- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022648037
感想・レビュー・書評
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うーん、人それぞれ性格も違えば価値観も違う
お互いの得手不得手を許し合いながら生きなければならないのかな詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一枚の、とても引き込まれる美しい絵画を眺めているような読書感でした。小川さんの作品は、読み終わったあと、あぁなんかいいな〜って思える。
世界の片隅で、自分たちの大事なものを自覚して、それとひたすら向き合う世界。そこには、周りから冷たい目で見られても、その幸せや満足感をゆるがさないような強さと愛情が必要なのかもしれない。
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あなたの心は美しい
小鳥があなたに愛を唄うから
あなたの心は美しい
愛を注ぐその瞳に光が宿るから
あなたの心は美しい
手を差し伸べる温もりに優しさが舞い降りるから
あなたの心は美しい
争いよりも平和を愛するが故に静けさが降り注ぐから
あなたの心は美しい
あなたが見るこの世界そのものが美しい
あなたの心は美しい
たとえ誰も理解をしえないとしても
私はあなたのために泣くのだから -
友達からおすすめしてもらった本。
この本を読んでいる間すごく静かだった。別に静かな場所にいたわけではないんだけど、小説の中の小鳥の小父さんとお兄さんが作り出す平和な世界に自分も入り込んだみたいだった。
この本の解説にも書いてあったけど、客観的にみれば、お兄さんも小父さんもマージナルな世界に生きる人であり、いわゆる「普通」の人たちからみれば「奇妙」な人たちだと思う。でも、彼ら自身は彼らの生活の中で、自分たちが満足する生き方をしていて、愛に溢れている。
自分には兄弟がいないから世間の兄弟像みたいなものはわからないけど、小父さんとお兄さんのように分かり合える存在がいることがすごく羨ましいと感じた。側から見ればよく分からない人であっても、自分を唯一わかってくれている、自分だけがわかってあげられる相手がいるっていうのは人生において生きる意味を見出してくれるんじゃないかな。
最近本を読んでいる時、これは何を言い表しているんだろうって深読みしたり、答えを探すことも多かったけど、「ことり」を読んでいる間は、ただただ小父さんの生涯に想いを馳せていた。こんな読み方も楽しいなって思いました(^.^)
これをみるかは分からないけど、おすすめしてくれてありがとう♡ -
裏表紙に書いてあった『慎み深い兄弟』という言葉に惹かれて手に取った。慎み深過ぎでは、、と思うくらいで、読んでいて辛かった。
ことりの小父さんと司書の女性の間のひっそりとした交流は唯一の救いのような気がした。女性の気持ちはハッキリとは書いてないけれど、仄かな好意はあったのだろうか。
ことりの小父さんとそのお兄さんにとっての僥倖は、小父さんが60歳を過ぎるまで、金属加工会社のゲストハウスが安定的な職場として提供され続けたことだと思う。こんなピッタリな職場に恵まれることってそうそうないと思う。司書さんを無断で案内したら始末書を書かされたくだりも、十分優しいと思う。
なぜか、高村薫のマークスの山の主人公を思い出した。 -
読み終わるのが勿体ないと思う本でした。ことりが話の中に形を変えて何度も登場するのですが、それがまるでひとつのやわらかい生き物のようです。
お兄さんとの思い出、気持ちの伝わらないさみしさ、人の関わりの、触れては消えていく様子が優しくて寂しかった。
美しくて目の裏に浮かぶ場面が
溢れるほどありました。 -
youtubeの「人生に、文学を。」の著者の回を見て本書を読む気になった。著者の作品は最近読んでいなかったが、相変わらず静謐な文章が美しい。主人公のことりのおじさんは所謂今で言うところのコミュ障というところだろうか、しかし両親ももう少し社会に適合できるように育てるべきだっただろう、これじゃ児童虐待の一種だ。そうはいっても社会と関わらない生活に努めても、恋もするし事件にも巻き込まれてしまう、そして最後は大立ち回り、おじさんは醜い老人たちからメジロを救うためにこの世に生を与えられたのだろうか。
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派手な出来事はほとんど起きないし、大なり小なり、何か事件のようなものごとが起きたときにも、社会のはしっこにポジションを取るような小父さんをまるごと包む空気ごと(それはきっと、小父さんとそのポジションの相互作用で出来ている空気)描かれているので、穏やかで控えめでつつましい印象のまま、話は進んでいきます。どちらかといえば、どぎつい原色ではなく、パステルの淡さといった配色を感じるような文学作品です。やわらかでさりげなく繊細な光がふりそそいでいます。文体や語り方、内容、といったものから出来あがるこの世界観は、世界がどういうぎらぎらした方向へ蠢いていっても、失くしてはいけない大切なものだよなあと感じられるものでした。そして、本作品内の描写というものが、的確でありながら角が無い感じがして、作品を支える細くても丈夫な無くてはならない柱たちになっているように読み受けました。小父さんの一生は、傍目に、ささやかな人生、というようにも感じられるのですが、そういう美しさをも許容していく世界であればいいよなあ、とも思いました。生き方として、小父さんのような生活の仕方が合っている人はたくさんいるのではないか。そういった人たちを、支えるまではいかなくても、近くに体温を持って立っていてあげられるような感覚を与えてくれる作品でもあったのではないかなあ。
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日本だけど日本じゃないみたいな、現代だけど現代じゃないみたいな、不思議な世界観。
お兄さんの目には、世界はどんな風に映ってたんだろう。
図書館の女性の司書さんとのやりとりの場面が、優しい気持ちになれて好きだった。 -
人の幸福は、外側からはけして測れないものだ。それでも、読んでいる間、小父さんの行く末が幸福に守られたものでありますようにと祈らずにはいられない。(結末は最初に提示されているのに!)
最後まで読んだあとはじめの一節に戻ると、初めて読んだときとまったく異なった感慨がある。その余韻にいつまでも浸っている。