日本にノーベル賞が来る理由 (朝日新書 152)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022732521

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  • 日本にノーベル賞ラッシュがやって来た!快挙の背景には国際社会の明確な意思がある。「対称性の破れ」とその「回復」をキーワードに、湯川秀樹以来の16人の受賞者を検証。原爆、核開発からポスト冷戦後まで、パワーポリティクスを鮮やかに読み解き、日本の進むべき道を指し示す。世界の研究と開発を左右する、「最高権威」ノーベル財団の戦略とは。

  • 興味深く読むことが出来たひとつの理由のは、ノーベル賞という話題を通して、日本が非西欧世界の中でかなり特殊な位置にあることが明らかにされるからだろう。今、世界では先端的な科学研究が推進されている場は、北米大陸とヨーロッパに限られる。それは、科学分野のノーベル賞でどの国の授賞者が多いかを見れば一目瞭然だろう。それに対するきわめて少ない例外が、日本やオーストラリア、そしてイスラエルなのである。その中でも日本は、「自国で生まれ、自国語で世界最高度の教育を受けた科学者が、内外で世界をリードする研究を進めている」非常に例外的な国だという。

    ノーベルの授賞式に先立ち、益川敏英・京大名誉教授は、英語に自信がなく日本語で記念講演を行ったが、これはむしろ恥ずべきことではなく、自国語で世界最高度の教育を受けて最先端の研究を成し遂げることができるということの証しなのだろう。

    もうひとつ面白かったのは、ノーベル賞が持っている個性であり、科学分野のノーベル賞でもそこにかなりの政治的な判断が入り込んでいるということである。ノーベル賞には、個別審査以前に「企画段階」が存在し、たとえば湯川秀樹へのノーベル賞の授与は、「原爆投下への謝罪の意を込めて、日本科学を世界の第一線のものと承認するセレモニー」としても企画されたのだという。これ以外にも、朝永振一郎や川端康成などへのノーベル賞授与にどんな企画性が潜んでいたかなどが次々に明らかにされて興味深い。

    著者はまた、日本の科学研究は「知の好循環」が充分ではないと指摘する。科学的な発見が特許収入とスムーズに結びつき、その資金がさらに基礎研究の推進に投入されるような好循環。iPS細胞で話題の山中教授が直面している状況を考えると、日本の現状がまだいかに「知の好循環」と縁遠いかが、よくわかるという。

    小著だが、ノーベル賞という賞そのものの性格を浮き彫りにし、またノーベル賞をめぐる科学分野の知識も吸収できるように工夫された好著である。

  • タイトル通りの内容。
    アメリカ・ヨーロッパ以外の国々と比較して、日本にどれだけ多くのノーベル賞がもたらされているのか、そしてその理由が専門外の人間にもわかるようにわかりやすく書いてあります。
    ノーベル賞の「色」や、ノーベル財団が世界平和のための「演出」を行っていることなどわかって勉強になりました。
    世界各国がヒロシマ、ナガサキにどれだけ敏感になっているのかについても、自分の知らないことばかりでした。

  • とてもおもしろい本でした。ただし、タイトルだけは…内容に比べてちょっと陳腐では。

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著者プロフィール

1965年生まれ。作曲家=指揮者。ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督。
東京大学大学院物理学専攻修士課程、同総合文化研究科博士課程修了。第一回出光音楽賞ほか受賞。東京大学大学院情報学環・作曲=指揮・情報詩学研究室准教授。『さよなら、サイレント・ネイビー』(集英社)で第4回開高健ノンフィクション賞受賞。

「2009年 『ルワンダ・ワンダフル!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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