- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022646675
感想・レビュー・書評
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梨木ワールド満載!!
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同じ著者による「家守綺譚」以来の感動。このところ梨木香歩の作品にはちょっと満足出来ずにいたけれど、これはもう満足。
後半に入るまで一体どこに進もうとしているのかと迷うものの、この作家らしい博物学の知識とその表現を楽しんでいるうちに、物語の本質に行き当たる。
考えてみればタイトルが最初からそれを示している。巣穴だ。これは胎内巡りだとタイトルが示している。 -
作者とタイトルとジャケットに惹かれて購入。
現実と幻想が交錯し、全体としてぼやけた感じで中盤まで進んできた。が、読み進めていくにつれ「あぁ なるほど」と思い、最後の結末にはある種感動も覚えました。
文書構成、世界観、等々素晴らしいと思います。
でもやっぱり梨木さんの作品では「西の魔女が・・・」が断然好きですw -
不思議でゆらゆらしたお話しだけど、最後は清々しい。梨木さんらしい本です。
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f植物園の園丁である「私」が巣穴に落ちてしまうところから始まる話。そこから、生命や過去へとつながる展開は、著者の別作品にも見られるテーマだなと思いつつ、読んでいる最中、妙な浮遊感と違和感があって、気持ちが良いのやら悪いのやら。けど、少し古い日本の風景や普通のようで普通じゃない「私」の周りの人が気になって、ついつい読んでしまいました。
終盤、「私」が遭遇する出来事に答えが出ていくと、せつないのにどこか心が軽く、読後感は意外にすっきり。しかし、やっぱりどこかもやもやと説明できない所も…。
巣穴の奥が見えない、覗き込むと落ちてしまう。でも覗きたい(覗く必要がある)。生命とは何たるか、過去とは何たるか。誰も答えを出し切れないことを作中で呼びかけているのが、もやもや感の原因なんだろうかな。
個人的には、この分かりにくいもやっとした後味が良いと思うけど、読む人を選びそう。
「家守綺譚」と同様、著者独特の世界観がすごいですが、こちらの方がややとっつきづらいかもです。 -
植物園の園丁が、自身が勤める植物園の椋のウロに落ちる。虫歯を悪化させた園丁は歯医者に行く。園丁は植物園の整備をするために、植物園に行く。いつもと違う靴を履いて。大人だった園丁がこどもになったり、歯医者の奥方が前世の姿であった犬になったり、あれもこれもが溶け合って、場面が交錯して、人と人が入り混じって、だんだん混乱していく。でも、その混乱にとっぷりつかって最後まで突っ走ってみよう。
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独特の世界観と、雰囲気。和風な異界譚も楽しめますが、主人公が異界に落ちたことによって成長した部分が良くわかるところが好きです。
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まさに夢の中を漂う展開。
主人公は、つらつらと場面に流され姿を変え、そしてまた戻る。
なんともとらえどころのない不思議な物語で、それでも最後はきちんとおさまる。
心がほんのりと温かくなるような読了感でした。 -
何処となく、『家守綺譚』にも通ずる、古き良き日本の、不思議な世界、といった雰囲気の漂う小説です。
f植物園に転任し、水辺の担当になった主人公の佐田は、妻の千代を若くして亡くし、現在は下宿暮らし。
突然、激しい歯の痛みに襲われ、歯科医院に駆け込みますが、それをきっかけに、次々と、この世の道理を無視した出来事が起こり始めます。
やがて辿る、不思議な道行きは、さながら、兎の巣穴に落ちたアリスのようですが、一方、黄泉から戻るイザナギのようでもあります。
途中で出会う河童のような子供に、名前をつける場面では、思わず涙してしまいました。