- Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022642486
作品紹介・あらすじ
バブル崩壊で会社も金も失い、妻子とも別れたろくでなしの中年男城所安男。心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるというサン・マルコ病院めざし、奇跡を信じて百マイルをひたすらに駆ける-親子の切ない情愛、男女の哀しい恋模様を描く、感動の物語。
感想・レビュー・書評
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2000年 293ページ
浅田次郎さん、初読みです。
題名から、悲しい結末を予感していたのですが、大号泣のお話にならなくてよかったです。
テンポよく読み進められました。星5をつけたいところなのですが、マリのあつかいに不満なので星4です。
主人公の城所安男は、バブル崩壊で破産し、仕事も妻子も失った。元妻からは月額30万円の養育費を請求されている。ホステスのマリと同棲しヒモのような生活を送っているが、マリを愛しているわけではない。安男の母は、安男がもの心つく前に夫を亡くし、女手一つで4人の子どもを立派に育てあげた。安男はその中で自分だけが落ちこぼれたと思っている。そして心臓病で入院している母の主治医から、病状は深刻であり、手術か内科的治療による延命かの選択肢を出される。手術をできるのは、鴨浦にあるサン・マルコ病院の天才外科医のみ。安男の兄姉たちからは、「金なら出すからみんなおまえがやれ」と言われる。安男は、誰の力も借りずに自分1人で、母を救うべく、サン・マルコ病院までの百マイルの道のりを、母を乗せたワゴン車で駆けていく。
親子の愛情。男女の愛情。そして、出会った人々からかけられる愛情。
兄姉から、金なら出すからみんなおまえがやれ、と言われ、自分ひとりでおふくろをなんとかする、と決心した安男。しかし安男は悟ります。
『天国までの百マイルを、自分ひとりで走ってきたと思っていた。だがそうではない。けっして、そうじゃない。天国までの百マイルは長かった。走りおえたとき、これは奇跡だと思った。でも、そうじゃない。奇跡なんかじゃない。みんなが、俺の運転するあのオンボロ・ワゴンと一緒に走ってくれたんだ。社長は車と休暇をくれた。マリは勇気をくれた。高利貸の片山は財布を丸ごとくれた。途中の食堂で出会った運転手さんたちは、みんな口々に、頑張れって言ってくれた。おかあちやんのために冷房を止めて、大汗をかきながら飯を食っていたんだ。世の中の善意をかき集めて、俺は百マイルを走った。何かひとつでも欠けたら、すべてはご破算だった』
大きな愛に包まれて、だからこそ起こり得た奇跡だったのでしょう。また、途中で母親が死ぬわけにはいかなかった。安男をどん底から引っ張りあげ、もう一度立ち上がらせるために。そこには安男の奇跡の成功体験が必要なのです。
私も育ちが裕福とは言えず、また、結婚後の人生も、自分の友人たちからみれば恵まれたものではありませんでした。子どもたちには贅沢はさせてあげられませんでした。だけど、負けてほしくない、幸せになってほしい、という母としての気持ちは同じです。
人生の応援歌のような小説でした。読んで良かったです。
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一昔前の義理人情とか自己犠牲精神とかを賛美し、対して現代を嘆くという構造が私はあまり好きではない。
この本も、ともすればそういった構図で描かれたのかもしれないが、それが全く気にならない程なめらかで魅力的な物語だった。
会社はつぶれ妻とは離婚し、絵に書いたように落ちぶれた男が、心臓の弱った母親を100マイル先の病院まで運んでいく。
車の中でのふたりの会話も、彼らを支える人々の思いも、心の底にしっとり染み込むような優しさや思いやりで満ちていた。読んでいて涙が止まらなかった。
「私はもう死んでいいと思ってます。けれど、もし私が死んだら息子がこのままダメになってしまう。だからどうか私を助けてください。」
この言葉に、息子へのの計り知れないほど深い愛情を感じた。素敵な時間を過ごせた1冊だった。
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何度も泣いて読む手が止まってしまった。
愛情が、必死の情熱が、奇跡を起こすこともある。
がんばれがんばれ、と自分も並走している気持ちになった。
設定も登場人物たちもドラマティックすぎて、お涙ちょうだい系と言われたらそうかもしれないけど。こういうまっすぐな小説も良いと思った。 -
私がこの本と出会ったのは閉館する図書館が古い本を無料で配っていた時でした。
無料配布の開始時間から少し遅れて行くと本棚は殆どカラ状態!残っている本の中に浅田次郎さんの本があったのだ取り敢えず貰ってきました。
残り物には福があると言ったもので久々の評価5です!
バスの中と病院で読んでいたのですが涙が止まりません!登場人物に酷いやつらも居ましたが、それ以上に良い奴がいっぱい居ました。
主人公のヤッサンは名前が同じせいか重松清さんの『とんび』の主人公に被りました。
同じくヤッサンの恋人マリは西加奈子さんの『漁港の肉子ちゃん』の肉子ちゃんのようでした。
この他にも藤本医師や借金取りの片山、神様の小林一也など鳴かせてくれるキャラがたくさんいます!
主人公の城所安男はバブル崩壊で会社を失い妻子とも別れて暮らす事に・・・
そんなところに心臓病を患う母を救うため母と共に160km離れたサン・マルコ病院を目指すのだか・・・ -
私はひねくれているのだろう。
全く泣けなかった。
ただ、現実で、本書に出てくる医師(心臓外科医だけでなく主治医の内科医も素晴らしい)や歯科医師のような人物に診てもらいたいものだ。 -
バブル崩壊で会社も金も失い,妻子とも別れたろくでなしの中年男が,母の命を守るための奮闘記。
風船のようなデブ女マリが魅力的だった。下品なモーツァルトに神が宿り天上の音楽を奏でたように,人間くさいマリは献身的に別れを選ぶ。
「愛されることは幸せじゃないけど,愛することって幸せだよ。」
この言葉は深い。
この小説のBGMともいえるピーター・ポール&マリーの「五百マイルも離れて」がずっと頭の中で鳴っていた。 -
初めて読む作家さん。
ここまでドラマチックではないが…、3か月前、我が家もこれに近い状況にあり、とても他人事とは思えないストーリーだった。
同棲相手のマリに癒された。マリはいつか幸せになれるのだろうか。-
こんばんは♪
浅田次郎さんは、
「日輪の遺産」と「天切り松 闇語り」
が、お薦めです♪
機会があれば、ペラペラめくってみてく...こんばんは♪
浅田次郎さんは、
「日輪の遺産」と「天切り松 闇語り」
が、お薦めです♪
機会があれば、ペラペラめくってみてください。2019/11/24
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親孝行したい
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大好きな小説。多くの人は浅田次郎の傑作といえば、「蒼穹の昴」「鉄道員」なのだろうが、ちょうど、この小説の発売時期に母親が亡くなったので、非常に強いおもいいれがある。大切なことは何なのか?見栄や外聞にとらわれず、やれる時にやらなければいけない。反省
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kakaneさん、こんばんは。「空の拳」と、前に話に出たこちらの本も、読みたいリストに入れておきますね。お薦めありがとうございます。
それ...kakaneさん、こんばんは。「空の拳」と、前に話に出たこちらの本も、読みたいリストに入れておきますね。お薦めありがとうございます。
それにしても、めっちゃ夜型ですね!(笑)2018/07/13 -
コメントありがとうございます。
chieさんの読書スピードなら、すぐ読んじゃいますね。
ワールドカップで完全夜型に(TT)
仕事中眠くって(...コメントありがとうございます。
chieさんの読書スピードなら、すぐ読んじゃいますね。
ワールドカップで完全夜型に(TT)
仕事中眠くって(笑)
2018/07/13 -
てっきり朝の遅いお仕事かと思ってました。
私は何とか「ジュラシックワールド」見終わるまで寝ないつもりです(笑)てっきり朝の遅いお仕事かと思ってました。
私は何とか「ジュラシックワールド」見終わるまで寝ないつもりです(笑)2018/07/13
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