キャリアポルノは人生の無駄だ (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022735089

作品紹介・あらすじ

【社会科学/社会】自己啓発書を「キャリアポルノ」と呼び、その依存症が日本の労働環境の特殊性からくることを欧米と比較しつつ毒舌とユーモアたっぷりに論じ、疲れぎみの若者にエールを送る。twitter界のご意見番、May_Romaさんの初新書!

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    うーん、耳が痛い。。。
    自分がいかに「キャリアポルノ依存症」であったか、この本を読んでいて痛切に感じた。
    確かに読んでいて何か成長した気になってしまうからなぁ。何も変わっちゃいないのに。。。

    自分に必要な勉強、実学とは何なのか?
    そもそも、生活の一部に過ぎない「仕事」について、それほど比重を置く必要があるのか?
    改めて読書について見直す良いきっかけになった。

    ただ、自己啓発書をALL否定するのは少し違うのではないかなとも思う。
    読んだだけで満足しているのは確かに問題だが、軽く読んで元気になれたり、デトックス効果がある点など、仕事に対してプラスの要因も多数あると思う。
    また、文中で「自分を変えることは不可能だし、変える必要もない」と成長することがあたかも間違っているというような内容だが、それはそれで少し的外れかな。
    進化してきたから今があるのであって、自分をより良くしていきたい、生活をより良いものにしたいと願望を持つことは何も間違っていないと思う。
    その願望を「自己啓発書を読む」という作業をしたことで完了したと誤認識するのではなく、しっかりと実行に向けて取り組むのであれば、それだけでも「キャリアポルノ」を読む価値はあると思う。
    そのあたりの視点からすれば、自己啓発書をすべてがすべて「人生のムダだ」と非難するのは、少しおカド違いかなーというのが一番の感想(であり、反論。笑)。

    要するに、読むだけで終わらずに、読んで何か「Do」をする必要があるってことでしょうね。
    自身の能力アップの裏付けとなる学習もしっかりしなくちゃ成長しないってのも激しく同意。
    要するにバランス良く読書をしなくちゃいけませんね。


    【内容まとめ】
    1.「キャリアポルノ」=自己啓発本を指す造語。
    自己啓発書を読んで、「オレって何かスゴイ」と興奮するが、現実が改善された形跡がない。。。
    そういうあなたは「キャリアポルノ依存症」です!

    2.英語圏の「自己啓発」の定義は、「啓発」というよりも、「自発的に何かをやり問題を解決すること」が目的で、「成長」や「鍛錬」ではなく「Do」の意味が強い。

    3.本を読んだだけで、その人の哲学を理解できると思ったら大間違い。
    自己啓発書で描かれるような成功した人になるには、大変な努力が必要です。
    書いてあるノウハウを本当に実践する努力が必要で、身につけるには手間も時間もかかります。
    読むだけではどうにもならないのです。

    4.「普通ではない人」の真似を「普通の人」がするのは、そもそも不可能なのです。
    ところが、キャリアポルノを読む人たちは、「普通ではない人」の型を知りたがり、読みたがり、模倣したがり、錯覚を起こしてしまいます。

    5.私は私、あなたはあなた、成功者は成功者と自覚する。
    キャリアポルノの著者と自分は全く違う人間であり、地球上に同じ人は一人もいないということを改めて自覚すること。
    世の中は平等にできておらず、どの人も異なった身体能力、見た目、家族、背負ってきた歴史など、千差万別なのです。

    6.仕事は仕事。人生のひとつの側面にすぎず、自分を表すことのほんの少しのことでしかないのです。
    人生にはもっと様々な楽しみ、悲しみ、喜び、創造性を発揮する場面があり、仕事は仕事で「これは対価をもらうための活動にすぎない」と割り切ればいいのです。


    【引用】
    「キャリアポルノ」=自己啓発本を指す造語。
    自己啓発書を読んで、「オレって何かスゴイ」と興奮するが、現実が改善された形跡がない。。。
    そういうあなたは「キャリアポルノ依存症」です!


    p12
    欧米や北欧の書店には、こんなにたくさんの自己啓発書は置いていない。
    書店で売っているのは宗教書、ミステリーや旅行記、歴史書、クライムフィクションなど、娯楽本が多い。
    ビジネス書に関しては、会計や経営戦略などを書いた「専門書」が中心である。


    p15
    本書は、日本ではなぜこんなに自己啓発書が人気なのか、自己啓発書の問題点や、さらにこのように自己啓発書がもてはやされる社会で私たちはどのように働いていくべきなのか。
    ということを議論したいと思います。


    p25
    英語圏の「自己啓発」の定義は、「啓発」というよりも、「自発的に何かをやり問題を解決すること」が目的で、「成長」や「鍛錬」ではなく「Do」の意味が強い。


    p52
    自己啓発書も基本的にはフードポルノと同じです。
    自己啓発書で描かれるような成功した人になるには、大変な努力が必要です。
    書いてあるノウハウを本当に実践する努力が必要で、身につけるには手間も時間もかかります。
    読むだけではどうにもならないのです。

    本を読んだだけで、その人の哲学を理解できると思ったら大間違いなのです。


    p54
    自己啓発書を読んで、やった気になっている人、何となく自分が凄い人になったような気になる人が後を絶たない。
    そういう人に限って、会社の仕事は中途半端で、仕事に本当に必要な会計・技術・語学などいわゆる「実学」はほったらかし。

    自己啓発書を読んで勘違いをし、ショートカットを使って痛みや苦労を経験せずにお金持ちになれると思ったら大間違いだ。
    なぜなら、その根本にあるのは怠惰であり、模倣であるからだ。


    p76
    なぜ若者はこのような自己啓発書に惹かれるのでしょうか?
    それは、読者の心の中に「不安」と「恐れ」があるからです。
    親の世代は享受してきた職業的安定や経済的な豊かさを、自分たちは享受できないという「経済的な不安と恐れ」です。


    p108
    欧州はアメリカや日本とはそもそも文化が異なるので、自己啓発書に手を伸ばすことはありません。
    その代わりに、公共物の破壊や暴動などに参加して、怒りを自己の外側に向けるのです。
    何か不満があった場合、頻繁にデモや抗議活動を起こし、個人的な動機に沿った復讐をモラルを破壊することで伝える。


    p114
    日本でもアメリカでも、働く人がキャリアポルノにすがる理由は、仕事における競争が激しくなっていることと、また、良い生活をしたいが自分は努力したくないという「怠け者」や、現実を直視したくない「意気地なし」が多いからです。


    p143
    おしゃべりの内容は、他愛もないものです。
    昨日は何を食べて良かった、バカンスはどこに行く、あの人は美しい、その素敵な服はどこで買ったのか、などです。
    仕事の話はゼロで、楽しい話題が多いのです。

    欧州では、真剣な顔で、「今度のプロジェクトは」なんて話をしても誰も興味を持ちません。
    おやつの時間に仕事の話をする人は不粋なのです。ダサい人なのです。
    利害関係なんて関係ないのです。人間として生まれたからには、毎度の会話も楽しくしよう、楽しくコーヒーを飲んでもらおう、コーヒーを淹れてくれる人も笑わせよう。
    そういう愛情を感じる環境です。


    p172
    堀江貴文は、そもそも東京大学に入学できるほど学力に恵まれており、学生時代にプログラミングを独習し、自力で起業してしまった上、その起業を育てて敵対的買収を仕掛けるほどになった。
    成功する起業家には、普通の人にはない入れ込み方や集中力、強迫観念がある。

    「普通ではない人」の真似を「普通の人」がするのは、そもそも不可能なのです。
    ところが、キャリアポルノを読む人たちは、「普通ではない人」の型を知りたがり、読みたがり、模倣したがり、錯覚を起こしてしまいます。


    p196
    ・私は私、あなたはあなた、成功者は成功者と自覚する。
    キャリアポルノの著者と自分は全く違う人間であり、地球上に同じ人は一人もいないということを改めて自覚すること。
    世の中は平等にできておらず、どの人も異なった身体能力、見た目、家族、背負ってきた歴史など、千差万別なのです。


    p210
    ・不安や恐れを可視化する。
    →自分が恐れていること
    →なぜそれが恐れになるのか?
    →どんな時にその恐れを感じるのか?
    →誰といる時にその恐れを感じるのか?
    →何をするとその恐れを解消できるのか?

    まずは原因を確定し、原因を嘆くだけでなく解決策を考え、それを実行するだけ!


    p212
    ・不安や恐れを吐き出す。
    プライドの高さが自分の心を痛めつける。
    素直に感情を表現し、楽しく暮らした方が精神衛生上いいのではないか。


    p223
    仕事でこんな実績を上げた、こんなふうに昇進した、こんなふうに給料が上がった、同僚に勝った、偉くなった。
    ということだけが人生ではありません。
    仕事は仕事。人生のひとつの側面にすぎず、自分を表すことのほんの少しのことでしかないのです。

    人生にはもっと様々な楽しみ、悲しみ、喜び、創造性を発揮する場面があり、仕事は仕事で「これは対価をもらうための活動にすぎない」と割り切ればいいのです。

  • そもそもタイトルになっているキャリアポルノという言葉がピンとこなかった。「私が最初に使い始めた「キャリアポルノ」という言葉が流行っています」と言われても知らないから「そうなの?」という感じ。「森ガール」くらいなら「そうなんだ!」とも思えるが・・・。個人からすると自分が最初に使った言葉がgoogleの検索で何万もひっかかれば「流行をつくった!」と思うのかもしれないが、世界でみれば本当にローカルな世界での流行なのだろう。

    ひたすら自己啓発書は役に立たないとこき下ろす展開だが、あまりにもデータの無いところでの決めつけや思い込みが激しい。同作者の「日本が世界一貧しい国・・・」は「そうそう!」と同意できる箇所もあったが、「自己啓発書を読んでいる人がたくさんいるのに日本が良くなっていないから役に立っていないのでしょう」という論理展開はどうなのだろう。ノマドにしても自己啓発オタクにしても何か見えない仮想敵を想像して闘っているような、どうもそんな本人の感情が入りすぎている気がする。だからこそ「この人本当は自己啓発書を読むタイプと本来は同じタイプなんじゃないかなあ。同族嫌悪しているのではないかなあ」とさえ勘ぐりたくなる。


    中盤からの展開を読むとやはり過去に自己啓発書をたくさん読んだ「意識高い系」を目指した著者の過去について触れられており、自己啓発書への恨みは個人的な怨念も含まれることがわかった。歴史的背景から革新的なアメリカ(自分も社会も変われる)と保守的なヨーロッパ(人も社会も変われない。あるがままを受け入れる)の対比は面白い展開だった。

    しかしやはり著者のターゲットとしている読者は「3分でできるXX」とかを盲信してしまう人であって、ちょっとした気持ちの回復やいくつかある方法論の選択肢の追加という読み方をしている読者には「どこにそんな人いるの?」と首をひねりたくなる内容だ。

    自己啓発書は多少たりとも心が上に向けば良しと思って読んでいる人もいれば、即行動に結びつかない、問題解決をしない、というのを承知おいて読んでいる人もいるだろう。そういう意味では大半の書物が価値を失ってしまう。なんとなく多くの人が自己啓発書を見て「ネタっぽいなあ」と思ってスルーしているところにマジレスでこき下ろしているような白けた空気感が本書にはある。

    しかし、その自己啓発書を批判している本書はどのような価値を生み出しているのだろうか?
    読んでいて朝井リョウ氏の小説『何者』を思い出した。少なくとも自己啓発書を出版している人も悩んだりあがいたりして行動しているわけで、それを端から見て石を投げて満足するのでは、結局同じポルノなのではないだろうか。

  • いわゆる自己啓発本は読む意味がない、と言い切っている本。全て読む必要がないかというと、そうではないと思うが、よむことによる自己満足や安心感は危険であることを言いたいようだ。読んだことを自慢するなどはもってのほかだろう。

  • 自己啓蒙書がキャリアポルノで人生の無駄だ、という著者の視点から描かれた本。

    彼女が自己啓発書に嫌悪感を抱いてるのはよくわかったし、その理由も知ることができたけれど、逆にここまで毛嫌いするのがよくわからなかった。
    興味ない人は彼女が何言おうがはなから読まないだろうし、読む人はとことん読むだろうし、要は嗜好の問題ではないだろうか?

  • 難しいなあ。この本自体もある意味「自己啓発」にはなるし、彼女のキャリア自体も特別であるような気もするから。いくら否定しても、この本自体も同じ位置づけになってしまうのではないかと思ってしまう。
    でも自己啓発本の”うさんくささ”は理解できるけどね。
    イタリア的な働き方は本当にうらやましいけど、この日本では同じような働き方になるのは到底無理だしな。

  • 論文を書いてたこともあり、約半年間いわゆる自己啓発書を読まずにいた。そろそろ一般的な本(本書は自己啓発書ではない)でも読もうか、と積読状態の中から抜き出したのがこれだった。表題にインパクトがあり読むのを躊躇していたが、手にとって後悔はしなかった。

    シニカルな事例がふんだんに用いられたメイロマ節は、常に読み手に対して緊張感を与え、終始飽きさせずに最後の結論にまで導く。著者のように、幅広い学識と経験がなければ、このような主張は難しいと思う。

    自己啓発書の類型化は、自己啓発書を網羅的読まないとできない分析であり、後続の読者に示唆を与えるだろう。私は説教系をよく読んでいたと振り返った。当時は誰かに教えを説いてほしかったのだろうか。理由は本文に書いてあるように、「経済的な不安と恐れ」が漠然と頭に過ぎり、カンフル剤を打つ感覚だった。

    むしろ本書で重要なのは、第3章の著者による労働観にふれることだろう。前著でふれていることもあるかもしれないが、体験に基づいた国際比較からは、日本に住む我々が多くの異なる環境・習慣に在ることに気付く。個々人考え方を変えることは、順を追って検討すれば可能だと思う。しかし、所属コミュニティが持つ慣習・雰囲気が変わるには、多くの問題を除去する必要がある。構成メンバーが相当入れ替わらないと無理だと思う。だとすると各人のすべき行動は自ずと決まってくる。本書の最終項が参考になるだろう。

  • 自己啓発本の無意味さと下品さ、その下流(喰い)ビジネスの惨たらしさなど首肯できる部分は非常に多いけれども、彼女が今の立場にいるからこそ(そしてある程度の「上がり」感を獲得したからこそ)かけた本であって、中途半端な立ち位置の人が同じことを言っても負け惜しみにしかならないんじゃなかろうか、という点では「コンセプトメイキング能力」と「言葉の選び方」の勝利だな、という気がしなくもない。

    今現在、自身のキャリアを改善しようとしてつまらない自己啓発本を軽蔑するセンスを持ちつつも、指針がない自分の人生をもがき足掻いている多くの「渦中の人」にはちゃんと届かないし、届いても胸に入ってくる度合いは小さいし、この著書に影響を受けたりすると後から振り返ってIFの世界を妄想するんだろう。

    だからと言って無用な提言や意見というわけではなく、やはりある程度自分に合格点をやっと与えられるな、と思っている人には必要な本かもしれない。どうだろう。私は途中で若干飽きてしまったので、自身には「この本は時間をおいてから再読したほうがいい」、という風にメモを残しておきたい。

  • まあ、自己啓発本マニアを除けば、誰もが分かってたことを言っただけって感じもする。
    文章にほのかに感じる毒がけっこう好み。
    読んでくうちに、だんだん、むしろこの本が、「成功したければ自己啓発本は読むな」って自己啓発本なんじゃね? って思えてくるのは気のせいだろうか。

  • 「”自己啓発はクソだ”と唱えている自己啓発本(笑)」なのでは。

    著者自身が自己啓発に傾倒していたころの失敗談から、この本を書くに至った経緯も記されていて、説得力もあるっちゃあるが、

    自己啓発そのものに対するコンプレックスを感じる。主観的な見解が過ぎる批評が多く見受けられる。


    まぁ、自己啓発は自分の都合の良いように使っている当方としては、
    著者の言いたいことをかなり素直に受け入れられた。
    「やりたいことをやる」とか、「仕事だけが自己実現だけじゃないっしょ」っていう考え方には共感。
    自己啓発に酔いしれちゃってる人に警鐘を鳴らしてくれる役割を担ってくれそう。

  • 『ビジネス書大バカ辞典』勢古浩爾 と通じるものがあり、内容的には再認識したようなもの。
    私にとっては、イタリア人たちの人間的な会話についての話が新鮮でよかった。確かに日本人は仕事の話が共通の話題だし、初めて会った人も会社での立場を意識し、それが付き合い方にも影響してしまう。考えてみれば悲しい事だと気づかされた。人間的な会話というものを意識してみたい。

  • 「お世話になりました」なぜアダルトな女優さんの思い出を語る時にこういうのか謎だった。でも今この本を読んで言えるのは私の本棚にあるビジネス書達に同じように告げるべきなのだろう。

    タイトルは話題になったコラムが元になっている。
    あまりにも衝撃を受けたがまさか本になるとは思ってもいなかった。
    心の中では「新書だし、さらさらっと書いた派生本かな」くらいにしか思っていなかったけど全然違った。
    冒頭の殺虫剤のくだりで抱腹絶倒。
    そのあと、読んだだけで気持ちがよくなる「自己啓発書」の功罪について語られていくが、後半につれて海外労働事情を始め働き方という深い海の中に引き込まれ、自分の働き方と照らし合わせじんわりと心が温まり、少し泣ける。

    ビジネス書のタイトルは編集者がつけることが多いと聞いた。残念ながらタイトルだけの見かけ倒し本とか途中から話がどっかいっちゃった本とかもある。でもこれはコラムからタイトルを取ったこともあり、見事な構成とあいまって頭の先からしっぽのさきまであんこが、いや著者の主張がぎっしりつまっていてぶれない。途中からしろあんになることもないので安心して読み切れる。

    ★4つにしたのはネット世界の言い回しになれないとちょっと強烈かな、と思うから。
    でも、そこを超えて読んでほしいとも思う。

  • 自己啓発本は読んだら、何か小さな事でも真似てやってみる、実際にやってみる、継続してみる、が無いと読んだ意味が無い、というのが持論だったけど、その後自分のものになった事がどれだけあるか、心許ない。
    本書では、日本では物凄く自己啓発本が売れている→それを読んで成功する人はいる訳ない→むしろ負組の人達がそこから抜け出さんと次から次と自己啓発本を買っている→状況は変わらないままポジティブシンキングの強迫観念に苛まれ精神を病んでしまう、という連関を基調として、そこから日本人は仕事が自己実現になってしまっているが本来それはおかしい、もっと自分らしく楽しい事が自己表現、自己実現であるべき、という主張が論旨のようです。それなら、鬱病を患う人の中で、所謂自己啓発本がどの位読まれているのか気になりますが、数字で示されてなく説得力がないのが残念。
    アメリカでは売れるけど、イギリスやヨーロッパ諸国では売れない状況を、数字や歴史的考察から分析してただけに残念です。
    それでも、自己啓発本の作者ってホントに素晴らしい人なんかいな、なんて漠然と抱いていた疑問に対して、かなり実名出して〝とんでもない〝と言い切る毒舌は、結構笑えた。

  • タイトルを見て、図書館で借りました。参考になることもあったとは思うが。 ただし、著者自身が特別な人ではないかなと。

  • ブクログの本棚をみるとキャリアポルノ本がちらほらあり耳が痛い。
    全否定まではしなくてもよいかと思うが、作中で貫かれていた世の中の事を疑って見るという思考は時には必要かも。
    歴史的背景や雇用統計などの情報からの議論は客観性があって分かりやすい。
    働くことに自己実現を求めてくる会社の教育は一歩引いて見てもよいかも。
    自分を受け入れるという他の書籍にもよくでてくる結論には改めて納得。

  • ちょっと前に話題になった新書。基本的にこういうものは粗製濫造の薄っぺらなもので、がっかりすることが多いので読まないことにしているのだが、参考文献に英語がズラーっと並んだりして、結構ちゃんと調べてるじゃないの、と思った。

    要は「億万長者の馬鹿げた成功譚に憧れる暇があるなら、足元の幸福に目を向けろ」ということか。まあ、そうなんですけどね。

  • ビジネス本っていいやつに混じって「無」の本がいっぱいあるよな.って思ってたら見事にそれを表現してくれていた.

    自己啓発本=インスタント自己実現本.
    読了後に快楽が伴い,しかし実世界で本人に変化は起きない,起こせない.
    それゆえ再び手に取り中毒性がある.

    フードポルノ=自分が直接経験していないのに料理番組やネット投稿などで満足すること.
    ポルノ画像,動画なども同義


    キャリアポルノ作家はキャリアポルノポルノを得ることが商売.実際に成功したりしてなくても良い.

    自己啓発=自分を変えようという一種の活動,
    アメリカが本場.
    漠然としたキャリアへの不安の反動,根拠のない希望的観測(宝くじ的アメリカン・ドリーム).これらの衝動を自己の内面で抑える役割を持つキャリアポルノは一種の夢を売る商売とも言える.
    (イギリスはその傾向が弱いらしい.王室の残る社会生活,家計への意識が強い風土では変な夢は見ない達観したところが強いとのこと.しかし将来の不安などは自己の内面ではなく外面.つまりデモなどで発散するとのこと)

    キャリアポルノの行き着く先は仕事にのみ自己実現を求める視野の狭い窮屈な世界.

  • キャリアポルノはフードポルノと同様に造語らしいか、これにかかってる人は多いように思う。仕事だけが自己実現の形ではないと再認識する

  • 自己啓発本が流行っていることについての社会的な分析を試みたけれど、結局主観的な批判しかできていない本。

    札幌市の図書館で借りた。

  • "自己啓発本は、キャリアポルノと定義して、自己啓発本のジャンル分けから、こうした本が書店に並ぶ理由、雇用環境、欧州の文化とアメリカ文化、日本文化の比較にまで言及する。依存症的な人があふれている現代に警笛を鳴らす。
    この本で、知った知識-「フードポルノ」
    私もキャリアポルノといわれる自己啓発本を一杯読んできたし、これからも読むであろう。
    著者が指摘している症状はないので、適度な距離を置けているかな?
    少なくとも自己啓発本だけではなく、幅広く様々な書物を読むことでバランス感覚を失わずにいたいものだ。"

  • キャリアポルノとは、他人のキャリアを眺めて満足する、その対象を指す。ポルノが眺めることで性欲を満たし、実際に性行動に及ばないことになぞらえた著者の造語である。そして著者はキャリアポルノを自己啓発書とほとんど同義で使っている。

    2章のアメリカと欧米における自己啓発の比較が面白い。
    アメリカは自己啓発の最大マーケットであるが、その背景として移民国家であり努力が結実する―――いわゆるアメリカンドリーム―――という信条が宗教的レベルで浸透しているからだと著者は指摘する。
    一方欧州は、個人主義でありながら地縁・血縁等、「本人の努力ではいかんともしがたいもの」を重視する文化がある。それゆえ、努力すればなりたい自分になれるとうたう自己啓発には馴染みが薄いのだ、と。

    2章は「人はなぜキャリアポルノを読むのか」がテーマなのだが、著者の指摘は非常に身につまされる。ずばり、キャリアポルノを読むのは敗者である。そして敗者の中でも、「根本にあるのは怠惰であり、模倣」であり、「自己啓発書が好きな人々の心には、自由化、進歩、貢献という言葉はありません。自己中心的な怠け者なので、世の中に貢献しようという気もないのです」とばっさり切って捨てる。
    全くその通り。私自身、自己啓発書はさんざん読んできた。今も勝間和代を読んでいるところだ。しかしいくら自己啓発書を読んでも大して自分が変わっていないので、これはいったいどういうことだろうと思っていたところで本書と出会った。
    思い返せば、人生がうまくいっているとき、あるいはうまくいっていなくともなにをすべきかはっきりしているときは自己啓発書に手は延びない。自己啓発書を読むのは、現状にぼんやりした不満があるものの何をしていいかわからない時だ。まさに何者かになりたくて読むのである。

    勝間和代の真似はできない…と落ち込みかけていたが、本書から得た示唆は「まあそんなことどうでもいい」である。他人は他人、自分は自分。今の自分は、成功者の金科玉条より、もっと目を向けるべきものがあると気づかされた。それは家族であったり職場の同僚であったり、つまり目の前にいる人たちだ。

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著者プロフィール

谷本真由美(たにもと まゆみ)

著述家。元国連職員。
1975年、神奈川県生まれ。
シラキュース大学大学院にて国際関係論
および情報管理学修士を取得。
ITベンチャー、コンサルティングファーム、
国連専門機関、 外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。
日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。
ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)
として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。
趣味はハードロック/ヘビーメタル鑑賞、
漫画、料理。
著書に『キャリアポルノは人生の無駄だ』(朝日新聞出版)、
『日本が世界一「貧しい」国である件について』(祥伝社)、
『不寛容社会』(ワニブックスPLUS新書)など多数。

「2022年 『世界のニュースを日本人は何も知らない4 - 前代未聞の事態に揺らぐ価値観 -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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