物語の体操: みるみる小説が書ける6つのレッスン (朝日文庫 お 49-1)
- 朝日新聞出版 (2003年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022643001
作品紹介・あらすじ
物語を作るのに特別な才能はいらない。トレーニングを積みさえすれば、誰でもどんどん物語を作れるようになる。カードや方程式を使ったプロットや登場人物の作り方など、具体的な小説練習法を公開。実用的な小説入門書であり、文学はそれでも特別なのかを問う批評的な書物でもある。
感想・レビュー・書評
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ライトノベルなどの小説を書くための実用教本です。その一方で著者は、本書で語られる「技術」に解消されるのことのない「文学」の領分にいったいなにがのこるのかという問題を、真摯に追求しています。
著者は、物語のプロットが共通の構造をもっていることをわかりやすく解説しています。同時に、そうした構造に則って適切な登場人物を配置することで、とりあえず物語をつくることができるようになるためのカリキュラムが提示されています。
メディアミックスがさかんにおこなわれている現在のサブカルチャー業界では、既存の「世界」のなかで一回分の物語をいわば「二次創作」する「ブルーカラーの物語作者」が必要とされており、本書で練習を積んでとりあえず物語を作ることができるようになれば、「少なくともジュニアノベルズの世界では食いっぱぐれることがない」と著者は太鼓判を押します。
そのうえで、本書がめざしていることは、「文学」を権威の座から追い落とすことではないと著者は述べています。そして、あえて本書のような試みをおこなったのは、戦後文学から「「サブ・カルチャー的なもの」を引き算したらそこには「文学」はちゃんと残ってくれるのか」という問題意識に基づいていると主張します。この点で本書は、「文学」という制度に対する鋭い問題提起の書となっています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【どんな本?】
『キャラクター小説の作り方』の著者「大塚英志」さんの小説のトレーニング方法をまとめている本。
【まとめ】
6つのトレーニング方法が紹介されており、中でも、最初に紹介している「プロットトレーニング」はとても実践的。
プロットトレーニングとは、タロットカードをランダムに並べて、そこから物語を創造するトレーニング。
最初は1本作るのに3時間から4時間程かかり、とても大変だった。本では手始めに100本作れと書いてあったため、長い時間がかかったが何とか100本作ると、明らかに最初に比べて物語の質も量も格段に良くなっているのが自覚できる。
他のトレーニングはまだ試していないが、読むだけでも創作に役立つものがたくさんあるので良本だと思う。 -
「読まずに小説書けますか」から。
生徒たちの例を載せながら、ストーリー作りのトレーニング方法を紹介してくれる本。
タロット占いをもとにしたトレーニングは、そのままボードゲームとして遊べそう。 -
笙野頼子本を先に読んだ手前、本著者にはあまり良い印象を持っておらず、なら何で手に取ったのかっていうと、確か”小説の書き方”本のどれかで、本書が勧められているのを目にしたから。で、そんな本書は、小説は誰にでも書けるっていう基本的なスタンスありきで、そのために必要なノウハウが開陳されている。自分が努力したけどダメだったか、ダメだった人の言い分を聞かない限り、本当のことは分からない。自分では書くつもりが無く、著作が商品にならない人の小説論は読めないから(当たり前だけど)、答えのない問題だと思うけど、個人的には、大いに才能が関係する分野だと思ってます。なので正直、積極的に賛同できる部分は少なかったかな。
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一つの文章はというものは名詞や動詞、形容詞、助詞といったいくつもの単語の組み合わせから成っている。同じように「お話」も実は、「単語」に相当するような単位というか要素の組み合わせから成り立っている。この「お話」の構成単位に相当するのが主人公などの登場人物の「状態」をなるべく抽象的に表現したもの。→物語の形態学
物語の表面を実際に取り去ってみる。物語をどんどん抽象化していくと物語の表面的な違いが消滅する水準がある。これを物語の「構造」とか「形態」と呼ぶ
物語の構造を構成する最小単位を「機能」と呼ぶ。 ex. 主人公は◯◯する → ロシアの魔法民話は31の機能から成る(プロップ)
登場人物の行為をその行為する主体ごとに6つに分類する
→グレマスの行為者モデル
3つの軸
主体→対象
送り手→受け手
援助者⇔敵対者
送り手(委任)とそれを代行する主体が対象を探し始める(宝探しをする)
物語と世界観の分離 ex. 村上龍の小説
世界観を特化させて、小説やまんがといった表現上のストーリーとは別に構築しておくという作業は実はメディアミックスという物語表現を取り巻く資本の要請に応えるには不可欠な要素。コミックからゲーム、ゲームからアニメといった一つの物語を他ジャンルに移植する際に世界観の設計がきっちりとなされていると作業はスムーズに動く
ex. 歌舞伎では、世界観=世界、物語=趣向
テーマ
作り手があらかじめ自分の作品のテーマはかくかくしかじかだ、と語ってしまえるようなお話はあまり健全とは言えない、政治的なプロパガンダになったりお説教臭くなったりとあらかじめ書き手が所存のテーマを自覚してしまうことの弊害は少なくない。だからこそ、ごく自然に健全なテーマが内側からちゃんと湧いて出るような形が望ましい -
自分でも小説を書いてみたいと思い読んでみた。どちらかというと文学チックな感じで、苦手な作家の話がメインになりつつあるところから流し読み。また機会あれば再読しようかな…しないだろうな
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大塚英志さんの本はいくつか読んでみたこともあって、タロットカード的なものを使ってプロットを作る練習っていうのもやってみたことあるんですが。どうも私には合わなかった(ネットのサービスではなくちゃんと厚紙を切って作ったらよかったのかもしれないけど)。
https://tarot-plot.com/
今見たら、機能がかなり強化されていましたので、ご興味のある方はどうぞ。
『スクリプトドクターの脚本教室・中級篇』三宅隆太著に載っていた、さいころを使ったもののほうが私には合っていました。もし、タロット式が自分には合わないとお思いの方は、そちらもというか、いろんなやり方をためしてみられることをお勧めします。
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で、この本は、小説トレーニングの方法を探して手にしたのですけど。トレーニング部分よりも、著者の文学論の部分の方が私には面白かったです。
筆者は、『戦後文学から「「サブ・カルチャー的なもの」を引き算したらそこには「文学」はちゃんと残ってくれるのか』ということを問題にしておられる。
果たして『文学』というものは本当に存在するの?て感じなのですけど。筆者がそれが「在る」と思っておられるのであれば、おそらくそれは存在するのでしょう。それは多分筆者の方が幸せな文学体験をしておられる。何かの本を読んで感動した、何かを得たみたいな経験があるから言われているんだと思うんです。それは幸せなことだなと。
私自身は、いわゆる「ブンガク」と筆者の言う「サブカルチャー小説」というものの区分けにあまり意味を感じないのですが。実際に昔、筆者自身が書かれた「キャラクター小説の書き方実践編」みたいな本を読んでみて、「これは私が書きたい小説とは違うな」と思ったし。実際ラノベ系の新人賞からデビューしてしまうと、あとから本格派に転向するのは難しいらしいので。やはり実際にはそういう区分は厳然と存在しているらしいです。
『自分では物語を作れないが「二次創作」はできる「ブルーカラーの物語作者」』って本当に必要なの?!とも思いますね。業界側からみたら、そういうのを大量生産したいのかもわからないけど。まわりまわってそのツケは業界に帰ってきて、自分で自分の首を絞めてしまう。
村上春樹さんが、物語の構築からメディアミックス化まで全部自分でできるスーパーヒーローだというお話は面白かったです。そういう人を量産できれば、日本はアニメ大国、メディアミックス大国として伸していけるのでしょうけど。おそらくそれは難しいと思うし。
宮部みゆきさんだとか、今流行の作家さんたちもそこまでできる人はあまりいないし、また別にしなくてもいいんじゃないかなという気がします。書くことのできるひとは、物語の構築に専念されたらいいんじゃないかな。でも、せっかく原作がおもしろくっても、アニメ化されるとがっかりしてしまうことも非常に多いのも事実ですね(笑)。
私は別に業界の人ではないのですが、外側から見てるだけでも、こういう矛盾はあるよな~と思います。
そのうち、AIが二次創作を作り始めると思うし、是が非でも自分のオリジナルを出せるようになりたいものです。
私も、筆者以上に甘っちょろい人間なので、こういった訓練をしていると、大多数の方はそのうち自分の人生が作品ににじみ出ると思うんですけど、どうなんでしょうか。 -
2022/2/6読了。
短期集中独学講座「ライトノベル概論」の四冊目として読んだ。 -
記録
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「思想・学問」の分類にしたけど、ちょっと違うかも。
プロップとグレマスの構造に基づいて小説を書く練習をしましょうという本だけど、ちょっとした文学論にもなっている。日本文学の「私小説」についての考察は面白かった。なるほどねー。新井素子か。確かに著者のとしての「私」と物語の中の「あたし」は完全に分断されている。
新井素子、なつかしい。中学生の頃大好きで大ハマリしたな。もう一度読みたくなった。
大塚氏は「文学」に対してはとっても好戦的かつ挑戦的で文学のフィールドでは批判されることが多いらしいけど、彼自身は文学を大切にしている人なんじゃないかなー。
筒井康隆氏の「唯野教授」を読んだ時も思ったけど、大塚氏のケンカ腰な書き方は彼自身が作家でもあることにも由来するみたいだ。
この本に書かれていることを実際の大学で講義したらしいけど、3分の2はドロップアウトしたとか。
そうだろうな。物語全体を貫く抽象的構造を読み取って、それにのっとって自分の小説を書くことを何度も繰り返せばそれなりに物語を完結させる技術は身に付くと思う。でも課題が「村上龍の小説を熟読した上で、構造を抽出して○○頁書く」っていうのは相当大変だと思う。「熟読」の時点で大変(楽しんで読むなら別だけど)。漫画のノベライズもあって面白そうだけど。
これを一期に6回?もっと?っていうんだから、そーとースパルタ的講義。
体験した上での理論は頭に入りやすい。通訳翻訳理論の本は私にとって文学論より何倍もすっと入ってくる(まぁ、文学の理論っていうのは多くは哲学・思想だから性質は自ずと違うけど)。
別に私自身が小説を書きたくて読んだわけじゃないけど、やはり10代の頃から徹底的に読んでる人は蓄積の量が違うなー。