人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来 (朝日新書)

  • 朝日新聞出版
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022952547

感想・レビュー・書評

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  • 頭が良すぎる人たちの議論が良くわからなかったというのが正直なところ。彼らにとってAIは十分に知的とは言えないのだろう。そういう意味ではAIが人間を超えるというのは今のところ心配ないようだ。

    とはいえ、スマートフォンをツールとして生み出した人間がスマートフォンの奴隷になっている現状からすると一部の頭の良い人が世界の富を独占するほうという構図はどんどん極端になっていくようだ。

  • 「人類の終着点」とはエグいタイトル。終着点と言いつつ、副題で「戦争、AI、ヒューマニティの未来」と。未来、それが明るいのか暗いのかはわからないけど、歴史が続くのであれば、決して終着ではない。一方、今の不透明・混乱な時代に生きる我々からすると、今後どうなるのか=終着ということだろう。

    民主主義の問題、資本主義の問題、リベラルの問題、、、、今の世界を覆う問題を解説するものは多い。しかし論点が複雑で、自分の理解が大雑把でも正しいのかどうか自信がなかった。この本は、インタビュー・対談方式の構成で、体系立ってはいないけれど、わかりやすく解説されている。
    グローバリゼーションとテクノロジーが、急速に世界を変えている。マルクス・ガブリエルはTwitterやフェイスブックを禁止にすべきだと述べているが、これらがなかった時代が不便で困っていたかと思うとそうではない。むしろ今の社会の混乱や分断の原因がこれらにあるのであれば、規制するというのは自然な発想で、決して極論ではない。
    今の世界を代表する知が、大いに語っていて、今の世界の状況を冷静に知ることができる良書。

  • 何時の時代にも「考えてみるべきであろう」というテーマは在る。そんなことに関する話題を提供してくれるのが本書である。豊富な話題を提供してくれる一冊であると思う。
    本書は識者達へのインタビューや鼎談、対談を色々と集めて纏めたモノである。幾つもの読み応え在る内容を纏めている。新聞の特集、その下敷きになるフォーラムというのが下敷きになっているようである。
    幅広い話題が取上げられているが、敢えて一口で纏めるのであれば「揺らぐ世界の中で進む技術革新という様相が導く先は?」というようなことになるのだと思った。
    ロシア・ウクライナ戦争のような大規模な軍事衝突が展開している他方、各国で民主主義体制が揺らいでいるかもしれないような様子も見受けられ、更に著しい人口減少という社会の行方がよく判らなくなるような傾向も強まり続けている。歴史が転換している真っ只中なのかもしれない。そんな中に、急速に進歩を遂げる「生成AI」なるモノのような新技術が台頭している。
    本書では、「歴史の転換点」ということで、戦争や民主主義というようなことを論じる要素と、「AI」のような技術が辿った経過、現況、可能性、未来予想というような要素とが併存していると思う。結局「揺らぐ世界の中で進む技術革新という様相が導く先は?」ということだ。
    正直、個人的には「生成AI」なるモノはよく判らない。
    想い起してみると、自身が生きて来た年月の中、インターネットの登場と普及、携帯電話の登場と普及というような「そこまでの時代には考え悪かったような新技術と、それがもたらした社会の様相の変化」ということが起って来た。何れに関しても、自身が長じて、青年、壮年というような年代以降の出来事で、何となく「自身で勝手に適度なと想える距離感」でそうしたモノに接してきて、現在時点でもそうしていると思う。
    「生成AI」なるモノに関しても、壮年というような年代以降に登場して普及しようとしているので、何となく「自身で勝手に適度なと想える距離感」で接したいと個人的には思っている。が、巷では何やら「利用を当然視」というように動こうとしているようにも感じる。例えば「生成AI」なるモノで文案のようなモノを作成出来るとされているが、そういう程度のことなら、自身で勝手に考えて綴る方が気に入るモノが簡単に速く出来ると思うことが在る。そういう感覚だが、そのうちに「少数意見」であることすら認められないような感じになるのかもしれない。新しいモノは、古いモノを塗潰してしまうような一面も在るように思う。
    こうした感覚も持ちながら、本書のAI関連の色々な論に触れた。過大に信頼も出来ず、過大に無視も出来ないという、よく在る新技術の一つであるAIだが、最初期に登場した頃の経過を見て考えると、色々と恣意的な要素や偶然が入り込んでいるようでもある。
    AI関連で、本書では「既に他界して久しい有名漫画家の、御本人が描く新作を想わせるようなモノを、AIで創ることを試みる」ということに取組んでいる方の話しが収録されていた。それを興味深く拝読した。「漫画作品を創る」という例を通じて、AIの可能性と限界というようなことを考え易い話しだったと思う。
    AIを利用して「漫画作品を創る」となれば、人気作品の主要人物を有名漫画家御本人が新たに描いたかのように再現する、または新しい作中人物を御本人が描いたかのように創るようなことは出来るようになるらしい。そしてそれらしくストーリーも組み立てられそうだが、かなり困難なことがあるという。有名漫画家が人生経験を通して有している思想性、想いが作品には少なからず跳ね返っているが、そういうモノは再現する術が無いのだという。
    こういうようなことは記憶に留めておかなければならないと個人的には強く思った。「人生経験を通して有している思想性、想いのようなモノはAIで如何こう出来る筈も無く、そういうようなことこそ大切にせねばならず、そう出来るのが人間である」とでも言い続けたいような気もする。
    技術革新が目覚ましい中ではあるが、「冷戦の終結で段落したかのようだった歴史」がまた揺らいでいる中、「人が人らしく?」というような、遥かな昔からの哲学のような思索が益々求められているのかもしれないというような気もする。
    本書は、広く色々な話題を巡る識者達の論を集めたというような感なのだが、「モノを考える材料」として貴重であると思った。

  • 戦争やAI、資本主義と民主主義など現在のさまざまな論点についての識者の発言をまとめた一冊。
    大国の覇権ではなく、各国・地域の利害に基づく多様なつながりが増えている現代、米中問題とか対ロシアという近視眼的な見方では追いつかないというのはよく分かる。
    個人的に面白く読んだのはAIの話。人間を超えるか、という問いの立て方になんとなく違和感を持っていたけれど、素人にはそれがうまく説明できず、漠然とした危惧にあおられたままだった。その違和感を詳細に言葉で説明してくれた感じ。
    たとえば人口「知能」というネーミングが導く恐怖感とか、AIの背後でデータを学習させるために単純作業をする労働者たちが抱える問題、データやツールを独占する国家や大企業の権力の問題の方が、AIそのものよりもはるかに深刻な危惧だ、と。
    一方で、そもそも「知性」を外から入った情報を処理して何らかのアウトプットをすること、と定義すると、人間の知性とAIは確かに似たような作業をしているようにも見えるし、「創造性」についても、人が過去の経験や学習を基に作品を創り、AIはデータを基に「創造的な」作品をアウトプットすると考えると、やはり類似性は見える。
    それでもなお、本質的な問題は人間の側にある。バイアスがかかったり誤った情報が出てきた時に、それを見分ける能力を持ち得るか、拡散されるフェイクにどう対応するか。現在進行形の課題をしっかり考える足掛かりになる。

  • 生成AIの進歩はそれほど脅威に思う必要はないということか。ここまで騒がれている状況は即ち、テック企業のマーケティングに踊らされているということと同義であるとの認識はとても面白かった。

  • 人類はどこに向かう?安宅さん教えてください。

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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