K-POP 新感覚のメディア (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317302

感想・レビュー・書評

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  • 戦後の韓国歌謡界が、当時輸入が禁じられていた日本の歌謡曲の影響を色濃く受けていたこと、そしてその後米国のブラックミュージックの影響を受けながら、独自のマネージメントのあり方を模索しながら現在のK-POPが誕生していったことなど、面白かった。
    YouTubeなどの映像メディアと相まって視覚的要素の重要性が増してきたという着眼点も興味深かった。

    韓国政府が国策としてK-POPの振興を行なっているという言説は、ポジティヴ/ネガティヴ双方の観点からよく言われることではあるが、筆者はこれを否定している。韓国政府はソフトパワーとしてK-POPをうまく活用できているだけであり、K-POPそのものについては指図できるわけではないとのこと。たしかに、ポップカルチャーを国が完全に掌握するというのは、不健全なだけでなく、そもそも現実的に難易度が高く、ソフトパワーとして利用している側面が強いのかなと感じた。

  • <二つの視点>
    ①2012年以降の世界的なK-POPの発見
    ②2017年以降の日本でのK-POPの再発見

    <K-POPの拡張>
    ・K-POPアイドルは日本国内では日本語の曲を使って国内アーティストと同じ形で活動することで日本でのファンダムを獲得
    ・韓国では、アメリカより8年早い2003年にはデジタル音楽市場がレコード市場規模を上回っていた
     ┗アジア通貨危機の経験から、政府が「IT強国」を掲げMP3のための環境が一気に整った
    ・「音楽を共有する」という新しい感覚に応えたのがYouTube
     ┗K-POP業界は著作物が消費者にいじられることを歓迎した

    <感情の共有>
    ・BTSはメンバー全員がシンガーソングライターであり、自己表現は各々のアイデンティ。
    ・日本でも、日本語化されていない、韓国語の歌詞そのものを求めるファンが増えた

    <K-POPの系譜>
    ①「観る音楽」の導入
    ・アメリカでMTVの誕生
    ・80年代カラーテレビ放送が開始した韓国でも影響を受け、ビジュアルを重視したミュージシャンが多く誕生
    ②アイドルの登場
    ③ブラックミュージックとの出会い
    ・韓国アイドルが日本型でなくアメリカ型に方向転換
    ④ラップとヒップホップ文化の需要
    ⑤J-POPからの脱却
    ⑥韓国型マネジメントの定着
    ・SMでシステムが確立
    ・「練習生」=ジャニーズの影響、音楽的中身=アメリカの影響、練習や語学教育などのスケジュール=韓国の教育環境によるもの

    <K-POPの感覚>
    ・K-POPがグローバルに消費されているのは、その「新しさ」が認められたから。
    ・K-POPのすべての要素が新しいではなく、古い要素も"K-POP"を通すと新しく感じる
    ・最新のサウンドとビート、先端のファッションとビジュアル、シンクロダンス、洗練されたMVといった要素をすべて組み合わせたのがK-POP。

  •  韓国のアイドルグループにハマったので読んでみた。K-POPといえば東方神起、BIGBANG、少女時代やKARAが日本でも流行っていたというくらいの知識しかなかったため、そもそもK-POPとは何ぞや?というところから読み始めようと思い本書を手に取った。

     視覚的な特質(スター性)や親しみやすい魅力が協調される日本型アイドルと、歌唱力やパフォーマンス力を持った憧憬の対象であるアメリカ型アイドルの融合から始まったK-POPは、そこからブラックミュージックと出会いラップヒップホップを盛んに取り入れアメリカ型アイドルへさらに舵をきった。それでいて「韓国的な感覚」(韓国語ラップや韓国歌謡の要素、「恨」の感情など)と接続することにより日本型ともアメリカ型とも異なるK-POPのフレームができあがった。という音楽史の流れは非常に興味深かった。

  • なんか正直なところ、K-POPとか論じなくても聞いて楽しめばいいんじゃないと思うんだけど、読んでみた。
    この本にも書いてあるんだけど、K-POPはもともとJ-POPの相対概念として生まれた言葉だと。そしていつのまにかワールドワイドな存在になった。それは、「日本のポピュラー音楽は自らをJ-POPと規定したときから、(依然としてCD販売に依存することをはじめ)Jの世界の秩序と感覚を原動力とするようになった。それに対してK-POPは、他者によって規定されたそのときから「K」をめぐるあらゆる境界と秩序を解体しつづけることを原動力にしたといえる。」(p.58)ということに集約されるのではないかな。
    自分たちの(よくいえば)あるがままを売りにしたJ-POPに対し、K-POPはまず世界に向かっていきグローバルスタンダードを体得したうえでKらしさを出していったという感じ。BTSを代表例にわりと最近のK-POPのあり方にもかなり紙幅を割いているんだけど、youtubeやSNSを通じて世界的に拡散していくあり方は、やはり前掲の引用文と重なるところで、CDや音楽としてだけでない文化が拡散していく成功例としてとらえるべき。

  • 著者は吉見俊哉のもとで学んだメディア文化の研究者で、主としてカルチュラル・スタディーズ的な観点からK-POPの歴史をたどるとともに、現在それがどのようなしかたで日本や他の国々で受け入れられているのかを論じている本です。

    新書一冊の本でK-POPの歴史を論じているので、マニアックな知識を必要とするような細かい事情には触れていませんが、おおまかに「K-POPとはなにか」をつかむことはできる内容になっています。とくに、90年代以降の韓国アイドルがJ-POPの模倣から離脱し、アメリカの音楽受け入れてきたこと、そしてデジタル音楽の時代にグローバル化の波に乗って隆盛にいたった経緯が、わかりやすく解説されています。また著者は、i-TuneやYouTubeなどを通じて気に入った音楽をフラットに受け入れる現代のK-POP受容のありかたに注目することで、日本におけるいわゆる「第二次韓流ブーム」と「第三次韓流ブーム」のあいだには断絶がなかったという見方を示しています。

    すこし違和感をおぼえたのは、TWICEのツウィが台湾旗を掲げて中国からのバッシングを受けた問題について、著者は「ナショナリズムのような「現実」が「ポップ空間」に介入」した事例だと説明し、現実とかけ離れた「ポップ空間」のなかに生身のアイドルを囲い込み管理することの問題へと議論を進めている点です。サナの令和メッセージにかんするいざこざもそうですが、ここで生じている「ナショナリズム」は「ポップ空間」から区別されるような「現実」ではなく、むしろ「ポップ空間」と同質的な、カギカッコつきの「ナショナリズム」であるように思われます。著者には、この点についてこそ、メディア論的な観点から論じてほしかったように思います。

  • 実によくまとまっていて、めちゃくちゃわかりやすかった。

  • 第三世代までのk-popを歴史的な過程を中心に解説している教科書のような本。若干賞味期限が切れている。アイリーンの炎上案件に言及されているが、パワハラではなく読書のほうだった。

  • 2018年の書籍なのでK-POPのスピード感からすると昔の話になってしまうのは仕方ないものの興味深く読めた。今後ナムジャグルみたく自分たちメインで作詞作曲するヨジャグル出てくればまた一段階跳ねるかもね的な意見については(G)I-DLEが出てきたので彼女たちはここの系譜に入るのかなど現状と比べつつ読むと面白いかも。

  • 2022年7月~9月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00540776

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著者プロフィール

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授
1976年ソウル生まれ。ソウル大学作曲科卒業。ソウル大学言論情報学科修士課程修了。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。専門はメディア文化研究、音楽社会学。東京大学情報学環助教、ジョージタウン大学アジア研究科訪問研究員などを経て現職。著書に『Postwar South Korea and Japanese Popular Culture』(Trans Pacific Press、2023年)、『K-POP――新感覚のメディア』(岩波新書、2018年)、『戦後韓国と日本文化――「倭色」禁止から「韓流」まで』(岩波現代全書、2014年)など。

「2024年 『日韓ポピュラー音楽史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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