったことが原因かもしれない、
    と書いてあります。

    電話やテレビなどの「同期型」のコミュニケーションと、
    手紙などの「非同期型」のコミュニケーションの問題で、
    著者が気にしているテクノロジーによる同期型への偏りは、
    今はだいぶ修正されていて、
    「アーキテクチャの生態系(濱野智史)」でも書かれていたけれど、
    ニコニコ動画のような、
    非同期でありつつも同期しているように感じる、
    「擬似同期型」のコミュニケーションが主流になっていく気がします。

    あと驚いたのは、
    コンピュータを日本語化した時のフォントの作成を、
    一人の学生がやったということ。
    6000字以上を一人でとは恐れ入ります。

    それから今では、
    インターネットとマスメディアの対立がよく見られますが、
    著者はインターネットと他のメディアとの協調、
    補完関係を考えなければいけないと言っていたり、
    インターネットによって本やテレビがなくなったり、
    国という概念がなくなったりすることはないと言っていて、
    まったくその通りだと思いました。
    ほんとどうかしてますね。

    最後に、
    インターネットが動的に変わっていくものだ、
    というのは、
    福岡伸一の「動的平衡」みたいな考え方で、
    分子生物学的にも理に適っているんだろうなぁ、
    と思います。

    今読んでも色々とためになる本でした。

  • 読んでない奴はモグリと言われて数年。
    ようやく読みました。

    いやぁ、面白かった。
    初期の「熱」というのはいつ味わってもいいもので。
    日進月歩の世界だから、古くなったものを読んでも意味がない、時代遅れだ、と思われるかもしれません。
    しかし、そういう時代的制約を超えて、尚読む価値のある本だと感じました。
    根底にある思想は変わらないし、ある時期にそれがどう捉えられていたのか、知ることの意義。

    また、実際、読んでみると、あの頃(95年頃)は実現可能性が低い、とされていたことが案外実現して、すぐにでもできそうだったことが全然できてなかったり。今になってみれば、技術の壁と制度の壁と何が問題になってきたのか壁の裏表両面から見られるということでしょう。
    これを生かさない手はない。

    個人的にはジットレインの『インターネットが死ぬ日』 http://amzn.to/xHuiGw が併せて読みたい一冊ですかね。

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著者プロフィール

慶應義塾大学環境情報学部長、同教授。
工学博士。1984年国内のインターネットの祖となった日本の大学間ネットワーク「JUNET」を設立。1988年インターネットに関する研究プロジェクト「WIDEプロジェクト」を設立し、今日までその代表として指導にあたる。内閣官房情報セキュリティセンター 情報セキュリティ政策会議委員、社団法人情報処理学会フェロー、日本学術会議第20期会員、現在は連携会員。2000年~2009年7月まで内閣高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)有識者本部員。その他、各省庁委員会の主査や委員などを多数務め、国際学会などでも活動する。著書に『インターネット』(岩波書店、1995年)、『インターネット新世代』(岩波書店、2010年)など多数。

「2016年 『価値創造の健康情報プラットフォーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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