- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004314608
作品紹介・あらすじ
差別と侮辱、排除の言葉をマイノリティに向けて路上やネット上で撒き散らす-ヘイト・スピーチとは差別煽動である。差別も「表現の自由」として、当事者の深刻な苦しみを放置するのか。民主主義社会をも破壊する「言葉の暴力」と向き合う国際社会の経験と制度を紹介し、法規制濫用の危険性も考えながら、共に生きる社会の方途を探る。
感想・レビュー・書評
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全日本人必読の書であると言いたい。評論というのは多少なりとも筆者の思想や立場によって偏りがあるし絶対的にこれが正しいということがないのが通例であるが、こと差別に関して、人種や民族、障害者、社会的マイノリティといったジャンルで概念化した差別に関してはいかなる事情があろうとも絶対的悪であり、ましてやその差別を助長し扇動するような汚らしい罵詈雑言など文明社会に存在してよいはずがない。
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ヘイトスピーチ事案が沢山記載されており、教科書で聞くような話とは違うリアルな話だったので、少し差別主義者にひいてしまった。一方で、「これヘイトスピーチなのか...?マイノリティ側がどうにか対応できるのでは?」と感じる事案もあったので、ここの兼ね合いをどうするのかが今後の論点になっていくのではないかと思う。
また、「ヘイトスピーチには厳しい法整備を」という論調で終始論じていますが、そうすると迂闊に物申すことができなくなる言論封殺社会に陥ってしまう危険もはらんでいるのではないかとも思ってしまった。
最後に、ヘイトスピーチとは関係なく、憲法について。
憲法が多少曖昧に記述されている分、様々な解釈ができるため、やはり憲法は面白いなとこの本を読んだことで改めて実感した。 -
現在の日本におけるヘイト・スピーチ(差別煽動)、特に在日コリアンや被差別部落出身者に対するそれの横行の状況、日本政府による差別放置・助長の現状、現行法下での規制の限界、イギリス・ドイツ・カナダ・オーストラリアにおけるヘイト・スピーチ規制の現状と課題を示し、罰則を含む包括的な差別禁止法制の必要性を訴える。日本の法曹界では、権力の濫用により「表現の自由」を危うくするという理由で、ヘイト・スピーチの法的規制(特に刑事規制)に否定的な見方が強いが、国際的には人種差別撤廃条約に基づく法規制の流れが一般的であり、事実上無法状態にある日本の現状はむしろ異常であることを強調している。
法学的アプローチからのヘイト・スピーチ問題の評論としては主要な論点を網羅しており、この問題を考えるうえで必読の書と言えるが、本書が示す日本の絶望的現況(特に差別主義者の多い安倍内閣の存在)は、仮に法規制が実現してもむしろ「日本人差別」と称してマイノリティ迫害に逆利用される可能性を容易に推測させる。 -
ヘイトスピーチについて、その意味と諸外国での対応、それとヘイトスピーチに対する我が国の対応の遅れについて理解した。したものの、本書に記載してあるとおりの法規制が必要であるという考えはどうも理解できない。本書でも言及されているが、権力による言論封殺につながるおそれがあるし、そもそも我が国では人種差別の前に部落差別があったが、これについても憲法の基本的人権の尊重が謳われているのみであり、法規制がなされていない。そもそも人権後進国だから法規制によって人権の拡大を図るという観点も必要とは考えるが、何故そもそも法規制がなされていないのかという観点でも論じる必要があるのではないだろうか。本来、本書に記載されているような差別はあってはならないと考えるが、どうも法規制はしっくりこない。などと書いていたら、昨日のニュースで国連規約人権委員会が日本政府にヘイトスピーチ禁止勧告を求めているというのがあった。国際的にはきっちり法制度貸すべきということなのだろうか。
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師岡康子『ヘイト・スピーチとは何か』岩波新書、読了。民主主義社会を根柢から覆す差別煽動としてのヘイト・クライムの蔓延する現代日本。本書は日本の現状と背景を概観した上で、諸外国の人種差別撤廃政策を参照し、現代日本が取り組むべき対策について具体的な提案を試みる。
字の如く「ヘイト・スピーチ」の「スピーチ」に注目するとそれは「表現」の一種と見まがうが、それ自体が言葉の暴力であるだけでなく、物理的暴力を誘引する点で表現を凌駕する暴挙である。勿論、世界各地でヘイト・スピーチは散見されるが、公人によるヘイト・スピーチが撒き散らされ続けるのは日本だけだ。その代表が石原慎太郎前東京都都知事であり、著者は「差別の見本市」という。
ヘイト・スピーチの話者は「差別の意図はない」というし、石原発言に関しても日本政府は人種差別を助長する意図はないから人種差別撤廃条約の対象にはならないという。しかし、差別の意図の有無は「その文言の内容や文脈などから客観的に判断すべきである」。
良質の対抗言論がヘイト・スピーチを「駆逐」するという意見もある。しかし「ナチズムが『表現の自由』を行使してヘイト・スピーチを行い、反対勢力を「駆逐して」権力をとり、多くの人々をユダヤ人虐殺の加害者とさせた歴史的事実に照らしたとき、どの程度説得力があるだろう」。
著者は慎重論も丁寧にすくい上げながらも、「日本社会が真に問われているのは、法規制か『表現の自由』かの選択ではなく、マイノリティに対する差別を今のまま合法として是認し、その苦しみを放置しつづけるのか、それともこれまでの差別を反省し、差別のない社会を作るのかということではないだろうか」。
日本社会の現状を冷静に報告し国際社会の経験と制度を紹介し、他者と共に生きる社会の方途を探る本書は、若い人に手にとってほしい一冊である。 -
厳罰がいいのではないが、厳罰が望ましい…と言っているようです。
規制条項は欲しいが・・・乱用されても困る・・・と言う。
つまりは、国政が姿勢を示せ・・という結論らしい。
これは女性だな…と著者をみる。
感情的な表現が多い。
新井将敬に言及しているが、自殺の原因に証券スキャンダルを書いていないことなど、方向性に作為がある。
感情を前に出すと、理屈が引っ込むので、心して読んだ方がよい。 -
差別と侮辱、排除の言葉をマイノリティに向けて路上やネット上で撒き散らすヘイト・スピーチ。民主主義社会をも破壊する「言葉の暴力」と向き合う国際社会の経験と制度を紹介しながら、共に生きる社会の方途を探る。【「TRC MARC」の商品解説】
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SDGs|目標10 人や国の不平等をなくそう|
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法学的観点から規制積極派の主張を論じたもの。国際法に依拠しつつ慎重派の主張に反論を試みてはいるが、立憲主義を重視する憲法学者とはそもそも立場も考え方も違うので、弁護士である著者の一方的な主張が有効な批判になっているかには疑問が残る部分はある。ただし、積極派と慎重派の意見の対立が確認できるという意味では有意義ではあるように思える。