日中2000年の不理解: 異なる文化「基層」を探る (朝日新書 8)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022731081

作品紹介・あらすじ

近いようで遠い日本と中国の文化の隔たりが思わぬ摩擦を生む。日中の行き違いを九尾狐の伝承、新美南吉や宮沢賢治の童話、日本の裸祭りの風習など豊富な事例から描く。えっ!そうだったんだ。こんなことに中国人は反応するのか。驚きの日本文化論、登場。

感想・レビュー・書評

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  • 日中の文化をよく知る著者の、比較文化論。

    日本は感性の国。
    中国は理の国。
    こういう二分法は、今では戒められるところかもそれない。
    私は、感性が理に劣るものとは思わないが、西洋風の二分法では感性は劣位かもしれない。
    そのため、この本に憤慨する人もいるかもしれない。
    ただ、まあ、中国をあまりに知らない身には、面白かった。

    儒教は一部の例外的な時期(例えば文革)を除けば、ずっと中国人に影響を与え続けてきた、と筆者は言う。
    私は、辛亥革命以降儒教が排斥されてきたと思っていたので、まずここで、へえ、そうか、と。

    そして、彼らは理を尊ぶ。
    理があることは義=正義と考えるらしい。
    そして、義を欠けば、死んで後さえも批判される。
    日本のように、死者を鞭打つことを忌む考えはないらしい。
    筆者は、歴史認識をめぐる両国の対立の淵源がここにある、とみている。
    この説明に、私は納得してしまった。
    というより、これでは溝が埋まる日が来るとは思えず、暗澹としてしまう。

    ところで、この本は、王さんが日本語で書いたのだろうか。
    プロの方にこんなことを思うのは、かえって失礼なことかもしれないが、だとすればすごいことだ。
    ドナルド・キーンさんさえ、主要な論を母語で書いていたことを思うと。
    実は、多少、読みづらいところもあった。
    特に、必要以上に主語が省かれる傾向がある点で。
    それと関わって、論文なのか、もう少し主観性を打ち出した文章なのか、理解に迷うところもある。
    それは、もしかすると、私たちの書く文章が変わってきているからなのかもしれない。

  • 中国人から見た日本・日本人感を綴った一冊。

    散文調でとりとめもない感じで綴られているので、論文と言うよりエッセイを読んでる感じ。

  • 感想未記入

  • [ 内容 ]
    近いようで遠い日本と中国の文化の隔たりが思わぬ摩擦を生む。
    日中の行き違いを九尾狐の伝承、新美南吉や宮沢賢治の童話、日本の裸祭りの風習など豊富な事例から描く。
    えっ!
    そうだったんだ。
    こんなことに中国人は反応するのか。
    驚きの日本文化論、登場。

    [ 目次 ]
    第1章 動物を慈しむ文化
    第2章 動物観の違いが文化にも
    第3章 裸の付き合いをする文化
    第4章 「水に流す」文化
    第5章 儒教体系に支えられてきた文化
    第6章 「正義」を求める文化と「自然」を求める文化
    第7章 日本人のアイデンティティー
    終章 2000年の不理解をひもとく試み―日中異文化の視点で

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    [ 参考となる書評 ]

  • 中国、韓国、日本
    この3つの国を比較した時に、
    日本は明らかに違うと感じていて、その原因の一端として「儒教文化」がある。
    ということまでは私も考えたことがあるのだけれど、
    ここまで分析されていると、すっきりする。
    今まで感じてきた中国や韓国のもつ「激しさ」の根源を見た気がした。
    いくら日本人が一生懸命分析しても出てこなかった
    ヒントが、中国人の著者によってあらわにされたというような
    そういう感覚。

    禊や、裸のこと、そして辞世の句。
    さまざまな日本独特の問題や、日中比較可能なものをとりあげて、深く掘り下げていく。
    やはり自分は日本人だと思うのは、
    「この感覚は中国人には理解されないものなのか!」
    ということに思いが至った時。

    とても面白い。

  • 非常に面白い日中文化比較論。<br />中国人の書いたものは今まであまりなかったように思える。新鮮。<br />著者の日本を理解しようと言う熱意がものすごく伝わってくる。<br />日本と比較した中国の思考体系はものすごく異質に思えて、非常に興味深かった。<br />以下列挙。<br /><br />・日本は人間より動物の写真が大きい<br />・孔子は厩が焼けた時に人は心配したが、馬のことは触れなかった。<br />・人間上位という点でキリスト教と儒教は一致している<br />・中国の動物物語はほぼ寓話<br />・一般的に中国では本と言えば倫理・道徳のテーマははずせないと言う考え方が強い。<br />・日本には生き物や者を供養する塚がたくさんある<br />・ケンタッキー日本支社でも鶏の供養をしている。<br />・中国で今ペットブームだが、それは裕福の象徴として、ステータスとしての意味が強く、経済復興期の日本における車と同種のもの。<br />・「黒い猫も白い猫もねずみを取る猫はよい猫だ」というように、中国は人間社会に役立つかどうかと言う観点<br />・災害大国日本。天気も移ろいやすい。<br />・天気のニュースをこんなにやるのは日本くらいだし、挨拶代わりに天気を話題にするのも象徴的<br />・人間上位の考えには、牧畜・放牧の影響が強い。数万の家畜を一人で管理するところから。<br />・裸の付き合い、日本は裸踊りの国(アマテラスを岩戸から出した)で、裸に抵抗がない<br />・日本は昔混浴が一般的だった。<br />・キリスト教社会はアダムとイヴの影響か、裸を嫌がる<br />・儒教社会では、衣冠は政治・思想・文化・教育のシンボルのため、非常にこだわりを持っているため裸は嫌う<br />・浴槽に肩までつかるという日本の風呂スタイルは世界無比<br />・中国で言う美とは、勇壮なものを指し、大規模なだけ良いという人工美である。一方日本美はこぎれいさを基本とし、「縮み」志向であり、いわば自然との融合の美である。<br />・儒教的考えではいかなる脅迫にあおうと、敵に組することは不義となる。大義を重視し、例外を認めない。<br />・シンカイ像には「唾を吐き掛けないでください」という立て札がある<br />・中国人は美術作品の評価に関しても理念を求める。<br />・儒教は正統を重視する考えで、日本の判官贔屓とは逆<br />・歴史上の人物の見直しは日本ではよくあるが、儒教中心の考えが体質化した中国ではほとんどない。<br />・儒教は漢民族の生活から生まれた自然な考えが基本。<br />・中国で論語のない家はほとんどない<br />・古層と宗教の二層構造を主張<br /><br /> 日本 中国<br />宗教 仏教 道教<br />古層 神道 儒教<br /><br />・儒教外交が出来なくなった日本(過去は儒学者を外交担当においた<br />・殺した敵を供養すると言うのは中国人には不可解<br />・日本の思想ってのは衣装のように「取り替えれば済む」もの<br />・日本では感性が理性に先行<br />・不老不死に日本人があまり執着しないのは、無常観から来る死生観のため。<br />・「国破れて山河あり」の漢詩は中国ではドマイナー

  • 日本暮らしの長い中国人による日中文化比較。 詳しい読後記は<a href="http://www.rockfield.net/kanbun/weblog/archives/2006/10/2000.html">こっち</a>に書いてあります。

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著者プロフィール

中国・河北省承徳市生まれ。大連外国語大学日本語学部卒業、四川外国語大学大学院修了。宮沢賢治研究、日中比較文化研究。人文科学博士(お茶の水女子大学)。「文化外交を推進する総理懇談会」や「国際文化交流推進会議有識者会合」など委員も経験。日本ペンクラブ国際委員、朝日新聞アジアフェロー世話人、早稲田大学や関西大学などの客員教授などを歴任。法政大学名誉教授、桜美林大学特任教授、拓殖大学客員教授、周恩来平和研究所所長。
宮沢賢治を中国に初めて紹介したことで知られている。90年に中国優秀翻訳賞、92年に山崎賞、97年に岩手日報文学賞賢治賞を受賞。2009年に文化庁長官表彰。
主著:『周恩来と日本』(三和書籍)、『嵐山の周恩来』(三和書籍)、『禹王と日本人』(NHK出版)、『宮沢賢治、中国に翔る想い』(岩波書店)、『宮沢賢治と中国』(国際言語文化振興財団)、『中国人の愛国心─日本人とは違う5つの思考回路』(PHP新書)、『ほんとうは日本に憧れる中国人─「反日感情」の深層分析』(PHP新書)、など。
共著:『自分がされたくないことは人にもしない』(三和書籍)、『日本初の「世界」思想』(藤原書店)、『<意>の文化と<情>の文化』(中公叢書)、『君子の交わり 小人の交わり』(中公新書)、『中国シンボル・イメージ図典』(東京堂出版)、『中国人の日本観』(三和書籍)、『日中文化の交差点』(三和書籍)など。
要訳:『西遊記』、『三国志』、『紅楼夢』など
中国語作品:『漢魂与和魂』、『十国前政要論全球<公共論理>』、『中日神話伝説比較研究』、『中国小説与伝説在日本的伝播与再創』、『銀河鉄道之夜』、『生活中的日本─解読中日文化之差異』、『宮沢賢治傑作選』など多数。

「2022年 『福田康夫文集 世界の平和を求めて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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